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平隊士の日々 文久四年(元治元年)弥生二十一

文久四年(元治元年)弥生二十一

朝早くから、しゃもが鳴いてうるさい
ご飯の炊ける匂いもする
そういえば、ゆうべはしゃも鍋に冷や飯だった

大阪は暮れにご飯を炊くが、朝炊くのは珍しい
次郎作に言わせると
関東では朝ご飯を炊くので、その習慣だそうだ
辰の刻には朝ごはんだと、その前に掃除をしておかないと、
井上組長に稽古に呼ばれるらしい
布団をかたずけていたら、井上組長がもう来た
最初は木剣選び、組長たちの木剣はごつい、
木剣と言うより木の幹くらいのものを、簡単に振り回す
僕は細身の、それでも指が回るかどうかの木剣を振る
まぁ、きつい、簡単に十両も貰えない
石井氏が構えると、井上組長が、木剣を木の幹で叩き落とす
隊長曰く、実戦で剣を落としたら死ぬらしい
僕は素振りだけで済んだ

ご飯、ご飯
握りつぶした豆腐と野菜の味噌汁とご飯、漬物はたくあんとしば漬け
町人と変わらぬご飯かな
食事をしていたら、井上組長から、
支度金が出るから勘定方へ行くように言われた
刀の目利きはできるのかと聞かれて、あまりと答えたら
井上組長が、目を輝かせて、良し、拙者が一緒に行こう
食べ終え、勘定方へ行ったところ、支度金が二両でた
井上組長が石井にお前も来いと言い
三人で刀を買いに行く
井上組長が、これが良いというのは支度金では足りない
命を懸ける物だから、石井みたいにけちるなと
足らない分は、手当が出たら返せばよいと店と交渉している

どうも、石井氏は一両ちょっとの刀を買ったらしい

支度金が無くなったので、屯所に戻ろうと思ったら
井上組長がそばをおごってくれた
屯所に戻り、自分の刀をまじまじ見て、本当に新選組の隊士になったと思った
昼から、また、稽古、暮れ六つまで、休み休み、木剣を振った
夕食は、茶漬けかと思ったら、今日は、ニラ雑炊だそうだ
こっちではあまり食べない野菜だ
また、井上組長に沢山盛られしまった
屯所に本があるとのことで、本を読むことにした「浮世風呂」江戸本である
江戸情緒を知った方が何かと便利かもしれない
勘定方のわきに大量に本があるが、ほとんど誰も読まないらしい
本を読んでるうちに眠くなり、寝る

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