100日後に散る百合 - 3日目
毎日書くことがあると思ったら大間違いだ。
何の目的もなく学校に通っている女子高生にとって、
その日々はとりとめもない蓄積にすぎない。
特に昨日は学校がなかった。祝日だったから。
かといって、家にいても何かあったわけではない。
強いて言うなら、
先日、学校で一目惚れをした女、
立川咲季のことを考えていたくらい。
あの日の私は、少しおかしかった。
彼女と一緒の委員会になったことが嬉しかったのか、
帰路のコンビニでハーゲンダッツを買っていた。
家に帰っても、私はぼーっとしていて、
気づいた頃には、アイスはだいぶ溶けてしまっていた。
安定のストロベリーフレーバーを口に運びながら、
立川は、何味が好きなのだろうとか考えた。
…………キャラメル?
あとは、バニラしか認めないとか言いそう。
抹茶もあるかな。
チョコミントは無さそう。
今日は学校があった。
立川もいた。
顔が良かった。
今日のメインは身体測定で、
つまりはどういうことかというと、
立川の体操服姿が拝めるということだ。
いや別に、体操服に変な趣味があるわけじゃないけど、
いいじゃんか、体操服って。
立川は背が高め。
ハーフパンツから伸びるすらりとした脚。
んー、健康的でいい。
上はジャージだったからなんとも言えない。
ただ、ただですね、
髪を、髪をですね、
立川のサラサラな綺麗な長い黒髪をですね、
ポニテにしてたんですよ。
え、ちょっと、ちょっと待ってよ。
待ってくれよ。
いいな!!!!!!
ポニテいいな!!立川!!!!
気付けば、ずっと立川を目で追っていた気がする。
歩くたびに揺れる髪につられ、
「金子さん、なんで揺れてんの」
と、後ろのクラスメートに言われた。
更衣室でも立川を見ていた。
そういえば、朝は彼女の姿がなかった。
身体測定にも後から来たから、学校自体遅刻してきたんだろう。
朝弱いのかな。可愛いな。
立川の肌は白く、
体躯は細く、
なんか、陶器みたいな美しさがある。
いつか、
いつか、誰かが、
穢してしまうのかな。
それは、
それは、なんか、
いやだな。
今日も早く学校は終わった。
放課後、立川はいつの間にか教室からいなくなっていた。
帰るの早いな。
私は、家に向かう道中、
自分の髪をいじっていた。
高校に入ってから少し切ってボブにした。
…………また、伸ばそうかな。