平隊士の日々 元治元年卯月二十九
元治元年卯月二十九
昨夜は、飲みすぎたようだ、西岡に起こされる。
布団をかたずけ、掃除して、稽古に向かう。
井上組長が
「おはよう。」と入ってくる。
今日は、僕が死番なので、打ち込み稽古をたくさんする。
朝食、漬物、梅干し、大根の味噌汁、ご飯。
本日の隊務割。
午前が当直、午後が東巡察、夜は西巡察。
昨日捕縛した浪士たちは、十津川藩脱藩浪士で、
御前通りの梅林寺で長州藩の浪士と合流する予定だったと分かり、
一番隊と二番隊と三番隊が梅林寺付近の旅籠を、
片っ端から御用改めをする。
その為、稽古はせず、準備をして、待機。
昼四つ頃、浪士四人を捕縛して、屯所に戻ってきた。
昨日、話をした濱口が腕に怪我をしている。
二番隊の三品仲次、三番隊の中村金吾も怪我をしている。
かなり激しい斬りあいがあったようだ。
昼食、子魚の煮物、きんぴら、油揚げのお浸し、味噌汁、漬物、ご飯。
濱口が、お膳をもって隣に座り、
「今晩、山南総長に話したいがどうすれば良いか。」と聞くので、
「そうだな、夜はきっと、監察のところか、稽古場にいる事が多いので
そのあたりで、声を掛けてみたらどうだ。」
「そうか、そうする。」と言い、痛そうに、ご飯を食べていた。
四番隊と東巡察。
松原組長と鈴木組長が斎藤組長から聞いた話をしてる。
「梅小路本町の梅屋と言う旅籠に御用改めと入ったところ、
出立する浪士とまともにぶつかり、いきなり切りあいになり、
旅籠の奥にに逃げ込む浪士を追うもの、
バラバラに表に逃げる浪士を追うもの、
こちらも、バラバラになり、一対一や、二対一の戦いになり、
相当大変だったらしい。」
「やはり、夜のうちに捕縛に向かわないと、
こちらの有利には捕縛できないな。」
「夜だと、逃げられる可能性もあるし、難しいか。」
鴨川をわたり、聖護院蓮華蔵町のあたりで、浪士らしき集団を見かける。
四番隊が路地を通り、後ろに回る。
井上組長が誰何すると、薩摩藩士とのこと、礼をして通り過ぎる。
仁王門通りの角で、揉めている様子があり、
井上組長が見に行ったら、巾着切りが捕まっていた。
番所に任せて、巡察を続け屯所に戻る。
夕食、水菜と万願寺唐辛子の雑炊、漬物、小魚の煮物。
少し辛いが美味しい雑炊だ。
八番隊と西巡察。
千本通りの亀屋町の町屋から盗賊らしき集団が出てきた。
藤堂組長が飛び込み、盗賊二人に斬りつける。
井上組長が
「逃がすな!」と言い六番隊で残りの六人を取り囲み、捕縛する。
藤堂組長が町屋の中に入って行き、隊士が付いていく。
藤堂組長が、井上組長に
「だめだ、全員斬られている。」
「そうか、残念だな。竹内伍長、番小屋に連絡しろ。」
竹内伍長が走っていく、盗賊を縛って、番小屋に渡し、屯所に戻る。
濱口が気になったが、見当たらないので、寝る。