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難易度Eのピアノ曲弾ける蘭って何者?」アニメ1000話:ピアノソナタ『月光』殺人事件はツッコミどころ満載?/「エンタメ・レント」「1周回って知らない名探偵コナン」第7巻②~⑦

いよいよ本日3月6日(土)の放送でアニメ「名探偵コナン」が1000話となります。
リマスターとかあるので1000回でなく1000話だそうで、過去に放送された中から選ばれて再起動(リブート)されたのが、今回の「エンタメ・リカレント」で取り上げる「ピアノソナタ『月光』殺人事件」。

原作コミックでは
「名探偵コナン」第7巻 

File2「月影島への招待状」
File3「ピアノの呪い」
File4「残された楽譜」
File5「業火の秘密」
File6「血染めのボタン
File7「名前の秘密」

までかなりの長編シリーズです。

再起動(リブート)される前のアニメ初放送は1996年4月8日に放送された第11話。
初の1時間スペシャルでした。

実は、このシリーズは、コナンが最初で最後、犯人を推理で追い詰めて、
犯人が自ら業火の中で死なせてしまったと後に自責の念にかられるレアな回。
悲しい回でもあるが、コナンはたとえ犯人であっても、死なせてはいけないと心に決めた、まさに探偵としての矜持を固めた原点の一つともいえる重要なエピソード回です。

しかしこのエピソードにおいても、大いなる謎や、ツッコミどころが満載です。真面目な作品論評は高名な評論家にお任せして、ツッコミどころを楽しみながら作品をリカレント(学び直し)してみたいと思います。

物語は毛利小五郎のもとに
『次の満月の夜 月影島で再び影が消え始める 調査されたし 麻生圭二』
と殺害予告状が届き、依頼料50万が振り込まれてしまったため、
蘭とコナンを連れて月影島に来たところから始まります。
(予めいっておくと、もう「何で子どもを連れてきたんだ?」というツッコミはもうしません。そこは物語進行上必然なので。)

しかし依頼人の名前に記された「麻生圭二」なる人物は、
12年前に家族を殺して自らも自宅に火を放ち
業火の中、ベートーベンのピアノソナタ「月光」を弾きながら
焼身自殺を図った地元月影島出身のピアニストであることがわかりミステリー感が一気に上がります。

でも、マニアックなファンなら、このピアニストの名前に別の意味で反応してしまうのです。
実は「麻生圭二」連載初期のアシスタントさん4名の中のお一人の名前
他のアシスタントさんは既にここまでの原作コミックでアイドルのマネージャーや殺害された被害者だったりで登場済みだったのですが、しばらく出てこなかったので、「おっ!」と反応してしまいました。
初見で読んでいたころには全く気付かない、まさに「重箱の隅」的な楽しみです。

そんな些末な楽しみが終わったところで、先に進みましょう。
死んだ麻生圭二の名前を語った犯行予告、公民館のピアノがピアノが調律してあったこと、そして2年前に死んだ村長も麻生と同じくピアノの前でなくなっている話を聞かされて、コナンは手紙の意味を推理している最中の三回忌の法事の際、突然ある旋律が聴こえてきます。

それが、物語の大きな柱となるベートーヴェンの「ピアノソナタ「月光」

そして驚くべきは「ピアノソナタ 月光」と新一と蘭の関係。

この「月光」は、ベートーヴェン 三大ソナタ「悲愴」「月光」「熱情」のうちの一つである名曲。

「バッハの平均律が旧約聖書なら、ベートーヴェンのピアノソナタは新約聖書だ」
そう評されたほどに、今もなお多くのピアニストやピアノ学習者にとってバイブル的存在です。

「この曲は・・・「月光」」とコナンも反応するのですが
サッカーと推理小説ばかりだったと思っていた新一(コナン)がすぐ反応できるって
基礎的な教養さと嘯くなら、やっぱり新一はカッコいいです。

そして更に驚かされるのは蘭です。

「月光」の譜面みてさらっとピアノを弾き始めただけでなく
譜面の4段目がおかしいと指摘するのですが、ここで驚くべきは、この曲の難易度。

全音ピアノピースの難易度評価では難易度「E(上級)」と評価されています。

難易度「E」と言えば、ショパンの幻想即興曲、リストの愛の夢などピアニスティックな表現が多用されるような、演奏技術を要する曲が多く存在する分類です。

これまで一度もピアノを弾いたシーンなどない中での特技披露。
空手以外の蘭の隠れた才能がさらりと明らかになります。

蘭ちゃんってやっぱりすごい。

<まさかのタメ口が再び!>

でもそんな謎に名ピアニストの蘭も
コナンや新一のことになるとてんで鈍感です。

まだ事件を解決出来ていないFile5「業火の秘密」では、事件解決に向けて謎に迫るコナンが
ここまでの殺人で「第一楽章」「第二楽章」が流れていたということは、さらに「第三楽章」に合わせて殺害が行われるはず!と気づきます。
思わず
「容疑者も帰しちまったのか?」
とついつい蘭に対してタメ口をきいてしまいます。

