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家族で見守る「セミの羽化」は、真夏の花火大会に似てた
花火大会やお祭りが中止になって、ちょっぴり寂しい夏をすごしているかたも多いのでは?
我が家もそう。本当だったらお祭りが開催されていたはずの金曜夜。数年前までは友達と集まって、子供には浴衣を着せて、盛りあがっていたはずなのに・・・。
いつものように夕飯の支度をしていた19時ころ。突然、スマホが鳴りました。
画面に表示されていた電話の主は、近くに住む高校の同級生。
わあ、どうしたんだろう?料理をつくる手をとめて、あわてて出てみると。
「セミの幼虫をたくさんつかまえたんだけど、玄関に届けてもいい?」
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ということだったんです!
まるで「野菜がたくさんとれたんだけど、届けてもいい?」というようなテンションで、ちょっと可笑しい(笑)
この日はもともと、彼女と子連れでセミの幼虫をつかまえる約束をしていました。でも周囲で感染がひろまる状況だったので、延期させてもらうことに。セミ好きな子どもたちは楽しみにしていたので残念でしたが、こんな状況なので仕方ないか・・と思っていた矢先のできごとでした。
彼女の心遣いが嬉しくて、すぐに「え!いいの?そっちまで行くよ!」と返答。すっぴんにボサボサ頭、変なTシャツを着ていましたが、暗闇なのでおかまいなし。とりあえず帽子だけかぶって待ち合わせ場所まで急ぎます。
夏の夜、友達に会うために走るのは、いつぶりでしょうか?
セミをもらうために走るのは、人生で初めてでした(笑)
そうして待ち合わせ場所に行くと、彼女から渡されたのは、丁寧に紙袋に包まれた、ミンミンゼミとアブラゼミの幼虫です。「抜け殻」としてはよく見かける幼虫ですが、動いている姿を見るのは、かなり久しぶりかも。
「幼虫をカーテンとかに引っ掛けておくと、ちょっと上っていって、立ち止まるはず。そして今晩、羽化がはじまるよ」
羽化とは、幼虫から成虫に変わること。幼虫の殻を抜け出し、セミの成虫になるちょうどその瞬間を、今晩さっそく見られるというのです。
カーテンに引っ掛けておくだけでいいというのが、意外と簡単。私はわくわくした気分のまま、歩いて5分の道のりを、走って家に帰りました。
セミの幼虫が、我が家にやってくる
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「セミの幼虫さんが来たよ〜」
玄関に着くなり、私は嬉々として、さっきもらったばかりの紙袋をひらきました。子どもたちは「セミ!!!」と言って、走って私のもとへ集まってきます。
さっそく、カーテンに2匹の幼虫さんを引っ掛けました。さっきまで釘付けだったTVそっちのけで、ふたりともセミに夢中です。
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カーテンにかけたばかりのセミは、どんどん上っていき、180センチくらいのところでピタッと止まりました。
「いつ、羽化がはじまるだろうねぇ」
子どもたちはもちろん、私や夫も、セミが気になって気になって。5分起きくらいにセミを見に行き、「まだだった」と言うことを繰り返しながら、夕飯を食べました。
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夕飯を食べ、ビールをプシュッと開けながら、みんなでひとつのものを見つめるこの感じが、なんだか楽しい。
夏にしか楽しめない特別感があって、「いつかな」「まだかな」と、大人も子どももワクワクそわそわ。まるで、花火大会を待つ時の気持ちに似ているかも。
せっかくなので、羽化を見届けるまで、今日は夜更かししていいことにしました。
「やったぁ!!!」
と子どもたち。こんなところもお祭り感があります。予定通りにいけば、夜10時頃までには羽化が終わるんだとか。
あと数時間で成虫が出てくるなんて、感動的でとても不思議。アブラゼミやミンミンゼミは土の中で2〜4年暮らすというので、大人になってやっと地上を味わう記念すべき日が、今日ということになります。
そんなことを考えながら過ごしていると・・
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いよいよその時がやってきました。
