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四の五の言ってはみるけれど
論理的なつもりで自分の意見を滔々と述べていると 、決まってまえけんさんはかぶっている帽子を脱いでぼくを見つめる 。ぼくは 「めちゃめちゃハゲてるじゃないっすか ! 」と言って 、 「真剣に話してるんですよぼくは ! 」と抗議する 。するとまえけんさんは 「四の五の言っても 、幸せになったもん勝ちよ 」と言うのがお決まりのパタ ーンだった 。若造の机上の空論を蹴散らすにはとてもキレ味の鋭い 〝笑い 〟だった。
(中略)
ぼくがテレビに出るようになってもまえけんさんは 「おめでとう 」とは言わなかった 。メ ールで 「今 、幸せ ? 」という文章をよく送ってきた 。ぼくは自分が今幸せかどうか考えたくなかった 。都合の悪い答えが出たら嫌だったからだ 。今はわかる 。まえけんさんは 「幸せになりなさい 」と言いたかったのだろう 。
『ナナメの夕暮れ』:若林正恭
私もずーっと四の五の言って、それがいつまで経っても、六にも七にも、九にもならないままを過ごしていますが、
時たま出逢うこんな十の解答には、とてもとても及ばないなと思うのです。
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