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古今集巻第十九 雑躰誹諧歌 1067番

法皇西川におはしましたりける日、猿山のかひに叫ぶといふことを題にてよませたまうける
みつね
わびしらにましらな鳴きそあしひきの山のかひあるけふにやはあらぬ

法皇西川に御座しましたりける日、猿、山の峡に叫ぶと言ふことを題にて詠ませ給うける
凡河内躬恒
侘しらに猿(ましら)な鳴きそ、あしひきの山の峡ある今日にやはあらぬ

宇多法皇が大堰川に御出ましになった日、「猿が山の峡で叫ぶ」と言うことを題にしてお詠ませになった歌
凡河内躬恒
侘しそうに猿よ鳴くな、美しい山の峡で、ここで行幸を待っていた甲斐がある今日ではないのか

法皇陛下が御出ましになる行幸(みゆき)に参列することは、今まで生きていた甲斐があったと猿でも喜ぶのだから、躬恒自身も感激しながら同行しています、という歌です。
「わびしらに」は、形容詞「わびし」の終止形+状態を表す接尾辞「ら」+形容動詞の語尾「なり」の連用形「に」で、「わびしそうに」の意味。
「ましら」は、猿のこと。
「な鳴きそ」は、「鳴くな」。「な〜そ」は軽い禁止を表します。
「山の峡(かひ)」と「甲斐」は掛詞。山の谷あいと、やりがい。
「けふにやはあらぬ」の「ぬ」は否定の助動詞「ず」の連体形。「や」と係結びになっています。「にやあらむ」は「ではないのだろうか、いやそうにちがいない」という慣用的な反語表現です。

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ちのみゆき
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