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<オタク話>終わらない希望を歌う旅-スターリッシュツアーズを観劇しての雑感
「うたの☆プリンスさまっ♪」劇場版第2弾となる「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスターリッシュツアーズ(以下、ST)」が公開されました。色々な理由で映画館に足を運ぶことができていなかったんですが、プリンセス諸氏から遅れること約1ヶ月、ようやく観劇できました。
結論。めちゃくちゃ良かった。ぼくは語彙力を失って涙を流す大男と化し、聖川真斗が出るたびに「ヒッ」と息を漏らす不審者になってしまいました。大画面で見る顔のいい男は健康状態を爆上げする、と強く感じた。肌ツヤが明らかに良い。
「約束」と「変化」
さて、2年ほど前に「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」を観劇して、ぼくはこんなお気持ち文章を数件書きました。
ぼくは聖川真斗のツイートと、「マジLOVEキングダム」プリンスがファンへの呼びかけに「二人称複数」ではなく「二人称単数」を用いる姿ーーーつまり「君たち」ではなく「君」というようにーーーから「うたプリは『プリンセス』一人一人とプリンスたちの物語の集合体だ」「プリンスたちは本来アイドルにありえなかったはずの『永遠』を約束してくれるし、そんなアイドルにハマらないわけがない」と解釈し、すっかり魅了されてしまったわけです。
ところが、です。今回、STのライブ中には「みんな」「君たち」「皆さん」というような、これまでーーー少なくともぼくが観測してきたうたプリの中ではーーー用いられることが少なかったような「二人称複数」に対して感謝を述べる彼らの姿がありました。
正直言うと、これに気付いたときーーーあくまでぼくの感じた解釈なので、まったくもって身勝手なことなのですがーーー最初は違和感を感じました。「ST☆RISHは、何かが変わってしまったのか?」「『一人一人の物語』は『大勢の物語』に姿を変えたのか?」という違和感です。
それが大きな勘違いであることに気付いたのは、改めて今回のセットリストの歌詞を読んだ時でした。
「分断」と「宣言」
今回のSTは「旅」をテーマにしています。故に、メンバーは世界各国の音楽や民族衣装をモチーフに、様々な形で楽曲を披露します。余談ですが、ぼくの推したる聖川真斗のソロ曲「Snow Ballad」、衣装も演出も200億点差し上げたい。オタクは推しを閉じ込めたがるし推しが素手で触れた瞬間にスノードームが割れてキラキラって…しかもランタン受け取るのがレンって…でレンがふーってやったらロウソクが…そんなん泣くやん…。
閑話休題。
本作のタイトルを冠し、ライブ本編の始まりを告げる「マジLOVEスターリッシュツアーズ」の歌詞を見てみましょう。
百万回生まれ変わっても 君を見つけるよ
―――「マジLOVEスターリッシュツアーズ」より引用
この「マジLOVEスターリッシュツアーズ」という曲について、全楽曲の作詞作曲を手掛ける上松範康氏、またプロデューサーの紺野さやか氏は、次のように語っています。
上松 これからどうなってしまうんだろうというあの時の感覚を、ST☆RISHも感じたと思うし、彼らならそれをどう歌にするかなと考えて、そうした想いを込めて作った曲が「マジLOVEスターリッシュツアーズ」です。
(中略)
紺野 (中略)皆さんが明るい希望を求めている時に幸せをくれる、そんな存在になっていると感じます。
―――映画パンフレット内インタビューより引用
前作「マジLOVEキングダム」から、世界の状況は大きく変わりました。旅をすることはもちろん、好きという気持ちを声に出して叫ぶことも憚られる時代です。事実、ぼくが観劇した「応援上映」でも声出し・歓声はNG。ペンライトを振り、拍手を送るプリンセス諸氏の多くがこう考えたと思うのです―――「めちゃくちゃ推しの名前呼びたい!!!!!!!」と。
