【北京地下鉄乗りつぶしレポ】: 15号線
はじめに
北京留学中に成し遂げたいことの一つとして「北京地下鉄全線完乗」というものがある。北京地下鉄の総延長は700kmを超えており、北京の市内のいたるところに縦横無尽に地下鉄網が張り巡らされている(なお、東京メトロは全線で195km)。全25路線の完乗を通じて、「地下鉄」とその「終着駅」という観点から、すこしでも「中国」の雰囲気を味わっていただくことを目的に乗りつぶしレポ第1回目を執筆することとする。
北京地下鉄の歴史を簡単に紹介
北京地下鉄の歴史は、中国の発展とともにあるといっても過言ではない。
1967年に現在の地下鉄1号線苹果园(りんご園駅)~北京駅間にあたる部分が開業して以降50年近くの間、町の中心部のみ、50kmに満たない距離しか存在しなかった。そのため、長らく主たる通勤手段はバスと自転車であった。しかし、2008年の北京オリンピックを機に状況は一変、急激に多くの路線が建設されわずか20年がたたないうちに、総距離700kmを超すまでに至った。
乗りつぶしを行う理由
ここである疑問が浮かぶ。日本では慎重に慎重を重ねて地下鉄等の鉄道路線は建設されるが、このような突然の進化を経験した北京の地下鉄路線網は、本当に建設に見合うだけの人数を日々運んでいるのか?また、そもそも終点には何があるのか?
北京という町を理解するにも、北京の町の大きさを実感するためにも、また中国の人口の多さを実感するためにも良い経験になると考え、この1年の間で、全27路線を乗り通したいと考えている。
本編
1:概説
その第1弾は、地下鉄15号線である。
北京の西側、大学などが集まる文化都市の海淀区から朝陽区を通過し、北京市北西にある順義区までを結ぶ15号線は、総距離44kmであり、全列車6両編成で運転される。清華大学すぐ近くの清华东路西口駅から俸伯駅までを結んでおり、天安門などがある北京の中心部は通らないものの、オリンピック公園周辺の市中心部北側と郊外を結ぶ重要な路線となっている。なお、一部区間は高架線を走行する。
2:道中の様子
清华东路西口駅の時点では空席が目立っていたが、さっそく次の六道口駅から停車駅に停車するごとに乗客は増えていき、オリンピック公園の真下を通る部分ですでに満員状態となっていた。1番驚いた点は、この満員状態がほとんど終点まで続いたこと。座席はすべて埋まり、立客で通路も満杯状態である。もちろん多少の乗客の入れ替わりはあったが、大多数が終点の俸伯まで乗り通していた。
3:終点「俸伯」駅 ~日本と似て非なる終着駅~
俸伯駅:
1面2線の駅であり、引き上げ線を備えている。この駅までやってきた列車は一度、回送として引き上げ線に退避し、整備などがなされたうえでもう片方の出発ホームに到着する。
地上の様子は日本と非常に似ている。周囲にマンションなどは見当たらないものの、この駅のさらに東側にかけて住宅街が広がっていた。駅前には、バス停がならんでおり、住宅街やより東の方向へとバス路線が伸びており、仕事帰りの人々が長蛇の列をなしていた(秋の京都駅で見られる市営バスを待つ列と同じくらいである)。50メートル以上連なる列もあり、寒空の下スマートフォンを眺めながら待つ人々が、次から次へとくるバスに吸い込まれていた。
ただ、日本と異なる点がある。それは「露天商」の存在だ。中国では今なお露天商が数多く存在する。北京の街中であれど、三輪車を引っ張り、焼き芋や焼き栗、糖葫芦(りんご飴のようなもの。果物を水あめで固めたものが串刺しになって売られている)、ソーセージを打っている露天商の姿をよく見る。この駅でもご多分に漏れず奥の露天商が様々な商品を販売していた。仕事帰り、学校帰りの方々がバスを待ちながら、飴やソーセージを食べていた姿が印象的だった。
なお、もしかしたらこうした露天商は警察の許可を得ていない人々かもしれない。というのも、取材中露天商が固まって商品を販売していた場所からぱったりと露天商が消えているタイミングがあったのだ。どこに消えてしまったのかと周囲を探すと、反対側の出入り口に一斉に移動しており、かつ、元居た場所の周囲には警察車両もいたため、警察に移動するように命令されたのかもしれない。それにしても、露天商の異動の速さには驚きを隠せない。皆、3輪車(後ろに二台があり、その部分で商品を並べている)のため、すぐに移動することが可能なのである。実際に柔軟に移動しながら商品をうっていた。
私は、「粽子(ゾンズ)」という中国風「ちまき」のようなものを食べた。値段はわずか80円。注文すると、60センチほどの竹のなかに粽を差し込み形を整え、仕上げに砂糖をまぶして手渡ししてくれた。作り方が非常に面白かったが、味も想像以上のおいしさだった。砂糖の甘さと共に、もち米の甘さが口いっぱいに広がる。また、取材当日は寒かったため、あたたかく、甘いちまきが身に染みた。(なおちまきは感じで「粽」と書く)。
おわりに
北京の東の端ともいえる俸伯駅まで多くの人が乗車していたことが一番印象に残っている。日本で言えば、京都市営地下鉄烏丸線の国際会館や東西線の六地蔵にあたるこの駅まで、ほとんど満員の状態ということと同じである。北京の地下鉄は日本の地下鉄に比べて相対的に一つの路線の距離は長い。そのため終着駅となると、少し郊外の様相を呈し、寂れた場所になるのかと想像していたのだが、すくなくとも15号線に関してはそうではなかった。電車が付くたびに駅の周辺がにぎわっていた。
さて、北京地下鉄全25路線を乗り通すたびは始まったばかりである。今後もご期待あれ。