私が世界を救うまで 第1話
「おかぁさん、空が泣いてるよ」
4歳くらいの女の子がそう言うと
グルルと唸り声でドラゴンが答えた。
女の子にはそれがしっかりと言葉として「雨ねぇ」と言っているように聴こえている。
ドラゴンから人間が生まれたりする世界では決してないのだが、ふたり(1匹とひとり)は親子をしていた。
この子は
産みの母を、このドラゴンに食われたとは知らないまま育ったあの時の女の子だ。
そして、ドラゴンが母だと信じている。成長したら自分は母のようなドラゴンになるのだと思っていた。
母ドラゴンもそのあたりはあまり話してこないでいた。単純に機会がなかったのか面倒だったのか……。
「私は、急を要することがない限り、雨の中は飛びたくないねぇ。濡れたくないもの。」
地球でいうところの猫のような発言だ。
もちろん少女以外にはグルルルと聞こえるのだが。
「あたしもイヤだな〜。
あ、そうだ!
今日はおかぁさんからとれたウロコを磨く!」
「また変なコレクションに加えるのかい?」
「いっぱい集まったらイラストを書いてね、占いをするんだ。前に人里に下りた時にしてる人を見たの!あれはカードだったけど。あたしはおかぁさんのウロコが好きだから、それでするんだ。」
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【天界社畜課】
「……どういうことですか?
私は、異世界転生ばかりでまっさらな赤ん坊で生まれるなど珍しくなったから手違いのないようにお願いしますと言いましたよね?
なぜ【地球支部人間界担当】のあなたがドラゴンと魔法のある世界にあの子の生まれ先を書いていたのです?
書類の中身を適当に確認しながら見逃してしまった
私の責任問題にもなるじゃないですか……
……ゴホンッ
…………仕方ありません。
なかったことにはできないので
異世界転生させます。
私の使える最大限の権利を持って
あの子を地球に。」
地球に異世界転生?
逆輸入的な考えか??
よくわからないけど……
「そんなことできるんですか?」
上司からはバカにしてるのかと言いたげな視線を向けられた。
「できます、というか無理やりします。
私はその後、逃げますからあなたにあとは頼みますね。さぁ、あの子の真名を教えてください。魂に話しかけます。」
「あの子の……
名前は…… や、でもあの世界でもあんがい幸せに……」
「ダメです、あの子が行かないと魂の器がひとつ余ってしまう。魂を持たない子は必ず不幸になります。天界としてそれは重罪です。」
必ず不幸……
重罪……
そうか、こんなミス聞いた事なかったから知らなかった。
そうか……。
「あの子は、地球に転生したら幸せになれますか?」
確認にミスがあったのは確かだけれど
自分も
最後だからと気が抜けていたかもしれないと責めてしまう。
転生で幸せになれるだろうか?
あんなにドラゴンと仲むつまじく会話をしているのに?
次から次へと思考が湧いて爆発しそうだ。
「……ごめんなさい。
僕が地球へ生まれさせる魂を探しますから
2日だけ待ってください。お願いします。
だから
真名はまだ言えませんが、あの子はユーンです。ドラゴンがつけました。」
……猶予をもらったあるふぁは
社畜課パワーで2日間天界に泊まりながら、なんとか魂を見つけ出す。
それから間もなくして
ユーンの才能は
ドラゴンと魔法の世界で開花するのである。
あるふぁの粘りは
ユーンと地球ではない世界に幸福をもたらす。
To Be Continued