『Ghost Of Tsushima』はオリジナリティーのない傑作
https://amzn.to/3fCYDC7https://amzn.to/3fCYDC7買いましたよ、『Ghost Of Tsushima』(以下、GoT)。
YouTubeの広告観て買った初めてのゲームかもしれません。
毎週『ファミ通』買ってた若い頃と違って、今は能動的にゲームの情報を収集するなんてことがありませんからね。ツイッターで話題になってるか、YouTubeの広告で見かける以外に買う衝動が生まれないのですよ。
YouTubeでゲームの広告なんて嫌っちゅうほど流れてて、そのほとんどは無視するんですが、たまーにこのGotみたいに最後まで見ちゃうのがあるんですよね。
じゃあ何が私の眼を引き付けたのか。
オープンワールド?侍モノ?そんなものはいくらでもありますが、GoTはまるで雰囲気が違う。
それもそのはず、時代劇と言っても鎌倉時代、それも元寇、さらに舞台は対馬と来てるんだから、渋すぎて喉がイガイガします。
ストーリー
13世紀後半の鎌倉時代、コトゥン・ハーン率いるモンゴル帝国軍の襲来を受けて対馬の兵は壊滅的な被害を喫し、対馬はモンゴル帝国の手中に収まったかのように見えた。しかし、奇跡的に生き残った武士・境井仁は、たった一人で強大な兵力を相手にコトゥン・ハーンの手から対馬の奪還を試みるのだった。
いや~~~~、このストーリーだけでシビれますね。
単騎で乗り込んで巨大な組織を破壊すると言えば『メタルギア』シリーズですが、あれは現実世界をベースにしたあくまでフィクションです。
しかしGoTは、登場人物こそ架空ではありますが、元寇(対馬襲来)は実際にあったお話。こんな良い素材を日本人はなぜ今まで放っておいたのでしょうか。
システム
シームレスなワールドマップを自由に行き来し、途中に落ちているアイテムを拾い、敵や動物がいれば戦うか逃げる、集落があれば情報収集およびイベント開始、敵拠点があれば殲滅行動。
ハッキリ言えば、GoTのシステムにオリジナリティーはほとんどありません。
システムだけを見るなら、『METALGEAR SOLID V The Phantom Pain』だったり『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』だったり『Marvel’s Spider-Man』だったりといったオープンワールドゲームからいいとこ取りして組み合わせたものであって、何一つと言って良いほどオリジナル要素がないのです。
例えば、馬に乗って荒野を移動、拠点を見つけてはステルスで殲滅というのはMGS5ですし、次から次へとサブクエストが出てきてはマップのあちこちに移動してクリアするテンポはまるっきりスパイダーマンです。
個人的には、システム上オリジナリティーのない作品を高く評価することはあまりないのですが、GoTは例外です。
大作と言えばオープンワールドアクションアドベンチャー?
一旦、ゲームの概論のお話を。
私は最近のゲーム事情をあまりよく知らないのですが、どうやら昨今のゲームで大作と言えば、オープンワールドのアクションアドベンチャーと相場が決まっているようです。
20年以上前にドリームキャストで発売された『シェンムー』を祖とするこのジャンルは、『グランドセフトオート』シリーズや『龍が如く』シリーズなどによって発展し、(私が実際にプレイしたタイトルとしては)『MGSVTPP』や『ゼルダの伝説BotW』といった傑作を生み出すに至りました。
名作がたくさん生まれることは喜ばしいこと。しかしながら、大作と言うとオープンワールドというのはちょっと寂しいものがあります。
そしてオープンワールドと言うと、すでにフォーマットが決まってしまっています。
もはやオリジナリティーなど出しようがないというほど、醸成されつくしたジャンルなのかもしれません。
ゴースト・オブ・ツシマは何がすごい?
