小さな"わたし"が死んだ日。そして生まれた日。
もしも今、あなたが昔の私と同じように、過去の自分と比べたり、周りと比較したり、自分を見失って、孤独と絶望感を感じているのであれば読んでほしい。
ライフステージが変わっていく中で”自分は本当は何がしたいんだろう”という問いが、頭の中をぐるぐる回って、自分を追いつめる。味方だと思っていた”自分”が一気に他人にでもなったかのように。
私は絶望感を感じていた。
特にライフステージの変化によって人生の変わることが多い女性は、同じような体験があるのでないかと思う。
私は、この一年で帰国、転職、引越し、妊娠、結婚、出産、育児を最速で通過、経験した。コロナによって行動に制限がかかり、コロナと共に大きくなるお腹を抱えて、心は大きく揺れていた。
さすがの私も、死ぬかもしれないと思った。
肉体的と言うよりは、精神的な生死を彷徨っていたと言う表現に近い。
妊娠による肉体の変化に心や精神が追いつかない日々。
きっとホルモンバランスや自律神経の乱れの影響もあるのだろうけど
跡形もなく崩れ去っていったのは、自分のアイデンティティだった思う。
”私はこれをやりたい”とか”私はこれが好きだ”とか。独身時代は、未来のビジョンが明確だった。迷うことなく新しい世界に飛び込んで、意志が強くて、勇敢で、情熱的で。朝方まで仕事に集中だってできたのに。
あの頃の私はどこにいったんだ・・・?
一人の人生だから、好き勝手で動ける。自分だけの妄想で頭いっぱいにできる。しかも努力したらある程度叶うと信じている自分にとって、どんな状況になってもプランは見事に達成されるだろうと思っていた。
でも現実は違った。
無気力、無力感、孤独感に襲われた。
将来やりたいと思っていたことも、好きだと思って続けていたことでさえも、そこまで興味がなくなってきて。大好きだった食べ物も美味しいと感じなくなってきて。
長くて暗いトンネルに迷い込んでしまったかのよう。
光も自分自身も次第に見えなくなって。
そして気づけば、確かにあったはずの自分への”信頼”と”自信”を感じることができなくなっていた。
明確な目標を持って、キャリアにプライベートに猪突猛進。「死ぬこと以外かすり傷」そう本気で思って人生を突っ走ってきた自分にとって、妊娠はかなり大きなアイデンティティクライシスだった。
肉体と心の葛藤を繰り返すたびに、髪色を変えた当時の私。緑→青→茶→金→そして一周回って黄緑に落ち着いた。
妊娠は、小さな自分の「死」だった。
自分の身体から新しい生命が生まれて、お腹の中で育っていく。
体は1つだけど、心も意思も別の状態が10ヶ月も続く。
不安、孤独、悲しみ、怒り、憤り、嬉しさ、楽しさ、幸福感
様々な気持ちが入り乱れ、内面葛藤を次々繰り広げていく。
時には周囲を巻き込んで。
その間に細胞も、神経も、肉体も、全て変わっていくのである。
ただし1つを除いて。
それは”魂”だと私は、思う。
自分の”魂”が遥かに研ぎ澄まされて生まれ変わったともいえる。
そう、第二の人生が始まったのだ。
「出産」は新しい自分が誕生した記念日だったんだと今思う。
昔の自分では到底乗り越えられないような恐怖や痛みを乗り越えて
自分が本来持っている内なる力で、重い壁をぶち破る圧倒的な体験。
妊娠期間は”生まれ変わる儀式”そのものだったのだと思う。
そう考えると不思議で、”自分、おめでとう”と。何百倍も強くなった自分の”魂”に、心から喝采を送りたくなった。
私を支えてくてる同世代の仲間達との時間。いつだって地球のいいエネルギーになろうと自分を磨いている仲間達からは勇気をもらう。
独身時代と比べると、できることは限られているけど。
確実に独身時代とは違った大きくて太い”魂”が宿っていると感じる。
そして今私は、少しつづ自分を取り戻しつつある。独身時代では思いもつかなかったユニークで大胆で、ワクワクするような発想を抱いている。
”社会に取り残されたらどうしよう”なんていう不安も時々顔を出すけれど
「死んでしまうかもしれない」なんて臨死体験をすると、不思議と肚が据わるもんだ。というか私は肚を据えると決めてしまった。
一度しかない人生に値する時間の使い方なのか、命の燃やし方なのか。
本当に大切なこと、挑戦したいこと、叶えたいことはなんなのか。
自分の心を観察して、内なる声に耳を澄ませていれば、そんなことは自然に自分の内面から再び燃え上がってくる時がくる。研ぎ澄まされた”魂”がサインをくれるように。
だから、大丈夫。
ちゃんと乗り越えていける。
研ぎ澄まされた”新しい自分”と共に歩む人生がとても楽しみだ。そして我が子は本当にかわいい。