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平隊士の日々 元治元年卯月二十八

元治元年卯月二十八   


少し早く目が覚めたので、布団をかたずけ、簡単に掃除をして、稽古に行く。
一番隊の隊士の濱口鬼一が、廊下に座ってぼーとしているので声を掛ける。
「おはよう。」
「あっ、おはよう。」
「どうした?」
「うん、一番隊に配属されて、浪士の捕縛も多くて、手当も多いけど、
皆と違って、切紙なんだよね。」
「それを言ったら僕は何もないよ。
六番隊の隊士のほとんどが剣術を習っていなし。」
「でも、一番隊のみんなは目録以上で、怪我もないし、
一番隊にいると何時かは、大怪我とか、死んだりするんじゃないかと、心配で。」
「それなら、沖田組長に相談したらどうだい。」
「組長には、言ったンだ、土方副長に相談するって、返事は来ていないんだ。」
「そうか、もう少し待っても、返事が来ないようなら、
山南総長に相談したらどうだ。」
「もう、二三日待って、総長に相談してみるよ。」
一番隊は精鋭部隊なので、けが人は多いが、
大きなけがをした隊士はいないから、
大丈夫と言おうとしたら、
井上組長が来たので、挨拶して、稽古を始める。

朝食、たくあん、梅干し、シジミ汁、冷ややっこ、ご飯。

本日の隊務割。
午前が南巡察、午後が当直、夜が西巡察。

五番隊と南巡察。
御前通りから木津屋橋通りに曲がったところで、浪士らしき集団を発見。
六番隊はすぐさま御前通りに戻り、走って北側の路地から、後ろに回る。
後ろにまわったら、武田組長が、誰何したところ、
浪士たちがこちらに向かって、走ってきた。
井上組長が、刀を抜き構えて、おとなしくしろと叫ぶ。
浪士たちは、慌てて、細い路地や、町屋に逃げ込もうとしている。
組長が、竹内伍長に、「逃がすな!」と叫ぶ。
竹内伍長と路地に入った浪士を追う。
何とか、追いついて、捕縛。
戻ると、四人の浪士が捕縛されており、三人の浪士に逃げられたとのこと。
番所に連絡して、屯所に戻る。

昼食、アサリの佃煮、たたみイワシ、昆布煮、味噌汁、ご飯。

当直と言うことで、いつでも出れる準備をして、稽古。
土方副長が来て、井上組長と何やら相談している。
腕あてを作るらしい、会話が漏れ聞こえる。
井上組長、
「皮だけじゃ、弱いよ。」
「鎖じゃ重いし、そうだ、竹じゃどうだい? 縦に細い竹を巻きつけるのは?」
「上手く腕が動かせるかどうかだな。」
「そうか、肘のところは空ければ、何とかなりそうだな。」
「頭はどうする?」
「誠の印が入った鉢金を作るつもりさ。」
「そうか、それは勇ましいな。」
「腕回りは羽織に隠れるから、浪士も気が付かないだろうし、
肩も同じような皮の道着を作り、竹で防御すれば、隊士達も安心だろう?」
聞き耳を立てていたら、組長に、稽古に集中しろと叱られた。

夕食、しゃも鍋、ご飯、大根の餡かけ、たくあん。

五番隊と西巡察。
珍しく、午前と同じ隊と巡察になった。
監察からの情報で、北野天満宮の方まで行ったが、
浪士には会わず、屯所に戻る。

西岡が眠そうなので、藤沢と少し飲んで
土方副長が言っていた腕あてと肩あての話をして、
そんな物が出来たら、僕らはあまり怖くなく、
隊務に励めると言い、寝る。


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