私は二度ほど青森県の恐山に行ったことが
あります。
東日本の震災の遙か前です。
私のような体質の者が震災前後に行ったの
では、大変なことになっていたでしょう。
その件ではもう懲りています。
恐山は年中入れる訳ではありません。
5月1日 から10月末の期間に限られています。(冬場は危険です)
慈覚大師円仁の開創になります。
「東へ向かうこと三十余日、霊山あり。
その地に仏道をひろめよ。」
との夢のお告げで、諸国を行脚して、辿り
着いたのが恐山です。
恐山は比叡山、高野山とともに日本三大霊山の一つに数えられています。(諸説あり)
ここは、死者の霊を口寄せするイタコのいる霊場です。
ただし、イタコは普段はおらず、口寄せしてもらうには、恐山大祭と秋詣りの期間に
行かなければなりません。
私も例にもれず、2回とも口寄せをして
もらえませんでした。
実は恐山菩提寺とイタコには何の繋がりも
ありません。
イタコが境内を口寄せの場に利用している
だけなのです。
普段はそれぞれの地域で生活している普通の主婦達です。
イタコの口寄せを体験した手記を読んだことがありますが、だいたい降霊させるのは
依頼者の親族で、あたり障りのないことを
言い、涙に暮れるだけのもので、真偽は
分からないと書いてありました。
私は体験していないので何とも言えませんが、おそらく本当に依代になっている力の
あるイタコはほんの数人で、後は地域
起こしに一役買っているだけなのではない
でしょうか。
さて、恐山の様子について見てきたままを、記憶を頼りに記述しようと思います。
まず入口に通称「三途の川」という実際の
河川があります。そこに太鼓橋なる橋が
架かっています。(現在は老朽化により
通行不可)
悪人には、この橋が針の山に見えて渡れないと言われています。
三途の川を無事渡るとそこは極楽浄土です。
荒涼とした岩場のあちこちに水子地蔵や
仏像があり、大抵、その前で子供をあやす
風車が回っています。
辺り一面に硫黄の臭いが立ち込めます。
それもその筈、境内になんと4箇所も温泉があり、宿坊に泊まれるのです。
青森、秋田にはこうした風情の秘湯が多々
ありますが、霊場の中にあるのは珍しい
ケースです。
近くには宇曽利湖という湖があります。
湖に向け岩場地帯を抜けると視界が一気に
開けます。
宇曽利湖畔は「極楽浜 」と呼ばれ、その寂涼たる美しさが、逆に不気味さを感じさせる景色です。
岩手県にある「浄土ヶ浜」にも似た趣です。
現在は東日本大震災犠牲者追悼の為、地蔵
菩薩像が建てられており、仏像の背面には
大小無数の手形が彫られているそうです。
恐山街道の途中にある湧き水が「冷水
(ひやみず)」です。
1杯飲めば10年、2杯飲めば20年
3杯飲めば死ぬまで!
若返ると言われる霊水です。
近隣のむつ市までは電車がありますが、恐山にはバスか自家用車、車でしか行けません。
非常に不便な所にあるため、行ってみては
どうでしょうかとは言えませんが、
日本中の霊が、死後に集まって来るという
霊山、一見の価値はあると思います。