離婚までの道程 五
どこまでも追いかけてくるあいつ
小中学校・高校・専門学校と、それぞれに仲のいい友人たちが居て、たまに会って近況報告などしつつご飯を食べるというのは、別に特別なことでは無いよね。それを元旦那は『異常だ』『無駄だ』と言う。そんなに会って話すことある?何のために会う必要がある?と、毎度グダグダグダグダ言っておりました。
そう言っているご本人様は、毎週日曜日に中学校時代の同級生とフットサルを楽しんだ後友人宅に集まってゲームをする。そのことははきれ〜〜〜に棚の上に置いてグダグダグダグダ…。
週末は元旦那に占領されるので、友達に会う時はだいたい平日の夜だった。しかし、専門学校時代の友人に会うとなると集合が福岡市内になるので、どうしても週末になってしまう。
そんな専門時代の友人から、一人暮らしをやめて地元の壱岐対馬に戻るという友人のお別れ会&7月産まれさんの誕生日会に誘われた。私は7月生まれ。もう滅多なことでは島を出ないだろうから是非来てほしいと言われ、私も行く気満々。「もう一生会うことができないかも」「女の子しか来ないから(これは嘘)」等、この日を逃したら一生恨むというテンションで元旦那を説き伏せて、なんとか福岡行きを勝ち取った。単身福岡行きは、実に1年半ぶり。つまり元旦那と付き合いだしてから初めてのこと。
毎日毎日「そんな縁が切れる友達に会う必要ある?」とかなんとかグダグダ言っていたけどひたすら無視。とにかく無視。金曜の夕方に出発・その日の最終のバスで帰ってこいという条件を出されたけど、なんとかやりすごして弟の家に泊まって次の日に帰ろうと心の中で計画…。
さて当日の金曜日。当時勤めていた会社は早退・欠勤を月初めに申告しておけば問題なしだったので、その日はお昼で早退にした。早目に出て高速バスにさえ乗れば、日中仕事の元旦那が引き止めに来られない。はず。
退勤後、猛スピードでチャリを漕いで帰宅し、準備していた小荷物を抱えて高速バスに飛び乗った。バスの椅子に座り、イヤホンをつけ「今からいってきます」と元旦那にメールを送ってホッと一息。約1年半ぶりの福岡。忘れていたこの一人で動ける開放感!この自由!!ウェイ!!!!
友人・のりちゃんと天神で合流して、飲み会の時間までまだ余裕たっぷりだったので、すたーばっくすらて等を飲みながらおしゃべりしていると、5時を過ぎた頃元旦那から「出るの早くない?聞いてないんですけど?もう福岡着いたと!?」と早速電話が来た。奴と200km程距離があって余裕があった私は何を言われても怖くない。飲み会が7時からなのに4時に到着して何すると?男がおるんだろ?早めに行って男と会っとるんだろ?などと一生懸命大声で異議申し立てをしているけど、何も怖くない。「のりちゃんと時間までコーヒーのんでる。また終わったら連絡するね〜」と笑顔で電話を終わらせた。
「シカちゃんの彼氏、だいぶヤベェな…」と、のりちゃんが目を点にしてつぶやいた。「そうだろう。私も何で付き合ってるのか本当にわかんない」と胸を張って答えると「あんまり人の彼氏の事どうのこうの言うの好きじゃないんやけど、あえて言わせてもらう。その性格の人と付き合うのは、めっちゃくちゃ好きじゃないなら無理やろう。シカちゃんが人生で最も嫌っている元カレよりもやばいでしょ。なのにそんな優しい返事とかしてさ…一体どうしたん?w どうしてもその人を好きていうならこれ以上は言わんけど」と言われた。
ズバーっと言われてSIMPLEに衝撃を受けてしまった。
「好きじゃない。でも好きな雰囲気出しとかないとすごく不機嫌になるし、今日みたいに県外に飲みに行くとか絶対許されんかったもん。それに私みたいなクズと付き合ってくれる人が他にいると思えない」と混乱した頭で精一杯答えた。
「だから何で好きじゃないのに付き合っとんのかーって。まず飲み会も遊びに行くのも、自由にしようよ!浮気してるわけでもないのに。それをさせてもらえんで平気なん?ちがうやろ、その顔…ブスになってしまっとうやん。こっちにおった頃の美しいシカちゃんはどこいったん」と、めいいっぱい心配した顔で言うのりちゃん。
