身に余る週末に学んだこと
こんにちは。
京都にて宿泊事業者向けのSaaSを提供させていただいております、株式会社CHILLNN CEO兼CTOの永田です。
最近は身に余るご縁をいただいて、有名な経営者の方々とお話をさせていただくことが多く、アウトプットしておかなくては、このインプットが自分の頭から溢れてなくなってしまうと思ったので、自分でも見返せるように箇条書きでnoteに残しておきたいと思います。
プロダクトを研ぐことについて
JINSの田中社長から、ユニクロの柳井社長から助言をいただいた際のエピソードについてお話ししていただきました。その中で、柳井社長は、作りたいものをどれだけ詳細に言語化できるかを追求することが必要だと話されていました。
理想のプロダクトを作るにあたって、プロダクトの理想状態を定義することはもちろんのこと、企画はどのように進められるべきなのか?流通はどのようであるべきか?コンセプトはどのようなものであるべきか?そこで働く人はどのような思いを持って働いているべきか?
ものづくりのバリューチェーンのあらゆるポイントで、理想状態を突き詰めて言語化し、共有していくことが経営者の責務なのだとお話しされていました。
私自身、リーン・スタートアップを曲解し、不確実なままプロダクトを開発していくことを是としていた節があり、この責務についてお客様に転嫁をして半ば放棄をしていたのではないかと反省させられました。
創業当初は不確実性が高いもので、解像度が低いことはある意味しょうがないことですが、不確実性がなくなっていくごとに、常に理想状態の解像度をあげ、言語化し、共有する努力を怠ってはならないのだと認識させられました。
週末に、GOの三浦さんに、京都の福知山の山奥にあるNOMIというレストランに連れて行っていただきました。そこは、17歳、20歳、23歳の3兄弟のシェフがキッチンに立ち、徹底的に刃物にこだわって、「切れ味」というコンセプトで運営しているレストランです。
自分よりも若いシェフの3人に、心の底から嫉妬させられました。
彼らは、どれだけ価値の高い料理を作ることができるのかという問いに対し、真正面から向き合っていて、すべてが本物でした。
この包丁ではきゅうりは2本しか切らない
きゅうりをきるために5分使う包丁を2時間かけて毎日研ぐ
包丁の構造的に、押し切りをすると繊維が潰れてしまうので、全ての調理過程で引き切りに変更した(結果的に、仕込み時間が飛躍的に増えた)
最高の卵を作るために、鶏の嘴の構造を研究して、最も自然な餌を与える
などなど、全ての意思決定が、理想のプロダクトからの逆算で行われており、収益は研鑽を続けるための費用としてしか考えていないように見えました。
食べ終わってからご長男の遊士丸さんに直接お話を伺ったら、今日出したジビエのハンバーグで一つ改善できるところを見つけたから次回はそこを変えるとおっしゃっていて、理想状態の解像度の高さに本当に頭が上がりませんでした。
彼らの解像度は、一日一夕で追いつけるものではないですが、僕にとって最高のロールモデルになりました。
事業との向き合い方について
事業とは、過去の意思決定・信用でできています。一方、人間は日々情報をインプットしていくもので、自分自身は変わり続けます。社会の中の自分は過去の行為で固定化しているため、内部的な自分との間には常にギャップが生じます。
事業を進めていく中では、過去の自分の意思決定の稚拙さに絡め取られ、全てをリセットして、0からスタートさせたい欲望に駆られることがあります。
色々な経営者の方のお話を聞き、相談をさせていただく中で、これは、どんなに有名な経営者にも同様なのだと感じました。
スタートアップの身軽さは、失敗の経験の少なさから来ています。上場企業の複雑な稟議フローは過去に乗り越えてきた数々の失敗からの学びが積み重なったものです。
為せることの大きさとは、責任の重さとのトレードオフであり、為せることの大きさが拡大すれば、果たさなくてはならない責任も同時に大きくなっていきます。責任とは、過去の意思決定に紐づく社会的なものであり、何か大きなことを成したいのであれば、肥大化し続ける責務と現在の間に折り合いをつけ、うまく乗りこなしていかなくてはなりません。
博報堂の嶋さんが「忙しい人ほど時間を作れるものだよ」とおっしゃっていました。
今、自分は嶋さんが主催している経営者向けの哲学の私塾に、月に一度通わせていただいており、月に一冊課題図書を出していただいているのですが、そこには自分よりも数段レベルの高い経営者が集まっているはずなのに、みなさん全て読み込んで、さらに副読本まで読んでこられます。
週末に嶋さんにお会いさせていただいた際、出会い頭に今月の課題図書であるプラトン著の「パイドン」に無数のポストイットを貼っているのを見かけました。聞くと、パイドンの脚注まで含めて全て拾っているから時間がかかるんだよねと笑って話してくださいました。
自分は本当に忙しいのか?と認識を改めざるを得ない体験でした。
年を重ね、サービスの規模が拡大し、自分が今本当にしたい時間の使い方に対して、社会的に満たさねばならない仕事が増えていくことは、どんな人であろうが必然です。
社会的に果たすべき責任と、一人の人間としての理想との間に、どうやって折り合いをつけていくのかは、一生かけて向き合っていくべき命題であり、絶対に逃げ出さずに、乗り越えていくことで、より大きな責任を引き受けていけるように精進していこうと決意を新たにしました。
自分の欲望について
自分は元来欲望の小さな人間であり、気を抜くと日常の中ですぐに満足してしまいます。同時に何者かになりたいという思いはずっと抱えていて、そのエンジンとなる欲望の火種を探し続けていました。
日々、自分と向き合う中で、顔の見えない誰かのためや、手触り感のない社会の変革に大きな欲望を抱くことはできないとわかりました。自分は、目の前のチームメンバー・友人・お客様が喜んでいること、ポジティブに驚いてくれることに最も喜びを感じます。自分は、目の前の人をとにかく幸せにして、できる限り長く一緒にいたいのです。
一方、社会人になって、ただ楽しいだけでは、人との関係性を維持することはできないと学びました。誰よりも努力し成長し、自分を研いでいくことで、自分が一緒にいたいと願う人たちとはじめて並び立ち続けることができるのだと理解しました。
世界最高のチームを作って、最高の結果を残し、
休日にご一緒させていただきたい人たちとご飯を食べる。
「世界最高のチーム」は、吉野家CMOの田中さんに、どうしても大きな欲望が自分の中から出てこないと相談させていただいた時にいただいたコンセプトです。
そして、この数週間は「一生涯ご一緒させていただきたい人たち」に、日本最高の経営者の方々が加わった期間でした。結果的に自分は、めちゃくちゃ貪欲な人間になってしまったのではないかと思います。
この欲望を満たせるよう、人生を通して精一杯精進していきます。
人と会うことについて
京都にいると、東京にいるよりずっと適切な頻度で人と会うことができると感じます。そして東京に行くためには時間もコストもかかるので、最大限何かを持ち帰ろうと一瞬一瞬努力します。
出身は長野で、大学は東京だった自分にとって、縁もゆかりもなかった京都という選択はとても正しかったんだなと心からおもっています。
引き続き地に足つけて頑張ります。