社会が人々に分断を強いる時、人は個人ではなく「集団」の1つにくくられてしまいます。「いくつもの『プリンセス』とプリンスの物語の集合体」であるうたプリの世界にとって、それがいかに重大なことかは想像に難くありません。「人と人との分断」―――「プリンセス」とプリンスたちに限らず、今我々が生きているこの世界において大きな不安材料です。
そんな世界では誰もが明るい、希望になりうる言葉を求めます。その希望がこの一節に込められているように思うのです。前作に比べ彼らが「君たち」「お前たち」「子羊ちゃんたち」―――なんであれ「複数形で」ファンに呼びかけるのは、どれだけ世界が閉じてしまって、不安であったとしても、「百万回生まれ変わっても 君を見つける」ことができるという、彼らなりの希望の宣言なのではないか。そしてそれを確信したST☆RISHの成長が、この「二人称複数」への呼びかけという変化をもたらしたのではないか―――そう考えるのは、少し深読みが過ぎるでしょうか。
「過去」と「未来」
誤解を恐れずに言えば「マジLOVEキングダム」は「過去」に対する物語だったと言えるでしょう。ST☆RISH/QUARTET NIGHT/HE★VENSそれぞれの歩みの中で直面した困難に対し、「プリンセス」たちが送り続けた愛が、それを乗り越える大きな力になったことへの、プリンスたちの「感謝」の集大成と言い換えてもいいかもしれません。
だとすると今回のSTは、ST☆RISHが提示する「未来」の物語です。本編ラスト「ST☆RT OURS」において、彼らは次のように歌います。
始まりをくれた君に 僕たちはこうやって返してゆく
時間が過ぎるってことに 泣く君を抱きしめ
(中略)
「始まり」は君と一緒に 必ず創ってゆくんだ…!
―――「ST☆RT OURS」より引用
ST☆RISHの始まりをくれた「プリンセス」に対して、彼らができること―――新しい「始まり」を「君」と一緒に「必ず創ってゆく」ということ。なんと力強く、希望に満ちた言葉でしょうか。
これまでも、プリンスたちは「プリンセス」たちに対してずっと「永遠」を約束し続けてきました。「永遠」―――アイドルがアイドルとして存在している限り、それはありえないことをぼくたちオタクはよく知っています。だから「時間が過ぎるってことに泣く」。
しかし、プリンスたちはそのありえないことを約束し、あまつさえぼくたちにそれを信じさせてくれた。そのプリンスたちが「君を見つける」と言い、「始まり」を「君と一緒に 必ず創ってゆく」と言って「未来」を歌う―――これを「希望」と言わずして、なんというのでしょう。
「うたプリ」と「ぼく」
身も蓋もない言い方をすれば、今回のぼくの観劇は「1日に同じ映画を2本見た」ってだけです。もっと言うと、この文章は「オタクが映画を見て深読みをした文章」にすぎません。ですが、もしぼくがそれを他者から指摘されたら、ぼくはきっとこういうでしょう。
「うるせえ!これはぼくなりのうたプリだからいいんだよ!」
そう、これは「ぼくと」プリンスたちの物語です。ぼくはプリンスたちに永遠を約束されましたし、これから先ももっと素晴らしい世界をプリンスたちは歌ってくれます。そしてそれは、他の「プリンセス」たち…すなわち「あなた」にとっても同じ。きっと「あなた」がプリンスたちから受け取った希望があるはずです。なぜって、それこそが「あなたと」プリンスたちの物語なのだから。時間は過ぎます。世界は変わります。ひょっとしたら、ぼくもあなたも、うたプリから離れる日が来るかもしれません。けどそれさえも、希望を持って受け入れられる。そんな世界を、うたプリは作ってしまったのかもしれません。
「キスよりすごい音楽って本当にあるんだよADV」。記念すべき第一作、PSPゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」が掲げたゲームジャンルです。きっとこれからもプリンスたちが織り成す「キスよりすごい音楽」が生まれ続けていくことでしょう。ぼくたちの知らない「キスよりすごい音楽」を楽しみに待ちながら、今はプリンスたちが連れて行ってくれる世界中への旅を、存分に満喫したいと思います。
さーてあと何回見るかなー!!!!!!(職場と自宅の間にある映画館の上映情報を確認しながら)