1匹のほうの幼虫の背中が、きれいに割れていることに気がつきました。中からは、白っぽい緑色の体がのぞきます。
「はじまったよーー!」私はさっそく、幼虫をくれた友達にLINEしました。彼女のほうも数匹がすでに羽化がはじまっているよう。
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そして数分後、少し体勢が変わり、さらに体が出てきました。ゆっくりではありますが、徐々に確実に出てくる、セミさん。まるで私の出産のときを思い出すようです。脱皮の瞬間をこんなに間近に見られるなんて。子どもたちや夫と息を呑んで、ひたすら幼虫さんを見つめます。
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そうしてさらに数分後、透明な乳白色の体にちょこんとついた、緑色の羽が出てきました。あのセミの硬いしっかりとした羽根からは想像もできないくらい、見た目はふにゃふにゃ。天使のようにかわいい羽根です。
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セミが下を頭にして脱皮していたため、今にも落ちそうな体勢に見えました。私が「セミ、落ちないのかな?」というと、長男は下に手を添えてあげていました。
Twitterにこのことを実況中継すると、セミ博士から「落ちても大丈夫」とのコメントをもらってほっ(笑)万が一のことを考え、下にクッションまで敷いていた過保護な私でした。
こっからしばらくこのままで、何十分からするとクルン!!ってひっくり返るよ。落ちても大丈夫だから触らないであげてね!セミ博士より。
— なおはし (@Nao_hashi70) August 5, 2022
すると助言の通り、いつのまにか体勢を変えて、私たちの見慣れたセミスタイルに近づいてきたセミさん。もう幼虫ではなく、立派な成虫の形をしています。
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生まれたてのふにゃふにゃの弱々しい感じが、とてもかわいい。よくがんばったね、すごいね。私たちは拍手をして、脱皮したセミさんを迎えました。
「セミさん、あと数日しか生きられないから、お外へ逃がしてあげようか」
私がそう提案して、外の植木鉢にある小さい木に、セミを置いてやることにしました。私も子どもたちも1日遊び疲れていたので、すぐに就寝。明日の朝どうなっているか、楽しみです。
翌朝、びっくり。
そうして翌朝。昨晩、脱皮したばかりのセミを置いた鉢を見ると…
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なんと、もうすっかり立派な成虫になったアブラゼミが、その鉢にまだいたんです。まるで私たちを待ってくれていたかのよう。
あの、ふにゃふにゃの白くて薄緑色の羽が、こんなに茶色く、黒く、立派な羽にひと晩で変わるなんて。誰が想像できるでしょう。
この姿を見て、大興奮の次男。さっそく捕まえようとしたら、セミはびっくりしたようにギギギギッと鳴いて、近くの電信柱まで飛んでいってしまいました。
(セミさん、ありがとね〜)
地上をぞんぶんに楽しんでね。なんだか成長の1シーンを共有させてもらったような、そんな小さな嬉しさを感じました。
セミの羽化観察は、花火大会のよう。
私にとっては、30数年生きてはじめての、セミの羽化観察。
これは大人になっても思った以上に楽しく、また夏になったらやりたいことのひとつになりました。
夏の夜にしかできなくて。
ごはんを食べて、みんなでひとつのものを見つめて。
ワクワクそわそわしながら、その時を待って。
感動的な瞬間を、共有できて。
その瞬間は、ちょっと儚い。
なんだかセミの羽化観察は、花火大会のようです。
ここ数年は、花火やお祭りや旅行など、あらゆることができなくなり、寂しい思いをすることも多かったのですが。近くに目を向けてみると、まだまだ大人になっても知らなかった楽しみがあるものだと気づきました。
セミの羽化観察、デートにも意外といいと思います。(私だけかな?笑)
小学生のお子さんがいる方は、自由研究にもうってつけ。
ぜひとも、やってみてくださいね。楽しい夏休みを。
小森谷 友美
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