靴下が買えない
僕は靴下が買えない。
いや、買わしてくれない、
と言った方が正しいかもしれない。
今、履いている靴下のかかとが少々破れてきた。
それでも僕は気にせずに履けるのだが、周りの友人にやいやい言われるにもうんざりしている。
僕が履けると思っているから、問題ないじゃか、とさえ思う。
ただ、友人とご飯に行った居酒屋が、
座敷タイプだったとき。
気になる女の子がいる前で、
靴を脱ぐとき。
そこに恥ずかしさを感じるのは多少ある。
僕の性格は本当に惰性で、
まだ、履けると思えば履き続けるし、
今の時代、オンラインショップという便利なシステムがあるにも関わらず、靴下をポチるには腰が重い。
そして、僕は謎のこだわりがある。
今ではUNIQLOの靴下を履いていたが、
今回、買い替えるのであれば、ギルダンというアメリカのボディショップが展開している靴下を買おうと思った。
そして、ついに重たい腰を上げ、楽天市場でお目当ての靴下3セットを見つける。
料金もまぁお手頃価格だ。
この流れで、靴下を買ってしまう。
ここまで来るのに本当に時間がかかる。
買ってしまえば、むしろ、心はスッキリするし、
胸を張って靴下を履ける。
購入するという行為が本当にめんどくさい。
まるで、お風呂に入ってしまえばさっぱりすると分かっていながら、お風呂に入るまでがめんどくさいのと同じように。
楽天市場で靴下を購入し、1週間ほど経ったとき、
僕の携帯に見知らぬ電話番号が光る。
一旦、無視をしてみたものの、
気になるため、ネットでその番号を調べてみる。
するとそこには、楽天市場という文字が載っていたではないか。
どうしたのだろう、と思い、折り返しをしてみる。
そこには物腰の柔らかそうな男性が、
少し、お辞儀をしているのが頭に浮かぶ。
「山上さんのお電話でしょうか?
メールの方は確認してくださいましたか?」
「あ、はい。そうですけど、メールですか?」
「はい、メールの方でお伝えさせていただいたのですが、現在、こちらの靴下が在庫切れでして。。」
「あ、え、あ、そうなんですか。承知しました。」
「申し訳ないです。こちらで返金させていただきますね。」
衝撃である。
重たい腰をあげ、ポチるという行為までにどれだけの時間がかかっていると思うのか。
なぜ、在庫がない商品が掲載されているのか。
まぁ、今回は、そんなこともあるだろうと、
また、かかとに穴の空いた靴下をしばらく履き続けることにした。
その穴は次第に大きくなっていく。
一度空いてしまった穴は、最も簡単に、
穴の大きさを広げていく。
失われた信用が、
雪崩のように崩れていくのと同じだ。
そして、さらに2週間ほど経ったとき、
さすがに新しい靴下を買うことにした。
今度は思い切って、Amazonで12足セット。
毎日、違う新しい靴下を履ける計算だ。
これを機に、今までの靴下を全部捨ててやろうと思った。
だが、残念なことに、あるメールが僕に届く。
[入金取引がありました。]
ん?!入金??なんだ?
僕は口座の出金取引を確認すると、
Amazonで購入した靴下の代金が返金されていた。
なぜだろう。
そんな風に思いながら、
メールの続きを確認してみる。
するとそこにこのような文字が続いていた。
[注文いただいた商品ですが、税関のタイミングで紛失されました。申し訳ございませんが、返金手続きをさせていただきます。]
えええええええええ
またしても、靴下を買わしてもらえなかった。
この約1ヶ月間。
新しい靴下かが届くことだけを楽しみに生きていた。
新しい靴下の感触、匂い、締め付け具合。
その感覚だけを楽しみに、日々を生きてきた。
またしても、僕は靴下を買えなかった。
いや、買わしてもらえなかった。
かといって今更に、他社のブランドを買う意思もない。
ここまでくると、半ばやけくそではあるが、
絶対にギルダンの靴下を履きたい。
今度、僕がそのギルダンの靴下をポチるのは、
いつだろう。
その気になれば、すぐに買えるのだが、
その気になるまでに膨大な時間を費やす。
このnoteを書いている暇があるなら、
黙ってAmazonのアプリを開くべきなのだ。
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