福音館文庫を全部読む。(4)お互いに迷惑をかけ合う寛容な共同体はどこにあるのか? 舟崎克彦+舟崎靖子『トンカチと花将軍』
筆名で作詞家・放送作家として活躍していた舟崎克彦・靖子夫妻の、童話作家デビュー作が『トンカチと花将軍』(1970。福音館文庫)です。
当時舟崎克彦は不動産会社に勤務しながらイラストレーターとしても活躍、舟崎靖子は詩人でした。
『不思議の国のアリス』式の異世界クェスト
男子小学生・トンカチの住む町から、あるとき、なぜかとつぜん、すべての花が消えてしまいます。花屋を探しても、公園を探しても、花が好きなさくらちゃんの家の庭を探しても、花は見つかりません。
トンカチはデニムのつりズボンをはいて、犬のサヨナラを連れて、さくらちゃんの誕生日プレゼントとして、花を探しに出かけます。広っぱのはずれに長く伸びた〈ホームランのへい〉の破れ目をまたぎ越して、森へと入っていきました。
森に入ると、白くて丸いよくわからないなにかが目の前を横切ります。サヨナラはそれを追って、勢いよくかけ出して行き、トンカチがいくら呼んでも戻りません。トンカチは、サヨナラとはぐれてしまったのです。
トンカチはジャボチンスキーというしゃべる水たまりから得た情報を手がかりに、サヨナラを追って、森の奥の大きな花畑に迷いこみます。
『不思議の国のアリス』式の異世界クェストですね。これはのちの、舟崎克彦の看板ソロ作品《ぽっぺん先生》シリーズに受け継がれる大きな枠組です。
迷惑をかけ合う寛容な共同体
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