『かみさまのくすり』企画書
①キャッチコピー:
読み終わった後、私は大事な家族を抱きしめました
②あらすじ:
夜になると突如現われ、生命を奪っていくマモノ。マモノを倒す事ができるのは、証の子と呼ばれる子供のみ。
しかし自分と繋がるマモノを倒すと死ぬ。どれが自分と繋がるマモノなのか、判別出来るものはいない。
証の子以外の者がマモノを倒すことは不可能だった。
山間の小さな村で育った猟師の息子・ミズキも証の子としてマモノと戦っている。
ミズキの妹・ヒナは九死に一生を得た後、目には見えないものが見えるようになり兄から繋がる綺麗な何かを感じ取った。
ミズキは妹の感覚を信じ、死を待つだけの運命に抗うため、繋がりを辿る旅を決意した。
旅の果て、ミズキは仲間となったサムライの子タモンと共にマモノの真実へとたどり着く。
③第1話のストーリー:
【マモノの説明】
夜が来ると突如影から起き上がり、さまよく大きな黒い影。命を奪っていくそれを人々はマモノと呼んだ。
数多の武人が挑み、倒れた。マモノには刃物も、火矢も、爆薬も、毒ですらも効き目が無かった。
人々は一心不乱に太陽の女神へ祈り、神託を得た。
マモノと繋がる証を持つ者だけが、マモノを倒すことができる。ただし、子供は自分と繋がるマモノを倒すと死ぬ。
人々は、多くの命を守るために、数名の命を捨てる選択をした。
【戦うミズキ】
集中力を高め、戦うミズキ。遠くで大人が見ているが、彼等はミズキが逃げ出さないようにいるだけの見張りで、誰も手を差し伸べることは無い。
マモノと戦える唯一の存在である証の子は、集中してマモノを見ると弱点である核が見える。そこを攻撃すると、マモノは闇に溶けて消える。
一瞬でも臆すれば、証の子でも攻撃は効かなくなる。ミズキは夜が明けてマモノが消えるまで一歩も逃げずに弓を引き続けた。
ミズキが戦う理由、それはたった1人残された妹のヒナを守ること、ただそれだけになっていた。
【ミズキの過去】
ミズキは山間の小さな村で生まれ育った優しい少年。1匹の虫すらも無下に殺せないほどに穏やかな性格だった。凄腕の猟師である父、料理上手な母、甘えん坊の妹に囲まれて幸せに暮らしていた。
ある日、ミズキに証の子の証明である、淡い色の瞳が発現する。ミズキの両目はまるで新緑のように変わっていた。
半狂乱になる母、母を宥めるしか出来ない父。ミズキの運命は決まってしまった。
その日から、ミズキは父の特訓を受けて三日三晩寝ずに弓を引き続けた。凄まじい集中力は父も感心するほどで、ミズキはあっという間に父の腕に追いつく。
平和な日常はもう戻らない。ミズキが証の子となってから3日だけは大きな国の神官様が結界を張ってくれたが、これ以上はもたない。これからはミズキだけが戦うことになる。
【家族との決別】
証の子と家族は離ればなれになる。家族が子供を守って逃がすのを防ぐためだ。証の子を逃がした村は証の子を追いかけるマモノによって滅ぼされてきた。決してあってはならないことだ。
ミズキは家族と、最後の食事を楽しむ。旅立つ家族を見送ることは禁じられている。
両親はミズキに、恐ろしかったら逃げても良いと言ってくれた。でも逃げれば家族の居場所が無くなってしまう。ミズキは逃げずに戦う事を決めて、眠りに落ちた。
④第2話以降のストーリー:
【遺された家族】
ミズキと遠く離れて暮らす予定だった家族は、旅立った途端に雪崩に巻き込まれてしまう。両親は亡くなり、妹のヒナは生き残ったものの両目の光を失う。
そこへ駆けつけた旅の薬師である不思議な老婆がヒナの命を救ってくれた。たった1人の家族と離れたくない、自分は決して逃げずに戦うからと村長を説得して、ミズキは村外れのはみ出し者が住まう集落で、旅の薬師と共に生活する。
その内、ヒナが不思議なことを話し始める。ミズキから何か美しいものが繋がっている。だが、ミズキが繋がっているのはマモノのことで、マモノは命を奪うものだ。
しかし、ミズキは妹の言うことを信じた。自分と繋がっているものは、マモノだが人が思うものとは異なるかも知れない。もしもマモノの謎を解ければ、自分は死の運命から逃れられるかも知れない。
ミズキはヒナが指し示す道に従い、旅を始める。
【マホロバの国】
旅の間はヒナが安全だと言う山道を越えていたが、途中で物資を補充するために里へ下りる。すると、証の子を保護しているという奇特な国の話を聞く。
証の子がどのマモノと繋がっているのか分かり、そのマモノを避けて戦うことで役目から解放され、何人もの証の子が故郷へ帰っている、と教えてくれた。
希望を胸にミズキはマホロバの国へ向かう。
【裏切り】
マホロバの国で、ミズキは初めて同じ宿命を背負った仲間と合流。唯一、無愛想なサムライの子・タモンとも出会う。楽しく過ごしつつ、順番に回ってくる夜の番をこなす。
だが大事な仲間が、マモノを倒すと共に朝日の中へ消えてしまった。
証の子を利用しているだけと知ったミズキをタモンが守ってくれ、揃って国を追い出されてしまった。
【不思議な男】
心身共に疲れ果てたミズキとタモンに、ヒナは一生懸命お粥を作って励ましてくれた。そんなヒナも旅の疲れから高熱を出して倒れてしまう。
ミズキは薬師から習った知識で何とかヒナの熱を下げようと試みるがなかなか効き目が無い。困り果てていた時、山中で猟師の罠にかかって宙づりになっていた不思議な男と出会い、助けてやる。
