4545 STATEMENT 〜人はなぜ服を着るのか〜
人は何のために服を着るのだろう?少し立ち止まって、あなたは「寒さを防ぐため」というかもしれない。体毛のない人間は寒さを凌ぐために服を着込んだというのだ。だが少し考えると、この考えには明白な矛盾が含まれていることが分かる。自然に考えてみれば、体毛がないから服を着たのではなく、服を着たからこそ体毛がないのだ。ではなぜ人は服を着たのだろう?こうしてぼくらは初めの問いかけに戻ってしまう。
言葉がなかった原始時代のことを思い出してほしい。あなたはジャングルの中、むき出しの裸足でシダを踏み、蔦を引っ張って、どことも知れぬ方向に歩いている。深い霧はわずか十歩も先の景色を霞ませ、自分がどこにいるのか、何者なのかもまるで分からないまま、思考はぼんやりボヤけている。ひょっとすると生きていることと死んでいることの区別すら曖昧なのかもしれない。言葉のない世界は全てが混然一体である。やがて夜になると漆黒の闇が、自分の姿すら世界の中へと溶かしてしまう。あなたは恐る恐る、一歩ずつ脚を踏み出す。バランスを崩さぬよう傍らに手を伸ばすと、木の幹らしきものに触れることが出来た。けれどもそれも一瞬のことだ。暗闇があっという間に木と手の区別をつかなくする。何しろあなたは「木」という言葉も知らないし、「手」という言葉もまだ知らない。そんな世界では、木に触れた途端に木と手は合体してしまうだろう。あなたは次第に恐ろしくなる。あなたの「手」はすでに「木」なのだし、脚は「根」や「土」であり、いつしか身体は「木」とも「根」とも「土」とも「闇」ともつかない、混沌たる化け物のようになっている。あなたは恐怖のあまり走り出す。このままでは、このままでは自分は闇そのものになってしまう。自分はどこにいる?あなたはどことも知れず、意味のない叫びを上げながらジャングルを転げるように走りまわる。わずかに自分が自分であることを分るのは、鋭い木のとげが足の裏に刺さるその痛み、それだけだ。痛みという皮膚感覚だけが、あなたと世界を分けるのだ。
世界で最初の服は、パンツでも毛皮でもなく、入れ墨であるという説がある。入れ墨。なるほど手首に入れ墨が入れば、ここから先は手であり、ここから手前は腕であることが分る。闇の中で木に触れても、もうあなたが木になってしまうことはない。そして入れ墨が簡素化されたものがアクセサリーである。腕輪が、手と腕の区別をつけるのだ。こうして身体を区別できるようになったあなたは、両脚の間にぶら下がった自分を再生産する装置を、「聖」器として他の身体と区別するようになる。いよいよ衣服の歴史が始まる。
もしも言葉が世界を自他として区別し、切り分けるための道具だとするならば、ひょっとすると、服こそが言葉以前の世界における言葉だったのかもしれない。言葉がなかった時代に、あなたは家族を失った悲しみをどう表現しただろう?何か腹の中にもやもやするような、きりきりするような、痛みが在る。それが体の内側を血液のように駆け巡り、暴れまわって、外に出ようとする。出口のない痛みの乱反射。とうとう痛みが出所を見つけた。あなたの瞳からどっと水分があふれ出る。涙がこぼれると、あなたはスッとする。痛みは去ったのだ。
やがてあなたは誰かが「悲しい」と言っているのを聞いて、その言葉を知った。隣の部族では、家族や親しい隣人が死ぬと、「悲しい」と言ってその死を悼むのだそうだ。あなたは一人、愛する人の亡骸を見ながら呟いてみる。「悲しい」。「悲しい」と言うと、「悲しい」が身体から少しだけ抜け出るような気がした。あなたは「悲しい」と発することで、悲しみを自分から切り離したのだ。「悲しい」という言葉の獲得は、人間を呪術と迷信に塗れたドロドロのカオス世界から、整然とした文明のコスモス社会へと進歩させた。進歩?近代人は言う。「このようにして人間は、やがて痛みも悲しみも克服するだろう」。本当だろうか。
衣服を着ることは、全くそのこと自体がSTATEMENT(声明・陳述・供述)そのものである。なぜなら、衣服こそが言葉以前の言葉だからである。だからファッションブランドのステートメントほどバカげたものはない。私はそう思う。
「言葉」は便利なものだ。小一時間も友達を前に愚痴れば、自分の痛みも悲しみも、すっと抜けて消え去ったような気がする。まるで麻薬だ。言葉がなかったころに比べて隔世の感がある。言葉は、人類初の痛くない感情である。漂白されて質量を失った感情は、その軽さ故、気軽に流通・交換されるようになった。「生活保護が受けられないと、万引きを繰り返し」「増え続ける難民を排除しようと」「ネットでの誹謗中傷を苦に」「闘病しながら7年に及ぶ法廷闘争の末」「いよいよ空爆が始まりました」ぼくらは無表情のまま、これらの質量のない感情を、無限にスワイプし続ける。現代人はみな「言葉」という麻薬の依存症患者である。痛みも悲しみも感じぬまま、いやだからこそ、眠れずにいつまでもスワイプし続けるのだ──その先には何もないと分っているのに。
Hey Bro, おれたちは身体を取り戻す必要がある。その先にある「痛み」を、おれたちの手のひらに奪い返すんだ。
FourtyFive-FourtyFiveはSTATEする。
(1)FourtyFive-FourtyFiveという服を言葉にしてはならない
(2)FourtyFive-FourtyFiveという服を言葉にしてはならない
(3)FourtyFive-FourtyFiveは常に一対一(これは俺と他ならぬおまえとの話だ)
(4)シャツと靴は脱いだときに真価を現す
(5)FourtyFive-FourtyFiveの表現に制限はなし
(6)FourtyFive-FourtyFiveを初めて着たものは、必ず自分のFourtyFive-FourtyFiveを始めなければならない
𝟜 𝟝 𝟜 𝟝 - 𝕗𝕠𝕦𝕣𝕥𝕪𝕗𝕚𝕧𝕖 𝕗𝕠𝕦𝕣𝕥𝕪𝕗𝕚𝕧𝕖 -
𝔻𝔼𝕊𝕀𝔾ℕ𝔼ℝ 𝔸ℝℂℍ𝕀𝕍𝔼 & 𝕍𝕀ℕ𝕋𝔸𝔾𝔼
2nd popup
at koenji FAITH @faith_koenji
4-2-10, Koenji-Minami, Suginami, Tokyo
10/14(sat) 3-10pm
with opening party
*party 入場料Free
6/25(sun) 3-10pm
Come on and Join us!!!! 🤙゛💦✨✨
「痛みから逃げるな。人生最高の射精を味わえ」
by Chinchin50cm