非常時なので気おされてか、蘭の方も特に追及することありませんが、以前はそういえばと後日追及するのに、そのことすら忘れており、本当に蘭でなかったらバレてるよ、よかったね新一と言いたくなってしまいます。
色んな意味で新一の彼女だけのことはあります。二人は無敵。

<そんな暇があったら・・・・楽譜の暗号の秘密>
物語のもう一つの柱である「楽譜の暗号」についても
ツッコミは満載です。


ピアノの楽譜に記された暗号についても、コナンはタネがわかれば簡単だと
「黒鍵も入れてピアノの鍵盤を左橋から順番にアルファベットをあてはめて
メッセージの文字に相当する音を譜面に書き記すだけ」

なんて言っていますが、

実際にやろうとしたらなかなかの手間です。

WAKATTERUNARA TSUGI HA OMAE NO BANDA
わかってるな つぎはおまえのばんだ→(分かってるな 次はお前の番だ)

そして
GOUKA NO ONNEN 
KOKONI HARASERI
ごうか の おんねん ここにはらせり→(業火の怨念ここに晴らせり)

こんな手間のかかる楽譜作っているぐらいなら
他の復讐のトリックにエネルギー割くべきなのでは?と余計なお世話を承知で
慮ってしまいます。

ここからさらにアルファベットを♬に置き換えて楽譜におこすなんて
気づいてくれなかったらただの間抜けもいいところです。
小五郎だけだったら、絶対に気づいてないこと請け合いです。

そんなトリックも見破り、
暗号の血が乾いていたことや、第2楽章のカセットテープに空白の時間(リバース)があったことから、偽りの死亡推定時間から検死をした医師 浅井成実が犯人と見事コナンが突き止めます。

60分テープの片面30分のリバースのトリックは、今ならiPhoneとかスマホではこのトリックも成立しないわけで、テクノロジーの進化と犯行トリックの歴史だけを取り上げて振り返っても、面白いかもしれません。

さて、数々のトリックを見破り、犯人は・・・成実先生!と分かったコナンは小五郎と放送室に行き、麻酔銃で眠らせて、小五郎の声で犯人トリックを明かしていくのですが、物語は予想もしない展開を見せます。

今回の最大の誤算は犯人を突き止めた際に、犯人の目の前にコナンがいなかったこと。
コナンならキック力増強シューズで周囲に都合よくあった何かを蹴って、犯人の逃走を防ぐことが出来たかもしれませんが、不在。目黒警部の痛恨のミスで、犯人の浅井成実は、逃げ出して公民館に火を放ち、業火のピアノの前で自ら命を経とうとします。

それを読んだコナンも、父・麻生圭二からの「成実、お前だけは まっとうに生きてくれ」という楽譜の暗号メッセージを成実に伝えて、自殺を思いとどまらせて、自首させようとするのですが、
「もう遅いよ ・・オレの手はあの四人といっしょ・・・もう・・・血みどろなんだよ」という言葉と共に成実は、チカラづくで窓を破ってコナンを建物の外まで放り投げます(かなりの怪力です)

あぁ、コナンでなく新一の身体であったらなら・・・かなりのダメージのはずなのに成実が業火の中で弾くピアノの調べに「暗号」を読み解くコナン。絶対音感+冷静沈着+強靭な体力で違った意味で驚きの結末を迎えます。結局、業火の中で犯人の浅井成実は最後を遂げ、救うことが出来ずに終わります。

唯一犯人の自殺を止められなかった印象深い回ではありますが、
実は原作コミックでは、ラストは月影島から戻るフェリーの船上がラストシーンでも、コナンの表情にはそこまで思いは読み取れず、
時間が経ってから、本人の心の中に刻まれたように見受けられます。

ラストカットの船のLS(ルーズショット:広い画角)に
犯人である浅井成実(せいじ)からコナンにあてた暗号の答えは

「 ARIGATONA CHIISANA TANTEISAN」
「ありがとな ちいさな たんていさん」

その時のコナンの表情は映し出されませんでした。再起動(リブート)された今日3月6日の放送ではどう描かれるのか、非常に楽しみです。

観た感想はまたいつか書ければと思います。

ツッコミどころ満載とはいえ、作品の魅力は全く色あせない本作品

「ピアノソナタ『月光』殺人事件」


コミック、初回アニメ放送、再起動(リブート)と3つの楽しみ方が出来る名作となり、今週・来週の放送が楽しみです。

それではまた。

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