平隊士の日々 元治元年卯月二十二
元治元年卯月二十二
組長の、
「起きたか?」の声が無いと寂しい。
布団をかたずけ、掃除して、山南総長と稽古。
今日は森が死番なので、真剣に稽古をしている。
朝食、白和え、煮浸し、ご飯、味噌汁、漬物。
本日の隊務割。
午前は南巡察、午後は東巡察、夜は非番。
七番隊と山南総長と南巡察に出る。
島原のあたりで、足抜けする女郎を取り押さえる騒ぎがあった。
総長が振り売りから瓜を買っている。
また、組長へ食べさせるのだろう。
屯所に戻ったら、当直の沖田組長が、
近所の子供たちとかごめかごめをして遊んでいる。
昼食、メバルの煮つけ、あぶりイカ、昆布煮、味噌汁、ご飯。
午後は八番隊と東巡察、
山南総長と藤堂組長は同じ流派だったのらしく、
思い出話をしていると、急に、
「そう言えば、昨日、先斗町あたりで千葉道場の坂本君に会った。
向こうは、よく覚えてはいないようだったが、
幕臣勝海舟先生の下で、
海軍操練所を開設する手伝いをしているらしい。」
藤堂組長、
「昔は、羽織の紐をかんでは振り回す、
汚いやつだったが、今は少しは大人になったんだな。」
「そんな癖もあったな、ははは。」
楽しそうに、総長と組長が話をしていると、
監察方が近づいてきて、
六条河原町通りの高瀬川沿いにある船宿、
扇岩に浪士らしき人物が集まっているとのこと。
今日の午後は南巡察している隊が無いので、
東巡察している我々の隊に対応を頼んだようだ。
山南総長が走るぞと声をかけ、みんなで走って向かう。
船宿に着いたが、裏に回る道もなく、裏に回れそうな建物もないので、
全員が表から、山南総長の御用改めの掛け声で、突入する。
入り口で、下駄をそろえている下女に、
そこをどけと、藤堂組長が怒鳴ると、
「あら、どうかしましたえ?」
「客は奥か。」
「お客さんは、かえりましたえ。」
「まぁ、良い、我らは京都守護職お預かりの新選組だ。
御用改めに、上がるぞ。」
「はぁ、そうどうすか、どうぞ、あがりやす。」
奥に上がって、行くも、誰もいない。
入口の騒ぎを聞いて、裏の高瀬川に船でも置いていたんだろう。
船で逃げたようだ。
入口に戻ってきて、
山南総長が、
「肝のふといおなごだな、名は何という。」
「あてですか、あては楢崎龍と言います。」
「ふぅん、覚えておいておく。」
山南総長が独り言のように、
「船宿は、二隊だけでは、浪士に逃げられてしまう。
もっと、人数がいたらなぁ。」
屯所に戻り、
夕食、ジャガイモとごぼうの牡丹鍋、蒲鉾、漬物、ご飯。
今日の隊務は終了。
非番なので、ゆっくり、湯屋に行き、寝る。
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