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思考のジャンプ

東京に住み、電車に揺られ、いろいろなものがあるけれど、いろいろなものが欠けている生活を続けていると、いつのまにか働き方の選択肢が狭められている感覚に陥るときがある。

オフィスワークをしている人はまたオフィスワークに帰ってゆく。せいぜい業種を変えたり、大企業で働いていた人がベンチャーにうつったり、そんなケースが多いように思う。誠に勝手な主観ではあるが…

学生時代にラオスを旅したことがある。そのとき見た田園風景に「ああ、日本で生きづらくてもここで畑を耕す生き方もあるじゃないか。できそうじゃないか。」と根拠もなく思った。なんだか勇気が湧くような感覚を覚えている。そのときくらいの「思考のジャンプ」を東京の世話しない日々のなかで思い出すことはなかなかにむずかしい。

そんなときに、こんな本を手にとった。『東大卒、農家の右腕になる。』(佐川友彦 著)という1冊だ。著者の佐川さんは東京大学を卒業後に大手の外資企業に入社、その後に創業期のメルカリのインターンなどにも参加する、いわゆるエリートコースを邁進した方だ。遠い人のように思えるけど、まだこのときのほうが自分と重ね易かった。というのは、その後佐川さんは梨園に就職して農家のマネジャーとして働き始めるからだ。「農業」というのは、東京に暮らしているとどうしてもリアルに想像できないものだ。さらに農家のマネジャーとなると、そもそも聞いたこともない仕事だったりする(笑)。

だからこそ、というべきか、
なぜだか、というべきか、
この本は何かをぼくに訴えかけてくるような力があった。

詳細は本書に譲るが、前半は佐川さんの半生が(これまで読んだビジネス書の中でも群を抜いて)赤裸々に描かれる。お金の話も、社長とのやりとりも、あくまでリアリティを持って。
ここまで書かれているからこそ、本書はいま「農業」とは全く関係のない仕事をしている人にも届くと思う。いや、届いてほしい。

「こういう 働き方 があること」「こういう 生き方 があること」「こういう かっこいい があること」「こういう人が求められる場所が、自分が今いる場所ではないどこかにあること」

そういう「思考のジャンプ」をさせてくれた1冊。それは、情報として咀嚼された後に、お腹の底のほうで勇気に変わった。

https://www.amazon.co.jp/東大卒、農家の右腕になる%E3%80%82-小さな経営改善ノウハウ100-佐川-友彦/dp/4478108110

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