*道の駅でかけそばを食べた時の話。
出張中の話。
道の駅でかけそばを食べようとしていた時。
なんとも胸が苦しかった。吐き気を催すほど気持ち悪いまではいかないけど、ちょっと気を抜いたらゴロゴロと崩れ落ちそうな感じがした。
山の上で炎天下に晒され、かなり体力を削られた後、うねうね凸凹した山道を揺らされながら下ったからだ。
ひとりじゃなかった。だから万が一の事態が起きても大丈夫ではあるかもしれない。でもだから安心とはそうそうならない。ここで迷惑をかける訳にはいかない。なんとか耐えるんだ自分、と心の中で唱える。
隣の人を見たらもう食べ終わるくらいだった。次の予定は迫ってないけど、待たせすぎてもいけない。そんな焦りを感じながら、でも無理をしたら溢れることもわかっていたから、箸で麺を数本ずつ持ち上げては口に入れる作業をゆっくりと繰り返していた。そんな時、
タン、タンッタランタン〜♪
スマホの着信がポケットから聞こえてきた。
誰だろう?と思いながらスマホを取り出すと、普段やり取りの少ない他グループのTさんからだった。ちょっとした確認だったので返答だけしてまた麺を持ち上げる。
するとまた着信が鳴った。今度は自分が所属するグループのSさんからの着信。こちらはメールを送ったよという報告、それとなんてことない雑談。
ふと、自分のテンションが上がっているのがわかった。不思議なものだ。
いま目の前のことと全く関係のない内容だったり、普段と変わらないやり取りだったり、どちらの着信も私の不安を和らげるには十分だった。
そんな一連の自分の感情を隣の人にも報告し、さらに気持ちを落ち着かせる。
気づいたら麺をすする勢いが増していた。さっきまでの不快感が嘘のように元気を取り戻しつつあった。
…かけそば、完食。
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