平隊士の日々 文久四年(元治元年)弥生十から弥生二十
文久四年(元治元年)弥生十
三番隊斎藤さまの話では、壬生の八木邸と聞いていたが、
八木邸に伺ったら、向いの前川邸へ引っ越したとのこと
前川邸の門前に着いたのは昼八つとき、
入り口は空いているが、稽古の声が聞こえるばかり
声をかけても返事がないし、どうしようかとウロウロしていたら
以前にあったことがある人が散歩に出てきて、多分、一番隊組長かな
「いいよ、いいよ」、と誘われて入ると、
紹介されたのは、副長の土方さま
入隊希望を告げると、
「将軍さまが好きか?」、と聞かれ、「好きです」と答えたら
「剣術の流派は?」、と聞かれたが、道場には通っていなかったので
「門前の小僧程度」と答えたらの
大きな声で笑って、
「それも良い、まぁ、剣術道場には通っていないてことだな。
剣術がダメでも、喧嘩でも腕っぷしに自信があればいいや。
監察方や勘定方は今は募集していない、隊士で良かったら
そこの源さんに手筋を見てもらえ」と言って道場に連れていかれた
六番隊組長の井上さま曰く、
「歳さんの一番得意なのは喧嘩だけどな」、って言っていた
とりあえず、手筋を見てもらい
「まぁ、こんなもんだろう、入隊してから拙者が面倒を見るよ」と
「副長に伝えるから、いつから来れる?」
「お店に戻って正式にお暇をもらいますので、十日ほどかかると思います」
「ふーん、分かった。じゃ、六番隊の井上を訪ねて来いよ。
支度金は次に来た時に出すから、お店にはきちんと払ってくるんだぞ。」
思っていた以上に大きな組で、驚いた
ここで働けば十両もらえる
木戸が閉まるまでに大阪に戻らねば
文久四年(元治元年)弥生二十
お店にお暇をもらえたので、今日から新選組に入る
屯所に着いて六番隊を訪ねたら
稽古中だった井上隊長に、六番隊に所属する
地元京都の石井伊之助、荒木慎太郎、石川伊太郎、同じ大阪の金子次郎作を紹介され
一緒の組で行動するとのこと
荷物をほどいたらすぐに稽古だと言われた
暮れ六つまで稽古、そのあと食事、みんな半裸でふんどしで飯を食う者もいた
しゃも鍋が、食べれない、井上隊長が食べるのも修行と言いつつ、沢山、盛られた
食事をしながらいろいろ聞くと一人か二人が武士で残りは、郷士が多い
紹介された石井氏らはわし、いや、僕と同じで剣術が強くないので同じ組らしい
食事のあと、三々五々、出かける者も居たが、わし、いや、僕は懐が寂しいので寝る
「僕、今日から、新選組 平隊士 松崎静馬」