短々編 - パトロール


とても怖い思いをしました。



学校帰り、いつも私は、

街灯のまばらな道を通らなければいけません。

決して長い距離ではありませんが、

11月の夕方ともなればかなり暗いです。

親からも気を付けるように言われていたし、

自分自身でも気配を気にしながら歩くようにしていました。

しかし、まさか不審者なんて現れることはないだろうと、

私の中に少しの油断がありました。


その隙を縫うように、

その日、男は背後から私を襲いました。


私は何が起きたのか分からず、

しばらく動くことができませんでした。

気がつくと、

男は私の身体を弄りながら、

ハンカチを口元に当てようとしていました。

変な匂いがしたので、

今思うと、何かの薬品が付いていたのかもしれません。

本能的に身の危険を感じた私は、

唯一自由な自分の足で、男の脛を蹴りました。

とにかく必死だったので、

男の力が一瞬緩んだ隙に、全力で逃げました。

家とは逆の明るい道へ。

男は追ってきましたが、

私のキックが効いたのか、スピードはさほどありませんでした。


私は息を切らしながら、前を見ると、

警官服を着た人がいるのが分かりました。

その人も全力で走ってくる私に気付いたのか、

心配そうな顔で

「大丈夫、どうしたの?」

と聞いてくれました。

酸欠気味なのと、

先程の恐怖のせいでうまく喋れませんでした。

とにかく「逃げる!!」とだけ伝えました。

警察の人は事情を察したのか、

「詳しい話も聞きたいから交番へ行こう!」と言い、

近くに停めてあった車のドアを開け、

後ろの席に私を乗せました。

頭が混乱する中、

パトカーに乗れるのかなと少し期待をしましたが、

普通の車で少しがっかりしました。

さっきの男が私たちに追いつきそうなところで、

警察の人は一気にアクセルを踏みました。

男の表情は、もう遠くなっていて、よく見えませんでした。


「車の中、散らかってるけどごめんね」

と警察の人が言いました。

よく見ると、

手錠とか棍棒とか、

あれは拳銃のケースかな?

色々ありました。

警察の車って感じがしました。


「怪我とかしてない?」

彼は優しく聞いてくれました。

「最近あの辺りで不審者の通報が多くてね、丁度パトロール中だったんだよ」

「いやあ、君を救えてよかった」


まだ事態がよく分かっていないけれど、

とりあえずこれで安心出来る。

私は車に揺られながら、

交番に着くのを待ちました。



#短々編

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