さて、それを踏まえて、システム的にはオリジナリティーの欠片もないGoTは一体何が優れているのでしょうか。
あ、言い忘れてましたが、GoTは傑作だと思ってます。
システムが従来のヒット作を習っていると言っても、「オープンワールドにさえしておけば面白くなる」とは限りません。ドラクエが創り出したRPGブームの中、クソみたいなRPGだってたくさんあったのですよ。
で、GoTはと言うと、これはひとつの完成形ではないかと思うほどによく出来ているのです。
具体的に何が?と言うと、ストーリー、グラフィック、音楽、シナリオ、すべてが素晴らしいし、システムこそオリジナリティーはないものの、ものすごく練り込まれているのです。
さらにその素晴らしさを短く表現するなら「題材の良さと作り込み」となります。後ほど詳しく。
グラフィック
グラフィックですが、PS4のデモ用タイトルとして数本選ばれるとしたら、間違いなく本作はそこに並ぶでしょう。HDR対応のテレビで観てるとウットリ。本当に、移動しているだけで観光気分になります。いや、PS5って本当に必要?って思ってしまいますよ。
直接的に比較されるタイトルとして、同じく時代劇の剣戟アドベンチャーである『SEKIRO』がよく挙がりますが、SEKIROが敵デザインやエフェクトがいかにもゲームという感じなのに対し、GoTはどこまでもリアルでシックです。
私がGoTをやりたい!と思ったのは、YouTubeの広告だったのですが、その動画に外連味みたいなものを一切感じない、リアルで没入感のすごそうなゲームだと直感したからです。
そしていざやってみるとその期待は一切裏切られることがありませんでした。
題材
「オープンワールドで時代劇をやれ」と言われたら、普通の日本人の感覚としては、戦国時代から幕末までと相場が決まってるんですよ。
室町以前だと「侍」の概念がちょっと違っていたりするし、日本人が大好きな江戸文化もありません。そもそも、「歴史好き」などとほざくヤツの多く(恥ずかしながら私を含みますが)が、よく聞くと戦国時代以降しか知らなかったりするんです。
戦国時代以前となると、一歩間違うと安倍晴明だの卑弥呼だの持ち出して妖怪とか出してすぐファンタジーにしたくなってしまうのがクリエイターの性。
その点GoTはやはりすごい。ガチの鎌倉時代ですよ。
戦国時代以前の何が面倒くさいって、おそらく資料集めだと思います。戦国時代から幕末なんて、コンテンツが腐るほどあるのでパクってくれば良いんですが、鎌倉時代となると、そのディテールは結構ガッツリ目に資料集めしないと再現できないでしょう。もっとも、GoTに再現されている鎌倉時代の対馬がリアルなものかどうかなんて、私に知る由もないんですけどね。
そしてリアルに再現できたとして、画が地味です。妖怪もダメ、派手なエフェクトもなしとなればなおさらで、GoTはわざわざその地味なリアル路線を突き進んだわけです。そのおかげで、私のような、さほどゲームをしないゲーマーの眼にも止まって、食指が動いてしまったのです。
外国人だから作れたゲーム
特筆すべきはこの鎌倉時代の侍ゲームを、外国人が作ったということ。というより、外国人でないとこんなゲームはできなかったでしょう。
ひと昔、ふた昔前だと、外国人が持つステレオタイプ的な日本人のイメージを嗤うことがありましたが、いやいや、こと歴史に関しては日本人こそがステレオタイプに縛られて、こういう優れた歴史ゲームは外国人に頼ってしまうことになってしまったのではないでしょうか。
思い込みや安直なコンテンツ選びがなかったからこそ、鎌倉時代の元寇(何度も言うけど、しかも対馬ね)を選んで、巨額な開発費を注ぎ込めたのです。
重ね重ね、資料をどうやって集めたのか、どんな専門家が携わったのか、開発チームに日本人はどのくらいいたのか、なんてことが気になります。
見ろ、主人公が一重まぶただぞ!
日本人が歴史モノを作れば、戦国時代や江戸時代になるだけではありません。登場人物が皆外国人になってしまうのです。
※画像はコーエーテクモホームページ(https://www.gamecity.ne.jp/sanadamaru/characters.html)より。
あり得ない顔立ち、あり得ない髪の色に、あり得ないファッション。おまけにある武将はレーザービームを放ち、ある武将は小さなガンダムになったりする。
これが今の日本のスタンダード(言い過ぎ)なのです。
一方のGoT主人公・境井仁をご覧ください。
めっちゃ一重まぶた!!
ヒロイン(?)もこの通り。
開発陣が日本人を美しいと思ってるのか醜いと思ってるのかは知りませんが、少なくとも『チャーリーズエンジェル』のルーシー・リウのような、「東洋人と言えば骨ばってて極端なつり目」みたいなステレオタイプでないことは確かです。
そしてこういうリアルなデザインこそ、私がこのゲームの世界に入り込める大事な要素のひとつなのですよ。
そしてこの服装や装備も貧乏くさくて実に良い!
いろいろとニクい
GoTでは、例えばメインクエストを「仁之道」、サブクエストを「浮世草」と呼びます。
オープンワールドで定番の、マップにピンを刺してメイン画面に方向と距離を示してくれるという例のアレ。GoTにそんな野暮なものはありません。ピンを刺せば、あとは風が運んでくれるのですよ。
いや、カッコよすぎでしょう。これはクリエイターが黒澤明ファンということで、黒澤っぽい演出にしたらしいのですが、黒澤明も偉大なら、GoT作った人も偉大です。
ところで、漫画なんかにも多用される風の演出って黒澤明が元祖なんでしょうかね?
それはともかくとして、GoTはこういった細部のちょっとした表現にまで演出を取り入れ、没入感を増してくれているわけです。
まとめ
『Ghost Of Tsushima』にシステム上のオリジナリティーは皆無。
だが、題材選びの時点で日本人にはまねのできない冒険をしており、内容もこれほどクリエイターのプライド、拘り、情熱を感じられる作品もなかなかないというくらいに、作り込まれている。
はい、傑作認定。
点数をつけるなら、ちょっとだけおまけして9点。