平隊士の日々 元治元年卯月二十四
元治元年卯月二十四
相変わらず、森は起きないので、起こす。
阿部と加藤は先に稽古に行った。
井上組長が来た、今日は顔色も良いし、声も通る。
稽古、今日は、加藤が死番、
加藤はまだ、死番で浪士と対面したことが無い。
ちゃんと、考えて稽古するように、組長が声を掛ける。
朝食、漬物、梅干し、たくあん、味噌汁、ご飯。
昨日のうちに、四番隊が買い物に行かなかったようだ。
本日の隊務割。
午前中は当直、午後は西巡察、夜は東巡察。
いつでも、出れる準備をして、稽古。
監査方より、南巡察に行った十番隊が、
六条の船宿で浪士と斬りあいになっている。
昨日、行ったところだと、
総長が井上組長に声をかけ、みんな行くぞと走って出る。
船宿に着いた時には、浪士六人が捕縛されて、
船で逃げた二人を監察がおいかけているとのこと。
山南総長が、
「船で逃げられたら、見つからないだろうな。
船宿の場合、二隊では無理だ、三隊は必要だな。」と言っていた。
屯所に戻る。
昼食、焼き魚、昆布巻き、出汁とろろ、大根の味噌汁、漬物、ご飯。
午後は七番隊と西巡察。
千本通りから一条通りに曲がったところで、浪士五人を発見、
井上組長が、真っ先に走り出し、
竹内伍長が左へ、粂部伍長が右へ向かったので、
我々は竹内伍長のさらに左へ走りこんだ。
谷組長は、路地に入って行ったので、後ろに回るらしい。
谷組長が浪士の後ろに見えるまで、じりじりと間合いを詰めながら、
井上組長が誰何しているが、答えない。
浪士達は刀を抜いて、じりじりと下がっていく。
死番の阿部がかなり緊張しているのがわかる。
七番隊が後ろに回ったのが見えたので、井上組長が斬り込む。
浪士二人が斬り掛かってきたが、一人は組長に肩を斬られ、
もう一人が、阿部の方に斬りかかってきた。
竹内伍長が腕に斬りつけたが、はずれ、
浪士の切っ先が、阿部の肩に触れたようだ。
加藤と森が突き出した刀に浪士の肩が斬られたので、
すぐさま、七番隊の吉田寅之助と浪士の腕をつかんで、刀を投げ捨て、捕縛。
五人全員を捕縛できたが、
六番隊では阿部が肩を少し切られ、
七番隊の鈎木伝三郎が足を斬られた。
二人を大八車に乗せ、木屋町の南部先生の所へ連れていく。
手当をしてもらい、屯所に戻る。
夕食、しゃもと溶き卵が入った雑炊、梅干し、漬物。
阿部が休むことになったので、僕が繰り上げで死番になった。
四番手がいないので、
逃げられないように注意しろと土方副長に言われた。
山南総長と一番隊とで東巡察に向かう。
特に何もなく、屯所に戻る。
井上組長に明日の死番はと聞いたら、明日も松崎がやれと、
考えても仕方がないので、酒を飲んで、寝る。