アイドル文化の発展の要因:SNSと承認欲求について
アイドル文化のここ数年の発展具合がすごい。
もちろん日本においては松田聖子と中森明菜の二大巨頭や、おニャン子クラブやモーニング娘などアイドル文化というものはずっとあったが、AKB48が出てきたことによって
アイドル文化=オタク文化
という構図が出来上がったと感じている。だからこそわたしは、AKB48以前と以後においてアイドル文化は全く別のものだと考える。そしてそこから、AKB48以後におけるアイドル文化が何故ここまで一般にも浸透したのかということについて考えたい。
そもそもなぜ一般に浸透したと考えるのか。それは
①アイドル戦国時代と言われるほどのアイドルの数の増加
②それに伴う性別の垣根を越えたオタクの増加③「オタクである」ということが恥ずかしい、隠すべきものではなくフラットに語ることの出来るものになった
この3つの観点からそう感じたからだ。そしてこれらの観点の関係性としては、①②が起こったことにより③の現象に至った、と考えて良いだろう。そこで、なぜ①②が起こったのかを考えていくことにより、アイドル文化の発展の要因を掴むことが出来るだろう。
SNSの普及とそれに伴う承認欲求の増大
アイドルの話じゃねえじゃん、と思った方へ。申し訳ありません。しかし一旦この話をしなければ次に進めないのでこの話をさせてください。
2008年に日本語版でのTwitterがリリースされ、2010年にリツイートが可能になった。ツイートのいいね数やリツイート数など、一般の人でも自らが生み出したもの(写真や言葉、動画など)の評価を数量的に可視化することが出来るようになった。たとえばブログの閲覧数などもその一端ではあったかもしれないが、圧倒的なはじめやすさと老若男女を問わないユーザーの幅広さの中がTwitterにはあり、そこで評価されるということは「みんな」に評価されているのと同等と感じるだろう。
またInstagram、Facebook、その他諸々のSNSの台頭により、人からの評価が受けやすくなり、また他人がどう評価されているのかが見えやすくなった。
そこで承認欲求の増大が起こる。そもそも有名人や創作に携わる人以外を一般の人として、その一般の人々が、会社や地域などの自分が所属するコミュニティの中を除いて、幅広く多くの人に認められるという状況はあまり無いだろう。さらに認められたかどうかを数量的に可視化することなどはほぼ無いに等しいと言える。
しかし、SNSの普及により、自分と同じような一般の人が自分とは違い多くの人から認められているのを見ることが増え、だったら私もとなるのは予想できることだ。SNSが普及していくと共に、いいね数やリツイート数によって多くの人から賞賛される環境が整備された私たちは、承認欲求が嫌が応でも増大していく他なかった。
アイドルの増加と承認欲求
簡単にSNSによって他人から認められることができるようになった社会においてなぜアイドルが増えたのか。それはこれらの理由が考えられる。
①一般の中ではなかなか認められることがないため、アイドルになることによって認められやすくなりたい
やはり一般の人々は数え切れないほどいるため、その中から見つけられやすくなるためにアイドルになったということ
②SNSでの評価に飽き足らなくなった
SNSという匿名性が高く顔も見えない人々からの評価では満足できなくなり、客(オタク)という顔が見え、自分を褒め称えているところを実際に見ることの出来るためアイドルになった
このふたつが大きいのではないかと思う。もちろんAKB48の台頭により自分たちと同じような素人の子がアイドルとして輝いている姿を見ることが出来、それによってアイドルを志す人も増えたというのもある。しかし、SNSの普及によりさらにアイドルの増加に拍車をかけ、またそれはこれら2点の理由が大きな要因だと考えられるのだ。
SNSによる承認欲求の増大、それらに起因してアイドルの増加が起こった。ではなぜそれに伴いオタクも増えていったのか。
オタクの増加と承認欲求
認知されることで承認される
別にアイドルが増えたところで、そもそもAKB48や乃木坂46などの大手のアイドルだけを見ていればそこまでアイドル文化が発展していくことは無かった。なぜアイドルが増えればそれだけオタクも増えていったのか。
認知される という文化がある。この文化が生まれたのはおそらくAKB48グループにおいて握手会という制度が設けられたからであろう。握手会というアイドルと実際に会って話しをする機会が設けられるようになったことで、アイドルに自らが認識されるようになったのだ。そしてそれはある意味で承認欲求を満たすこととなった。
自分が推しているアイドルが自分を認識している。それだけでたくさんの人に評価されるのと同じくらい、いやそれ以上の意味を持つのは誰かを推すものとして理解できる感情であろう。
アイドルに認知されることは承認欲求を満たす。しかしアイドルが人気であればあるほど認知はされにくい。ということは新しく生まれたまだそんなにもファンが居ないアイドルを推すことで認知されやすくなる。また認知はSNSによってもされやすい為、SNSの普及はそこにも大きな役割を果たしている。
古参であることで承認される
売れたアイドルに対して「自分はデビューする前から知っていた」「〇年前からずっと推していた」という言葉がかけられているのを見たことはあるだろう。アイドルの増加、次々とアイドルが生まれていく中でそれぞれにオタクが付く。そして自分が初期から推していたアイドルが人気になると、「自分にはアイドルを見る目がある」という自信が生まれる。だからこそその自信をさらに付けていくため、人気になったアイドルに見切りをつけ新たなアイドルを探す旅に出るのだ。人気アイドルの古参というのは「アイドルの見る目」が承認された証であると言えるため、承認欲求が満たされる方法の一つであると言える。こうしてアイドルがどんどん増えていき、それに追随するようにオタクの数も増えていったのだろう。
結論
こうしてSNSの普及、それによる承認欲求の増大によりアイドルとオタクは増加し続け、それがアイドル文化の発展に大きな役割を果たしたと言えるだろう。アイドル側からの承認欲求という視点はよくあると思うが、オタク側からの承認欲求という視点はあまり見ない。しかしこの視点こそが重要であると私は言いたい。ただ承認欲求によってアイドルの数が増えただけではここまでのアイドル文化にはなり得なかった。
しかしだからと言ってアイドルが輝こうと努力する姿を承認欲求を満たすためと言い切るのはやぶさかでは無いし、またアイドルを愛し推すオタクの心も同様に言える。現象としての話でしかないので、個々の思いを普遍的に承認欲求であると言うことは出来ないのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?