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魔界・京都を歩く(冥界へと通ずる“六道の辻”)【京都・東山】

「京都は魔界ですよ」

学生時代に京都に住んでいた友人にそう言われ、
久しぶりに足を運んでみることにしました。
これまで何度か京都を訪れてはいるが、清水寺や三十三間堂、
伏見稲荷神社など修学旅行で訪れるような
有名な観光スポットしか行ったことがなかった。
あとはくるり主催の「京都音楽博覧会」に行ったり。
しかし、調べてみると京都の裏の一面が見えてきました。

京都には3大葬送地があります。
西の化野(あだしの)、北の蓮台野(れんだいの)、
そして東の鳥辺野(とりべの)の3つです。
平安時代、人口が12-13万人いたとされる平安京では、
遺体の処理は大きな問題だったそう。
費用がかかるため火葬されるのは身分の高い人だけで、
多くの一般庶民はそのまま朽ちるに任せる風葬が主流。
鳥が食べやすいように山の枝に遺体をかけていたため鳥葬とも
呼ばれています。

鳥辺野という地は、その名が示す通り鳥葬が行われていた
野(野原)のこと。
そして世界遺産に登録され、京都屈指の観光スポットである
清水寺が建っているのも風葬が行われていた地で、
778年にそれらの霊を供養するために建てられたのが
始まりという説があります。
また、清水寺の本殿が高いのは死者の匂いがあまりにも
強かったためとも言われているのだとか。
全然知らなかった……。

この鳥辺野の入り口付近にあたる場所を「六道の辻」といいます。
六道とは仏教の説く六道輪廻の死後の世界のことで、
地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道の6つ指します。
この地で最後のお別れの後、風葬の地である鳥辺山へと
遺体が運ばれていったため、「六道の辻」は他界(地獄)への
入り口とされてきました。

六道珍皇寺

前置きが長くなりましたが、
その六道の辻にある六道珍皇寺が今回取り上げる珍スポットです。

寺の入り口には大きな「六道の辻」の石碑がある

六道珍皇寺の見どころは、なんといっても
本堂背後の庭内にある「冥土通いの井戸」。
嵯峨天皇に仕えた平安初期の官僚・小野篁(おのの たかむら)は
昼は朝廷の役人、夜は冥界の閻魔庁で冥官を務めていたと言われ、
冥界に行き来するために毎夜この井戸を通ったという。

これが冥土通いの井戸
井戸を覗き込むと…
なんとなく冥土に行った気分になれる

井戸を除いて冥土に行った気になったからには現世に戻ってきたいところですよね。
丁寧に看板で示してくれていました。

黄泉がえりの井戸の場所を案内する看板

が、しかし!
扉が閉まっているじゃないか……!!
木が通され開かないようになっている……。

しっかりと閉まった扉

隙間から奥を覗くと、確かに井戸らしきものが見えます。
あれが黄泉がえりの井戸であることは間違いない。
なんとしてでもあそこに行かねば…!
でないと冥土に行ったまま帰ってこれなくなってしまう(気がする)。

あ、普通に木をスライドしたら開いた…!
よかった、鍵がかかってたわけじゃなくて……(まじ安堵)。

木をスライドしたら開きました

こうして無事に黄泉がえりの井戸にたどり着くことができました。

「蘇る」という言葉の語源は「黄泉の国から帰る」ことなんですね
井戸を覗き込むと…
「輪廻転生」とかかれていました

六道珍皇寺では毎年8月7日~10日の4日間、
お盆で冥土から帰ってくる精霊を迎えるための
「六道まいり」が行われます。
下の写真は冥途まで鐘の音を響かせて
先祖の霊を呼び戻すための「お迎え鐘」です。

窓に下にある綱を引いて鐘を鳴らします

境内には、飢饉や疫病の流行により遺骸や髑髏が散在する
当時の状況を憂いた弘法大師(空海)が一夜にして作ったという
大石地蔵尊や、閻魔堂などもあります。

2m30cmもある大きな石仏

六波羅蜜寺

文字のフォントがすごくおしゃれ

六道珍皇寺のすぐそばには、
醍醐天皇の第二皇子である空也上人によって
平安時代中期に創建された六波羅蜜寺があります。
六波羅蜜寺があるのは「轆轤(ろくろ)町」という場所。
江戸時代までこの辺りは人骨がいたるところに転がっていたため
「髑髏(どくろ)町」と呼ばれていましたが、
あまりにも縁起が悪いということで轆轤町に変更されました。

また、六波羅蜜寺には左手に毛髪を握っている
「地蔵菩薩立像」(別名:鬘(かつら)掛け地蔵)があります。
(訪れたタイミングが東京国立博物館での特別展のために出張中のため
見せませんでした💦)
極貧のため母親を弔ってくれた僧にお布施を用意できなかった娘が、
「髪の毛をお金に」と母の髪の毛を僧に渡したところ、
その僧侶が実は地蔵菩薩の化身だったという伝説に由来します。

美談のように語られていますが、
死体から剥ぎ取れるものは剥ぎ取って、女の人の命である髪の毛まで
引き抜くというのは、まさに芥川龍之介の「羅生門」で描かれた世界と
同じだと思うのは自分だけでしょうか。
「羅生門」は平安時代の末期に作られた「今昔物語集」の物語をもとに作られているので、「地蔵菩薩立像」の伝説との奇妙な一致は
偶然ではないような気がします。

おそらく、当時のこのあたりは魑魅魍魎が跋扈する
荒れ果てた土地だったんだろうな。
そんなことを想像しながら散策しました。

六波羅蜜寺の本殿

ちなみに六波羅蜜寺の「開運推命おみくじ」は当たると評判だそうです。
四柱推命をもとに、生年月日と性別から一年間の運勢を占うもので、
すべて手書きの凝ったおみくじです。
もし立ち寄ることがあれば試してみるのもいいかもしれません。

開運推命おみくじ

・訪問スポット:六道珍皇寺
・住所:京都府京都市東山区大和大路通四条下ル4丁目小松町595
・アクセス:京阪電車 清水五条駅下車 徒歩13分

・訪問スポット:六波羅蜜寺
・住所:京都市東山区五条通大和大路上ル東
・アクセス:京阪電車 清水五条駅下車 徒歩9分


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