映画『嘘喰い』レビュー
ファン歴14年、直筆サイン本や迫ちゃんとの2ショット写真持ちの嘘喰い大好きコテことちむが映画『嘘喰い』をレビューする。
◆上映前
人が少ねえ。
貸切かってレベルで閑散としている。15人前後といったところ。
隣の席にポップコーンを盛大にこぼしたが、(どうせ来ねえだろ)と思いスタッフに申告しなかった。あ、これギャンブルだ。なんか嘘喰いっぽいぞ!
足音が後ろから聞こえるたびに少しドキドキした。今考えると、この時間が一番スリリングだったかもしれない。
◆序盤〜屋形越え(一回目)
冒頭。都内の上空カット。ビル群や東京タワーが映され、「3年前」のテロップと共に貘が屋形越えに臨むシーンから。
賭郎本部の屋上。貘(横浜流星)は原作通りオールバック。カッコいい。
向かいに座るお屋形様(櫻井海音)は片手でルービックキューブをカチャカチャと回している。カッコいいな。雰囲気は出ているぞ。一本だけ垂れ下がるあの前髪もしっかりと再現されている。
上映前から思っていたが、キャストのビジュアルはかなり良い。きっちり寄せてある。
二人に立ち会う夜行さん(村上弘明)の出で立ちもバッチリだ。声や喋り方も良い。頼む、このまま進んでくれ。
賭郎の成り立ちや屋形越えの説明がフォント交じりで説明される。まあ良い感じ。
夜行「さて、何を賭けますか」
貘「」ゴソゴソ(おもむろにカリ梅を取り出す)
貘「」カリッ
お屋形様「……」カチャカチャ
貘「上空を飛行機が通るか通らないか……俺は通るに賭ける」
うーん。ここは「そーだねー 今夜は空も綺麗だ」を入れてほしかったな。その一言あるだけで俺みたいな原作フアンは嬉しいんだから。
お屋形様「……」カチャカチャ
いつまでカチャカチャしてんだよ!何か喋れ!
夜行「決まりですな」
決まりなんだ
と、会話劇が始まるとやはり違和感が拭えないものの、最初のゲームがスタート。
すぐさま屋上に並んでいる立会人の一人が後ろに組んでいる手でスマホを操作。航空局?に東京上空を飛ばないように遠隔指示を出す。
空港のカット。一気に全便欠航へ。この組織迷惑すぎる。
場面は替わり、小型の飛行機を飛ばそうとする二人の工作員のカット。恐らく嘘喰いの私兵。「この飛行機を飛ばすだけで1000万だとよ!」とか言ってる。この頃の嘘喰いの仲間は(伽羅を除き)金だけの薄い関係だったはずなので、まあ解釈通りかも。
そこへピザ屋の配達員がバイクに乗って到着。二人を銃で始末。配達員に扮する必要ある? 原作の寿司屋feat.夜行さんの取り立てをパロったのかもしれない。
勝負はそのまま定刻を迎え、当然お屋形様の勝ち。夜行が嘘喰いの処遇をどうするか訊ねる。
お屋形様「……」カチャカチャ
いい加減揃えろよ、面を。
お屋形様「……」トン(一面も揃ってないキューブを置く)
夜行「わかりました」
わかるんだ
夜行が銃を取り出し、貘に向ける。直後に銃声。
夜行「お屋形様の言葉をお伝えします。貘様の命はお屋形様預かりとし、賭郎会員は剥奪」
ただカチャカチャしていただけの人間の意図をしっかりと汲み取ってみせた夜行。これがお屋形様付きに求められるスペック。……じゃなくて!