奴と付き合い始めてから約1年半、連絡が途絶えた私をのりちゃんを始め福岡にいる友人達はめちゃくちゃ心配してくれていた。そして悪夢のGWで急に「泊めてほしい」と連絡が来たことでみんな心配が最高潮になった。今日来てくれたことが奇跡だと思うからこの日を無駄にしたくない、別れた後何かされるのが怖いならまた福岡に戻っておいでよとみんなで説得したかったらしい。
一人壱岐対馬に引き上げるという話は嘘。これは離婚した後聞いた。
でもその日元旦那の話になると生返事ではぐらかされ、それ以上聞かないでくれという顔になって黙る。これは時間かけていくしかないとみんな裏で話し合っていた、と。自分で思ってるより、おかしさがにじみ出ていたんだなあと思った。申し訳ないやらありがたいやらで泣けてしまう。
ずっと友達
7時に飲み会が始まり、続々と現れる懐かしい友人たち。場の雰囲気もあの頃のまま。あれ?私ってこんなだったよね?好きな時に飲みに行って、男の子女の子関係なく会いたい人に会いに行って、椅子から落ちるくらいゲラゲラ笑って、帰りの時間も気にすること無く気が済むまでみんなと話して、これが普通だったよね?と、思い出していた頃…。
何気に携帯を開くと「不在着信39件」の文字。キタ…。
居酒屋の外に出て電話に出ると
「お前いいかげんにしろよ!!電話でろよ!何しよったけん電話に気づかんとやコルァ!!!」
と、耳キィーンなる程の怒鳴り声。「普通にみんなに会うのが久しぶりで話に夢中だったけんだけど」と答えると「ウソつけ!今筑紫野だけん!!もう着くけん出てこいよ!!」
WHAT? 今、筑紫野だけん? 出てこいよ??
「まだ飲み会始まって1時間しか経ってないんですけど…」と伝えたら「丁度ええた。4時からそっちおったんだけん充分楽しんだろ?あと30分くらいで着くけん金払って外で待っとけ」だと。
店に戻って「束縛が激しい例の彼氏が迎えに来てるようなので、残念ですが帰ろうと思います」とみんなに言うと、マジちょっとまって!!今熊本から来たと!?やっと来たのにもう帰ると!?待って!!誕生日プレゼントだけは渡したい!!とドタバタでプレゼントを受け取った。お金を払おうとしても「良いから良いから!シカちゃんが交通費一番高いから!だから絶対また来て!」と誰も受け取ってくれなかった。
みんなで見送りに出てくれて、店の前で「絶対また会おうね」「今度はみんなで熊本に遊びに行くけん、追い返さんでね笑」とか握手しながら色々早口で話して、別れを惜しみつつ「じゃあまたね〜」とバイバイをしてみんなに背を向けて走りだしたその時
「俺たち、ずうううううううううううっと友達やけんなーーーー!!!!」
と後ろで野太い声がして、振り向くとみんなが手をブンブン降っていた。天神のど真ん中で大声出す集団を周りの人は若干引き気味の目で見ていたけど、私はドッバーーーーーーと涙が出てきてしまった。
ポケットの中では奴からの着信でブーブーと携帯がなっていた。足を止めて
「ありがどうううう!!ずっと友達いいいいいいいいい!!!!!」
と叫びながらブンブン手を振ったあと、また走り出した。
専門学校時代のいろんな思い出が頭の中を駆け巡って、走りながらしばらく涙が止まらなかった。大荷物抱えて泣きながら走る女、ちょっと怖いよね。
奴が待っている大通りに曲がった途端大声出したことが恥ずかしくなったけど、涙をふいてスンとした顔に戻し、車に乗り込んだ。
ギャンギャン怒鳴り散らしてたけど、何も頭に入ってこなかった。最後に「高速代とガソリン代返せよ!」と言われたところで「はぁ?私が迎えに来てって頼んだっけ?一切頼んでませんけど」「迎えに来られて今車に乗ってるけど、全然納得してないけん。今私、車に乗ってさしあげてるだけだけん。私の楽しい時間を奪ってくれてどうもありがとう」と睨みながら言ったら黙った。
無言のまま太宰府インターに入る頃、立て続けにメールが13件入ってきた。さっきのメンバーからだった。寝たフリしてたので、その場で開けることはできず家に着いてからメールを開くと、全員同じ文章で
「ずっと友達やけんな!! 返信不要」
また泣いてしまった。
あの日に帰れるなら、今度は絶対車に乗らない。
携帯の電源切って朝までみんなとおしゃべりして、ウエストでうどん食べて吐きそうになりながら帰るよ。
本当にありがとう。