男は罠から助けて貰った礼だと言って、ヒナの高熱を下げる秘薬を調合してくれた。秘薬でヒナは助かり、ミズキが礼を言うと、男は早くここから離れるよう忠告する。
男の仕える大国が、マホロバの国を攻める為に、偵察に来ていると告げる男。大国の目的は保護されている証の子だ。証の子が1人居るだけでも、その子に戦わせて周辺諸国に警備と称して大金をせしめることが出来る。
マホロバの国は正に、巨万の富が渦巻く宝の山だ。だが、男の行動は矛盾している。証の子である2人を連れて行けば、彼は大手柄のはずだ。だが、男は、いずれ自分は必ず死ぬだろう。その前に良い事とやらをやってみたかったと。ミズキが礼を言うと、男の姿は消えた。
【戦の始まり】
男の言う通り、戦が始まる。ミズキ達は急いで出来るだけ遠くへ離れようとしていた。だが、タモンが足を止めてしまう。タモンは今見えているもの以外の物が見える、と目を閉じて座り込んでしまった。
疲れが出たのだろうかと心配してミズキが彼の肩に触れるとミズキにも見えた。まるで鳥になったように天から見下ろす、マホロバの国の景色。
マモノの侵入を阻むように高く築かれた壁に向かって何度も火柱と共に轟音が鳴り響く。ついに城壁が崩れて突入を開始すると、あっけなく勝敗は決する。
やがて夜が来ると国の周りにマモノが立ち上がる。崩れた壁から、証の子が次々に押し出されるように出て、戦うことを強要された。
戦の火を飲み込むように、マモノは今までに見たことも無いほど巨大化している。
姫神子を信じ、死を恐れずに済んでいた子等は泣き叫び、マモノを倒せる状態ではない。次々にマモノに飲み込まれて崩れ落ちていく。だが、姫神子について疑心を抱いていた3人の子等だけが戦い、夜を乗り切った。
【タモンの誓い】
タモンは証の子も一緒に生きることができる国を作る、と宣誓。その時が来たら、生き残った3人の仲間も迎えにいくと決心を固めた。ヒナもタモンの考えに賛成し、励ます。
3人はヒナの導くままに山野を進み、ついに黄泉の国と現世を隔てていると言われている地返しの大岩が見えて来た。
【黄泉の国へ】
黄泉の国を守る番人からの奇妙な問いかけにも合格した3人は黄泉の国へと入って行く。そこで突然大きな水滴に飲み込まれてしまった。
水滴の中には少年がおり、ミズキ達が暮らしていた村の御神木に宿る木霊だと名乗る。それからミズキ達にマモノのことを教えてくれた。
この世に生み出されたケガレと呼ばれる悪いものを、神々が少しずつ浄化していた。けれど、浄化しきれないほどにケガレが増えていく。
神々は最早、ケガレを受け止めきれない。受け止めきれないケガレを、黄泉の国へ捨てるようになると、ソレは1個の生命のように形を持って動き回るようになってしまった。
それが、マモノの正体だった。ミズキは御神木さまが生み出したマモノと繋がっている。
マモノは神さまの分身であるため、もちろん人間に倒すことは出来ない。証の子とは神と繋がる神聖な神子であり、神に触れることが出来る唯一の存在。だがそれでも繋がりの深い神(マモノ)を倒してしまうと神罰が下ることになる。
ミズキはマモノをどうしていけば良いのか御神木さまに尋ねたが、彼にも分からなかった。人の戦を見て大きくなっていったのがケガレによるものだとすれば、逆のことをすれば小さくなるのでは?と尋ねると、御神木さまは目を輝かせて頷く。
ミズキもタモンも、神様とも繋がっているから人にはない浄化の力がある。どれほど時がかかるか分からないが、マモノを浄化出来るかも知れない。
その答えを持って、ミズキは自分のマモノと共に暮らす奇妙な共同生活を始める。
【大きな弟】
ミズキのマモノは、黄泉の国にいる間は無害だ。ミズキ達も触れないように注意しながら、オドオド揺れ動いているマモノを遠くから見守る。
徐々にマモノと意思疎通が出来るようになり、触れることが出来るようになっていき、まるで大きな弟のように自分を慕うマモノにミズキは悲しくなっていった。
自分は弟が消えてくれるように願っている。なんて残酷なことをしているんだろうと、涙を零せば、マモノはミズキを心配して薬を作ろうとしてくれた。
ミズキは、大切な弟に2人だけの秘密だと、名前を付けてやる。
【それから】
風の噂に「証の子を守ってくれる奇特な国ができた」と聞こえるようになる。そこの領主はまだ若いサムライで、彼の側には美しい神子が寄り添っている。
青年ミズキは旅を続ける。誰も居ないことを確認して、影の中から飛び出す弟はもう猫ほどの大きさになっていた。
通りすがりに聴木師という御神木さまの治療を専門で行う技術者を助ける。打ち解けた娘の前に弟も姿を見せて、聴木師の勉強中である娘は弟の中に新芽が宿っている、と話してくれた。
ミズキはようやく見つけた本当の終わり方に涙を零し、思わず娘に求婚してしまう。
【その後】
山間の小さな村の入り口に、寄り添うように立つ欅の木。1本は堂々たる年輪を重ねた樹齢300を越える大樹。もう1本はまだヒョロヒョロと伸び始めたばかり。
この村を訪れた薬師の青年が、この木を植えて欲しいとお願いしていったという。
小さな苗木は、やがて隣の巨木と寄り添って1本の大きな木へと成長していった。