・「君は…つまらない ポーカーとかだったらあっさり勝ってたかもね」
・「僕の気が向いたら取り立てるよ 君の命」
・「忘れるかも そんなつまらない命」
このうちのどれか一つでもいいからお屋形様に何か言ってほしかったな。そんでコート羽織りながら去ってくれ。なんで一言も喋らないんだお前。
(奇妙なことに、この不満は後々撤回することになる)
◆序盤〜漁村の賭場(映画オリジナル)
「三年後」のテロップ(確か)。
舞台はどこかの漁村へ。オッサンたちがボロっちいテントでチンチロをしている。親のオッサンが一人勝ち状態。
そこへ貘が「俺も混ぜてよぉ(ニヤニヤ)」と輩っぽく登場。オッサンはガキの来る場所じゃねえと冷やかすも、貘が100万の札束を提示したことで目の色を変える。
一人勝ちオッサンとのサシ勝負。貘が「喰ってやるよ、アンタの嘘」とか何とか言ってカリ梅を食う。解釈が違う。チンピラっぽい感じも違うし。開始前に嘘=イカサマの存在を意識させるのもダメだろ。あとカリ梅は何なんだよ。こんなザコ相手にカリ梅出すなよ。
勝負は、相手のイカサマである磁石サイコロと磁石フィールドを貘が逆手に取り、札束に仕込んであった磁石で出目を操作して勝利。
最後に、予告のティーザーでも流れていた「喰ってやったぜアンタの嘘。ただし味は……👎🤪」でフィニッシュ。あれ、このシーンだったのか。あまりにもダサかった。
そして、こんなザコ戦に突っ込むのも野暮なのだが、貘はその場で観察・洞察をしてアドリブで相手のイカサマを利用したというわけではなく、このカラクリを知っていて事前にせこせこと札束に磁石を仕込む準備をしたということなので、そう考えるとかなり滑稽だ。漁村のオッサンに勝つために、あの貘が札束に磁石を……。もうちょっとマシな勝負と勝ち方を用意してあげてくれ。簡易版四神包囲みてえなやつ。
場面は切り替わり。貘が漁村の食堂でラーメンを食っていると、貘の世話役?のオッサンがやってくる。ルックスは佐田国に似ている。佐田国に似ているオッサンが、佐田国の話をし始める。なんなんだ。
佐田国似のオッサン「東京の賭郎が面白いことになってるぞ。佐田国ってやつが屋形越えに挑む勢いらしい」
東京の賭郎ってなんだよ。本部とか支部とかないだろ。そしてお前は誰なんだ。
その話を聞き都内へ戻ることを決めた貘。佐田国似のオッサンは貘を引き止める。いつ命を取り立てられてもおかしくないんだぞと。寂しそうな顔してるけどマジで誰なんだお前。漁村に3年?匿うって相当キモいな。二人の関係性が謎すぎる。
貘「屋形越えだけは譲れねンだわ」みたいなことを言ってオッサンの肩を叩き、村を去る。
漁村編完。ここいる?
◆序盤〜梶との出会い
貘がみなとみらい周辺を歩いている。
貘「やっぱハマは良いなあ〜」
……ハマ? 横浜流星だから?
ジュースを買おうと自販機の前まで来るも、手持ちが万札しかなく困り顔の貘。
そこへ日雇いバイトを終えた梶がやってくる。自販機で当たりを出し、同じジュースを2本ゲット。欲しそうに見つめる貘に1本渡す。
まあ、別にここは良いや。梶のキモ冴え(ラッキー)要素とお人好し要素は一応出せてるし。
その後、借金の取り立て屋が梶のもとへ。原作と同じように同業者を装った貘の機転により窮地を脱する梶。なんやかんやで二人は闇カジノへ。
原作通り、バカラでディーラーをハメる貘。梶が貘さんスゲェっす!とか言ってハイタッチ、そんで二人して変なガッツポーズを取る。後でまた出てくるが、これが爆烈にダサい。貘はそんなこと絶対しない。負けたディーラーがカメラに目線を遣る。胴元である蘭子(白石麻衣)への合図。
ここから明確に崩壊します。
まず、キャスティングが発表された直後から各方面で懸念されていた、蘭子役・白石麻衣の演技力。アイドルの演技に期待するつもりもなかったが、それを差し引いても酷い。見せていいレベルに達していない。というか、蘭子みたいなクセのあるキャラクターの役をやらせることがそもそも酷だ。いくら事務所の力学があるにせよ流石に無理筋でしかなかった。
まあ、棒演技だけならまだ良かったのだが……
この蘭子は、脚本の都合と大人の事情によりはっきりとキャラクター像が歪められていた。ストーリーを円滑に進めるためといえば聞こえは良い。『カイジ』で遠藤が女になるよりはマシかもしれないが(でも天海祐希には演技力があったから普通に見れたよな)、本人の力量不足も相まってかなり事故っている。見ていて羞恥心が刺激される感じの事故。
その全容は後で語ろう。後編に続く。