イルミナティ〈バイエルン幻想教団〉
イルミナティは、哲学者、神学者、イエズス会修道士であるアダム•バイスハウプトが1700年代後半に創設した秘密結社です。その前身はバイスハウプトが主宰した「完全論者の教団」といいます。
その啓蒙的、共和的思想は、同じ聖職者はもとより、王侯貴族ら保守層には容認しがたいものでした。
そこから発展したイルミナティは、特にバイエルンで隆盛を極めたため、別名「バイエルン幻想教団」とも言います。
修道士が創設したにも拘わらず、組織の主義主張は、アナーキーで、ラジカルでした。そうした特徴から、バイエルン政府によって1785年に禁止されています。
その後、唯物論的啓蒙思想からイエズス会の批判を受けて地下活動を余儀なくされたイルミナティは、古代の秘儀を信奉するようになります。
イルミナティは理性とキリスト教の隣人愛とを基本に置き、平等な人間のあるべき姿を理性によって再構築しようとしました。
基本にある精神は「隣人愛」「自由」「平等」ですのでなんら問題ありません。
何が弾圧の原因となったかというと、すべての人は「王」となる素質を潜在的に備えており、教皇や王侯貴族ら支配者層は不要である、大衆がそれぞれ霊性を上げ、古のユートピア社会を復活させるべきだとの主張が原因でした。
これは特権階級の既得権益ばかりか、その存在さえ根底から否定する説です。この考えが封建制を真っ向から否定しているため、時の権力者から危険視されることになるのです。
また、儀礼を重視する秘教的共同体たるフリーメイソンリーとは異なり、イルミナティはイデオロギー的・政治的目的を有していたため政治的秘密結社に分類されることもあります。かのゲーテなども在籍していました。
1789年にフランス革命が起こると、貴族らヨーロッパ保守層内では「革命を扇動したのはイルミナティである」という一つの陰謀論が飛び交うことになります。
もともとイルミナティとは「光に照らされたもの」を意味します。歴史上、同じ団体名を名乗る存在がいくつかあり、狂信的グループも含まれているため、フランス革命時の経緯も相まってイルミナティというと「陰謀論」に行き当たるようになりました。
この特徴はフリーメイソンリー(思弁的フリーメイソンリー)と同じで、構成員に文化人や財閥、著名人など世論に影響を与えやすい人々がいることで、ある特権階級が政治を通して世界を掌握しているのでは、という疑念を生み出しています。
為政者、特権階級への反発が思想の根底にあるイルミナティが皮肉にも世界を陰で牛耳っていたと考えられているのです。
バイスハウプトは土の下でどう思っているでしょうか。