観察は言葉にすること【デッサン基礎】
「モチーフをよく観察しましょう。」
「よく見て描きましょう。」
こんな事をよく言われませんか?
「よく見てるつもりだけど描けない!」
「ていうか、見るってなんだよ!?」
と思ってるのではないでしょうか?
デッサンをする上で、観察は絶対必要な事です。でなきゃ描けませんよね。
でも、実際「観察」や「見る」って何なのか。
そこを考えていきましょう。
デッサンにおける「観察」って?
結論から言うと、「言葉に出来る事」です。
「リンゴを描きましょう。」と目の前にリンゴを置いて描く状態を想像してみてください。
りんごは丸い・・・・
りんごは赤い・・・・
ヘタがある・・・・
・・・・・・・・・・
普通の人はここで止まってしまうのではないでしょうか?
ここから、「観察」が始まります。
「りんごは丸い」ですが、本当にそうでしょうか?
下から上にかけて膨らんでいるように見えませんか?
また、上から見ると、りんごは五角形をしています。
これを文章化すると。
「りんごは、下から上にかけて丸みを帯びており、上から見ると五角形に見える、球体に近い形。」
になります。
「りんごは赤い」は観察をすると、「ヘタの中心から放射状に濃い赤色がストライプのように出ている。また、小さな黄色い点が、下に行くほどに増えていっている。」になっていきます。
観察することは、視覚的に情報を具体的に言語化できるようにすることで、それをすることで、デッサンが具体的になっていきます。
「よく見て。」と言われる人は、ただ眺めているだけで、自分の中で具体的にモチーフを理解していない状態と言えるでしょう。
観察するために分割して考える。
観察の意味がわかったところで、何も考えずに見えたものから言葉にしていくとごちゃごちゃになってしまいます。
どこから見るのか、どこから描くのかを見ていきましょう。
まずは「形」から
何を描くにも、まず形がわかっていないと始まりません。
りんごでいえば、「丸い。でも、下は上より窄まっていて、輪郭も少し凹凸がある。下はもこもこと形が変わっているし、上にはヘタがあって、沈んでいる。」と言ったところでしょうか。
次の観察は「影」
形が描けたら、次は「陰影」を観察しましょう。
色を塗りたくなるのをグッと堪えて
「もし、このりんごに色がなくて白い石膏で出来たものだったら?」
と考えてみてください。
影はどう見えるでしょうか?
参考に球体にできる陰影を掲載しておきます。
細かい模様の前に「固有色」
形ができて、影が描けた!次は色だ!
と描きたい気持ちはわかりますが、「固有色」と「模様」の違いはわかりますか?
「固有色」はそのモチーフが持っているメインカラーだと思ってください。
「模様」は読んで字の如く、そのメインカラーの上に出る模様や写り込みです。
ここをごちゃごちゃに考えてしまうと、前回の「陰影」が消えて、平坦なデッサンになってしまいます。
りんごの持っている固有色は「赤」。下に向かって少し明るく黄色くなっているかと思います。
この固有色と、前回の陰影を兼ね備えた色を載せていきます。
模様、細部は最後に!
形、陰影、固有色が乗ったら、最後の描き込みに入ります。
一番初めに見えてしまう模様ですが、先ほどの3つを理解した上で観察を深めることで、土台のしっかりとしたデッサンになります。
りんごの場合は、表面に見えるストライプ状の深い赤色と、黄色の点々ですね。
最後に
「観察」が何を意味して、どのように考えていけば良いかわかっていただけたでしょうか?
自分の中に落とし込んで、言葉として説明できるくらい具体的にイメージをしながらデッサンを進めていきましょう。
2学期に入って、教室内のムードもピリついてきました。
うまくいかない時もあるかもしれませんが、落ち着いて、目の前の課題に取り組んでください。
金沢美術学院
永井ちなみ