森ビヨ・勝手にアナザーストーリー11話
【森ビヨ・勝手にアナザーストーリー11話】
この作品は、勝手に考えた『眠れる森のビヨ』のアナザーストーリーです。
基本的に皆、幸せになって欲しい。
原作者さま、演劇女子部さま、アップフロントさまとは全く関係ありません。
ご了承ください。
※映像にするとこの話は9分程度
※全12話を予定しております
(作者の都合で変更になる可能性もあり)
【登場人物】
・ヒカル(17)
・ヒマリ(17)
・ツムギ(17)
・ユッコ(16)
・ショーコ(16)
・山上(18)
・浜田先輩(18)
・夢子(17)
・ネネ(17)
・ノゾミ(17)
・カナエ(17)
・タマエ(17)
1 文化会館大ホール・調光室
新人デビューフェスティバルの会場。
調光室は、舞台真正面の客席後方に位置している。
舞台は緞帳が下りており、客席は暗い。
アナウンスN「ただいまより、崋山高校演劇部によりますハンス・クリスチャン・アンデルセン作、崋山高校演劇部脚色『雪の女王』を上演いたします」
ヒマリ、緊張の面持ちで息をのみ込む。
緞帳が開いていく。
2 崋山高校・2年A組教室(回想)
ヒマリの回想。
教室内でヒマリとツムギ、ヒカル、夢子、ネネ、ユッコ、ショーコが衣装を作っている。
ヒマリ、布を縫い合わせているが、糸がぐちゃぐちゃに絡まってしまう。
ヒマリ「ヒカル、何とかしてー!」
ヒカル「何とかしてって、僕だって手芸得意じゃないよ」
夢子「私がやるよ? 貸してみて」
ヒマリ「?! 大丈夫!」
夢子「あれ、そう?」
ツムギ「変な意地張ってないで、夢子ちゃんに任せたらいいのに」
ヒマリ「本当に大丈夫だから!」
ショーコ「あ、ヒマリさんー、こっちの裁断手伝って貰えますか?」
ヒマリ「うん!」
そこへ浜田先輩がやってくる。
浜田「おーい。誰か大道具の搬入手伝ってくれない?」
ネネ「はぁ~い」
ヒカル「あ、僕行きます!」
夢子「私も」
浜田先輩とヒカル、夢子、ネネ出ていく。
ユッコ、三人が出ていくのを見計らって
ユッコ「……ヒマリさんって、ヒカル先輩と付き合ってるんですか?」
ヒマリ「え?」
ショーコ「それ、私も気になってた! どうなんですか?」
ヒマリ「ただの幼馴染だよ!」
ユッコ「えー! でも、ヒカル先輩のこと好きなんですよね?」
ヒマリ「好きだよ? 幼馴染として!」
ショーコ「素直じゃないな~。ヒマリさん、夢子先輩に対抗心メラメラって感じですよ」
ユッコ「あ、私もそう思ったー!」
ヒマリ「そんな事なーい!」
ツムギ「ねぇ、この会話、僕いても大丈夫な奴?」
ユッコ「ツムギ先輩は、ガールズトークに参加しても問題ないんで大丈夫です!」
ツムギ「それは、それで傷つくなぁ……」
笑い合う一同。
3 文化会館大ホール・舞台
青色に照らされた舞台。
そこにはぐったりしたカイ(ヒカル)を抱えるゲルタ(ユッコ)の姿。
ゲルタ(ユッコ)「ああ、カイ。あなたの体はなんて冷たいの……。目を覚まして」
4 同・調光室
ヒマリが舞台を見入っている。
ユッコに合わせて、台詞を重ねて口ずさむ。
ヒマリ「ああ、ヒカル。あなたの体は何て冷たいの……。目を覚まして」
5 同・舞台
舞台上のゲルタ(ユッコ)の姿が、ヒマリに変わっている。
ゲルタ(ヒマリ)は、カイ(ヒカル)を抱えている。
そこへ、雪の女王(ツムギ)がやってくる。
雪の女王(ツムギ)「ついに、ヒカルは永遠を見つけられなかった」
ゲルタ(ヒマリ)「永遠なんてなくていい。ただ、生きていてくれれば、それで……」
雪の女王(ツムギ)「でも、それをヒカルが望むのか?」
ゲルタ(ヒマリ)「それ以外に方法なんてない! だから、私は何度もヒカルを引き留めてるの!!」
雪の女王(ツムギ)「キミは、ヒカルの事しか考えてないんだよ」
ゲルタ(ヒマリ)「え?」
雪の女王(ツムギ)「演劇部、皆を救わなきゃ。誰かが犠牲になって、誰かだけが幸せになるなんてそんなの本当の幸せじゃない。ヒカルがそう言ったんだよ」
ゲルタ(ヒマリ)「でも、どうしたら……? 何度も何度も繰り返した。何度やっても運命は変えられない」
雪の女王(ツムギ)「変えられるよ。キミなら。だって、君は真実の手帳を持ってるでしょ」
ゲルタ(ヒマリ)、いつの間にか手元にいつも記している手帳を持っている。
ゲルタの姿は、再度ユッコに変わる。
ゲルタ(ユッコ)、手元にあった真実の鏡で、雪の女王(ツムギ)を照らす。
雪の女王(ツムギ)、煙に囲まれて、寒色の鋭い衣装から淡い暖色の円やかな衣装に変わる。
照明の色も暖色へ。
雪の女王(ツムギ)「ありがとう。キミのお陰で、本当の自分を取り戻せたよ」
するとカイ(ヒカル)も目覚める。
ゲルタ(ユッコ)「カイ! 悪魔の鏡が解けたのね」
カイ(ヒカル)「ゲルタ?! ゲルタなんだね! 僕は何をしてたんだろう。キミの事をすっかり忘れてしまっていた。僕を助けてくれてありがとう」
抱き合うゲルタ(ユッコ)とカイ(ヒカル)。
6 文化会館前
会館の前でバスに大道具を積み込む崋山高校演劇部員達。
タマエ「いや~! 凄い良い出来だった! よくやったぞー!」
タマエ、ユッコとショーコを抱きしめる。
そこへ、ノゾミ、カナエ、夢子、ネネも混ざる。
カナエ「最優秀賞は逃したけど、新人デビューで生徒審査賞1位取るのなんて本当、快挙だかんね!」
ノゾミ「あんたら、本当に偉いぞー!!」
その輪を遠目に見ていたヒマリの元にやってくる山上と浜田先輩。
山上「今日は、本当にありがとう」
浜田「ナイスタイミングの照明だったよ!」
ヒマリ「……はいぃ」
ヒマリ、泣きだしてしまう。
山上「ど、どうした?」
浜田「おい、ヒカル!」
ヒカル、ヒマリの背中をさすってやる。
ヒカル「どうしたの?」
ヒマリ「すごい、良かった……」
ヒカル「そっか。そりゃよかった」
ヒマリ、すぐ泣き止み、正面にいたツムギの目を見つめ、
ヒマリ「私、地区大会も手伝うから!」
ヒカル「え、本当に?」
ヒマリ「嘘なんかつかないよ」
一同「おお!」
一同、口々にお礼を言ったりして、ヒマリを取り囲む。
満更でもなさそうにはにかむヒマリ。
ツムギ、輪の外でふっと笑う。
【次回に続く!】