平隊士の日々 元治元年皐月一
元治元年皐月一
起きて、掃除していたら、組長が迎えに来た。
山南総長も稽古に参加し、打ち込み稽古を順番でする。
森の腕の傷も少し良くなり、起きて歩けるようになったが、
稽古にも隊務にも、まだ復帰できない。
朝食、味噌汁、お浸し、漬物、ご飯。
本日の隊務割。
午前は南巡察、午後は西巡察、夜は東巡察。
土方副長の隊務割の発表の後、
珍しく、近藤局長の訓示があった。
少し、怒ったような様子で、
「将軍様が攘夷をしないで、江戸に戻るようなら、新選組の解散も辞さない。
我々は京都の治安を守ることにより、攘夷を行っているのであり、
烏合の衆ではない、諸君も尊王攘夷の志士であることに、
誇りを持ってもらいたい、以上。」
近藤局長が下がってから、土方副長が、
「いきなりで驚いたかもしれないが、
新選組は京都を守ることにより、尊王攘夷を行っている。
諸君らも、京都を守る志は同じであろう。
新選組は松平様お預かりの組織であり、簡単には解散はできない。
我々の将来は、君たちの働きにかかっていると言っても過言ではない。
隊務を立派に実行してもらいたい、では、解散。」
良くわかない者も多く、各組長に聞きに行くものが多い。
井上組長は、
「まぁ、隊務をちゃんとこなして、浪士を捕縛して、
京都が安心な町になれば、帝様も安心じゃろ。
そうすれば、総軍様も喜ぶって言うことだな。」
加藤が、
「将軍様は江戸に戻るのですか?」
「そのうちに戻るだろうな。」
「じゃぁ、新選組も解散ですか?」
「いや、松平様が解散と言わない限り、解散はないよ。
近藤先生は最近、幕府の要人と会って小物扱いをされたらしく、
それで、怒っているだけさ。
すぐに、元の近藤先生に戻るよ、心配ない。」
八番隊と南巡察。
藤堂組長と井上組長が今朝の近藤局長の訓示について話している。
「近藤先生も幕府の要人と会って、
世論を語れる立場になったと思っていたら、
新選組を小物扱いされて、相当、怒ったようだ。」
「実際、新選組が居なければ、京都の治安は相当悪いのに、
分からないのかね。」
「そうさな、我々も命を懸けて働いているのに、新選組はいらないらしい。」
「幕府の要人も江戸から来たばかりで、
京都の実況をよくわかっていないのだろう。」
そんな事を話しているを聞いていたら、
東本願寺付近で、浪士らしき集団を見つけて、追いかけたが、逃げられた。
近所を捜索し、監察方に任せ屯所に戻る。
昼食、鰯のみりん干し、昆布巻き、味噌汁、漬物、お茶漬け。
十番隊と西巡察。
堀川通りで、武士の集団を見かけ誰何したら、薩摩藩士だった。
その後は特に何もなく、屯所に戻る。
夕食、しゃもと溶き卵が入った雑炊、梅干し、沢庵。
一番隊と東巡察に出ようとしたら、
山南総長が、僕も一緒に行くと出かける。
河原町通りで大柄な武士がおなごの手を引いて歩いているので、
人だかりが出来ている。
何事かと、山南総長が声を掛けると、
「おお、山南君じゃないか。」
「あれ、坂本さん、神戸に行くのでは?」
「ああ、横井らは船で神戸に向かった。
わしゃ、このおなごとデートをしている最中ちゃ。」
「あれ、そこ元は、岩扇のお龍ではないか。」
「はぁ、これは新選組の・・・」
「山南君じゃ。」
「いあややわ、はずかしい。」
「人が集まっていたので、何事かと思い声を掛けたが・・・」
「この坂本様が、亜米利加国ではおなごの手を引いて、
デートをするとのことで、恥ずかし、デートしてます。」
「ははは、坂本さんらしい、あまり目立つことをすると、
浪士と間違えられて斬られてしまいますよ。」
「君に僕が斬れるかね?」
沖田組長が口をはさむ、
「新選組なら斬れます。」
「そうか、斬られちゃかなわんき、注意するぜよ。」
そう言って、分かれ、
山南総長が、
「坂本さんにも困ったもんだ。
あの人集まり方は、てっきり足抜けか何かと思うよな。」
沖田組長、
「江戸にいた時、土方さんと喧嘩しそうになったのも、
あの人がおなごの手を無理やり引いて歩いていたので、
人さらいと間違えたのがきっかけですよ。」
「まぁ、当時から、黒船に乗ろうとしたり、危ない漢ではあったな。」
そんな話を聞きながら、巡察を続け、屯所に戻る。
西岡と
「坂本さんは千葉道場で山南総長と同門なので
知り合いだった。」と言う話などをして、
少し飲んで寝る。
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