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【イベントレポート】地球市民セミナー:福祉に宿る創造性をたずねて。マガジンハウス〈こここ〉の3年間

「地球市民セミナー」は、清泉女子大学地球市民学科と品川区との共催により、地球社会の諸課題に関連する先端的な研究や先駆的な実践を行っている方々にご登壇いただく講演イベントです。

2024年10月23日の地球市民セミナーの講師は,中田一会(なかた・かずえ)様でした.中田さんは,武蔵野美術大学芸術文化学科を卒業後,IT関連出版社(投資家向け広報),(株)ロフトワーク(PR兼コミュニケーションディレクター),東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京(プログラムオフィサー兼コミュニケーション・デザイン担当)を経て,2018年に独立.2021年より(株)マガジンハウスにて〈こここ〉を創刊し,編集長をつとめています.

「個と個で一緒にできること」を合言葉に掲げ、「福祉をたずねるクリエイティブマガジン」として,〈こここ〉は,年間200本超の記事を配信しています.

講演では,どのような思いで〈こここ〉をつくっているのか?どのようにメディアを立ち上げ,取材しているのか.福祉に宿る創造性とはどのようなものか? 創刊編集長が3年間の活動を記事と共に振り返っていただきました。

中田さんは,福祉という言葉について,「福祉とは幸福を指す言葉.福祉に関係のない人はいない.この世界に生きる“わたしたちみんなに関わることが福祉だと〈こここ〉は考えている」と話していました.

また, 1つの記事を作るのに3〜4か月かけており,毎週水曜日には3時間かけてミーティングをするなど,手間をかけて記事をつくっていくプロセスも紹介してくださいました.

福祉ということば,そして,編集ということばのイメージががらりと変わるような刺激的なお話でした.

学生からは次のようなコメントが寄せられました.

特に印象に残ったのは、「まとまらない社会を歩くために」という考え方だ。中田さんが「福祉の現場では一人ひとりが違ったストーリーを抱えている。だから、わかりやすくまとめてしまうのではなく、そのままの複雑さを共に考えることが大切」と語っていた。普段、私たちは何かと「わかりやすく」したがるけど、実は「まとまらない」ものにこそ大事な意味があるのかもしれないと思った。人と人が違いを受け入れながら一緒に過ごしていくことで、福祉ならではの価値が生まれるのだと感じた。

中田さんが「〈こここ〉を通じて福祉に関わりたくなる扉、開けたくなる扉をたくさんつくりたい」と話していたのが、私の心には響いた。普段、福祉にはあまり関心がない人でも、ちょっとしたきっかけで「のぞいてみたい」と思える扉があれば、福祉がもっと身近に感じられるだろうと思う。

中田さんは、福祉分野に潜む創造性を発信し、多くの人にその面白さを知ってもらうことを目指している。「ごちゃまぜ」という表現が象徴的で、既存の枠組みを超えた多様性や包摂が意識されていることを強く感じた。

「福祉という言葉をつけること自体が線を引くことになってしまうことにつながるのではないか」という質問に対して、「福祉とは幸福であり、制度は後からついてくる。イメージが強いものだからこそオブラートに包まないほうが良いかと考えた。あえて固めの言葉を使って、ギャップでひきつけるという戦略がある」という中田さんの答えが印象に残りました。

学生のコメントシートより