私が世界を救うまで 第6話
【天界社畜課】
社畜課のやつらはおそろしいと、同じ天界務めの人間や天界人にもよく言われている。
もちろんそれが社畜課のやつらの耳には入らない。
彼らは彼らで自分たちは普通だと信じきっているし、雑音など耳から摂取している時間など微塵もない。
・呼び戻しには20分以内に駆けつける
これひとつをとってみても、ほかの天界務めからすると有り得ないと言われている。
天界に住んでいるものたち(上層部の大天使)ならば、自分の課に20分以内というのは頑張れば可能ぐらいの距離、広さなのが天界という場所。
人間界からスカウトで来ているもの(あるふぁのみ)や、天界周辺に住処を持つものになど到底不可能。
けれど
それを可能にするのが頭の上に浮かせる輪である。これは普段は社員証でしかないのだが、緊急呼び戻し時にのみ時空を超え駆けつける機能が付けられている。
……普段からそれで出社したらよいのではないか?
浅はかである。
物事には代償が付き物だ。この機能を1度使うたびに、寿命1年が費やされる。
感触はちょっといつもより疲れたなぐらいだから気づかない。
ちなみに本人には見えないが上層部には見える寿命カウンターがあり、しっかり管理されている。
これが優しさなのか否かは賛否両論わかれていて、今もたまに論争が起こるが、もちろんそれも雑音にすぎない。社畜課は通常運転だ。
社畜課の深淵級社畜(※エリート社畜)は元々、日本人スカウト率が100%だ。彼らは社畜の特性を備えている率が高いのである。
そんな彼らには社畜である前にさらに社会人として、よりも前に幼い頃から学んだ「10分前行動」が、どんな数の星をもつ料理人も、おふくろの味を極めに極めた母親の煮物も味がしないよなぐらいの超絶すごい染み込み方をしている。
これが出勤時にならまぁわかるかも知れないが、急な呼び戻しにも当てはめてしまうのが深淵級社畜(※エリート社畜)だ。
呼び戻しには20分以内に駆けつけるは、10分前行動を加味すると10分以内に駆けつけるに変わる。
天界人だろうと「帰るかな」「あ、ちょっと待って」の呼び戻しじゃなければ無理難題である。
だが、無理難題だろうとこなすのが深淵級社畜(※エリート社畜)というものである。
ちょっと疲れる方法で今回「も」あるふぁは社畜課に戻ったのだ。
少しだけ乱れた息を整え、上司に問う。
「大変なことってどんなことなんですか?」
「生まれてしまいました。」
いつもの笑顔がそこにはない。この天界人はいつもの上司であっているのかすらわからない。
「生まれた?
何が何処にですか?僕にでも分かるように説明を…」
【滅びの木】
ん"ん"ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ん
ん"ん"ガァルるがァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”んん
滅びの木から聴こえる不気味な鳴き声
木の周りの大地は割れ始め所々、根が剥き出しだ。
突如生えたその木の半径10キロ内にいた人間は1人残らず息絶えて転がっている。
この異世界が誕生してから最大級の危険生物が木からドサリと落ちてきた。
真っ黒な身体、ボサボサでギトギトした黒くてながい毛。その黒さに映える青と白のオッドアイがギョロりと、辺りを見回し終えた頃に、空からは炎を吐く、1匹のエンシェントドラゴンが到着した。
グワァァァアオオォオオオッッ
その場に着いてからも、威嚇の炎を止めることなく吐き続けるが、危険生物は腕らしきもので容易くはらってしまった。
そうなることはドラゴンには分かりきっていたことではある。
ただやはり、分かっているからと言っても、こうも容易くあしらわれたのは「初めて」だ。
このドラゴンはエンシェントドラゴン。
大切な娘ユーンに出会うまで無敗で全勝してきた猛者。
この異世界を守ってきた守り手。
勝てなかったのはユーンただひとりにだけである。
【モッテアムゴット】
うぅーん
ウロコの光がよくないなぁ?
ぁ…
雨が降ってきた
おかぁさん……濡れたくないよね?
よーし!
To Be Continued