平隊士の日々 文久四年(元治元年)弥生二十三
文久四年(元治元年)弥生二十三
ゆうべは、初めての当直、遅くまで起きていたので、
井上組長に起こされるまで寝ていた。
慌てて、起き、朝の稽古。
素振りをしていたら、組長より、
素振りも大事だが、君の力量だと自分の足を切るから、
突きの練習をした方が良いとのこと。
そう言えば、一番隊の人達も突きの鍛錬が多い。
井上組長に聞いたところ、
「路上での捕縛より、室内での捕縛が多く、
より多くの切りあいがあるのが室内の捕縛なので、
切り結ぶより、突いて怪我をさせてからの捕縛になる。」とのこと
木剣での突きの鍛錬は今まで以上に筋肉を使う。
朝食後、本日の勤務割を告げられた。
本日は、昼四つまで東巡察、昼八つより集団稽古とのこと、
見回りのことを巡察と言うことを知った。
井上組長より、
「勘定方に行って、羽織をもらってきて、
ちゃんと、刀を差すんだぞ」と言われた。
組長を先頭に、伍長二人が続き、旗持ち、隊士と、
僕は取り合えず次郎作の後ろについて行った。
次郎作に東巡察について聞いたら、
伏見の東側を主に巡察するらしい。
長州藩邸もある場所なので、気が抜けないとのこと。
天気も良く、散歩みたいで、楽しい、
特に何もなく、屯所に戻る。
昼食、焼き魚が出た。
昼八つ、稽古を開始、
井上組長から、捕縛について説明を受けた。
「新選組は剣技の差が大きいため、一対一の捕縛はしない。
必ず、相手の倍、または三倍の人数で取り囲み、
逃がさないことが一番。
集団で捕縛と言っても、バラバラでは逃げられてしまうので、
大体、四から五人で組を作り、
今日から、松崎は石井、荒木、石川、金子の組に入って、
明日の巡視は死番だ。」とのこと、
死番の意味が分からなくて組長に聞いたら、
明日の巡視は松崎が一番前で一番最初に捕縛に飛び込むとのこと。
明後日は金子が一番で、
松崎は二番の様に順番を決めて隊列を組むらしい。
今日、一番後ろにいたので、明日は一番前になると。
失敗した、一番後ろはまずかったか。
夜の巡察が危なくて、昼間はほとんど何もないことが多いと、
次郎作が言っていたので大丈夫だろう。
集団での稽古は実践を想定した竹刀稽古で、組長を不逞浪士に見たてて、
各組で取り囲み、死番から飛び込むことを繰り返した。
夕食
また、しゃも鍋、
新選組はしゃもが好きなのだろうか。
今日は疲れたので早めに寝る。
夜八つ頃、いきなり誰かが飛び込んできた。
びっくりした。
とりあえず、刀をつかんで立ち上がったら、三番隊の人達だった。
何かと思って聞いたところ、これも鍛錬だそうだ。
起きずに寝ていたり、逃げ出したら、隊士を首になるところだったらしい。
安心して、また寝る。
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