N2文法「あまり」:「うれしさのあまり大声を出してしまった」
タイトルの例文には「難しさのあまり投げ出すところだった」を使いたかったのだが、「難しさのあまり」を検索しても、ほとんど使われていないようだったので、上記のようにした。
妻にこの文法の説明を求められたので、ネットでいろいろと調べたが、なかなか納得のいくものがなかったので、自分が納得のいくように考えた。正確には納得のいくようにまとめたと言ったほうがいいが。
【意味】
・普通の程度ではないAの状況、状態であるから、Bの状況、結果になる。
・Aには感情(うれしい/うれしさ、かなしい/かなしさ、)や感覚(痛い/痛さ、寒い/寒さ)を表す言葉を使うことが多い。
・Bにはよくないこと、普通ではないこと、考えにくいことがくる。
【接続】
・V辞書形:急ぐ、気にする *あまり例がない
・いA:はずかしい
・なAな:*例が思いつかない
・N/(いAのN)の:緊張の、心配の、怖さの、難しさの、悲しみの
調べた限りでは「なA」がなく、動詞についても例が少なかった。また「た形」に接続すると書いてあるサイトがほとんどであったが、そこにあった例文は個人的に不自然に感じた。
「急いだあまりに、うちのかぎをかけ忘れた」のような例文を掲載しているサイトが多かったが、検索エンジンでは「急いだあまりに」でひっかからなかった。「急ぐあまり」については、こんなサイトがあったので参考にさせていただいた。
日本語NETというサイトには以下のような例文があった。
a.「センター試験では考えすぎたあまり時間が足りず、最後まで解けなかった」
b.「田中さんは残業しすぎたあまり、体を壊し入院することになった」
aについてはテンスの問題で「試験中は考える時間が足りなかった」と解釈すれば「考えすぎるあまり」のほうがしっくりくる。bについても不自然ではあるが、「残業しすぎるので」などとは言わないから、不自然さの理由がわからない。「残業をしすぎるあまり」のほうがまだ自然ではある。
もう少し言葉を足して「田中さんは毎日5時間を越える残業をするあまりに、~」とすればより自然に感じるがどうであろうか。これは残業が日常的なもので、繰り返し行われていたのなら、「る形」を使う方がいいからで、「た形」を使うと1回きりのようなニュアンスに感じるからであろうと思う。こう考えるとテンスの問題であったと言える。
多くのサイトで「た形+あまり」を記載しているが、適切な例がない以上は、接続に「た形」は入れないほうがいい。ついでに言うと動詞自体の例も限られたものである。
この文型については使用する語彙がある程度限定されるので、その語彙を覚えてもらったほうがいいだろう。短文作成などの練習する際も語彙を限定した方がいい。
それから「今朝は急ぐあまりエアコンをつけっぱなしでうちをでてきてしまった」という文は正しいが、話し言葉ではないので、「いや~今朝は急ぐあまり、エアコンをつけっぱなしでうちを出てきちゃったよ」のようには言わない。
この「あまり」を硬い表現としてしまうと、硬い内容にしか使えないと解釈されてしまい、「今朝は急ぐあまり~~」は不適切ではないかと言われそうなので、説明が必要だ。今のところいい説明がないが、「ある状況、結果を客観的に描写する言い方になるので会話では不自然」のようになるだろうか。
以下例文
・昨日の会議では緊張して説明することに集中するあまり、参加者の態度を気にする余裕がなかった。
・彼女はこの歳まで仕事を優先するあまり、結婚のタイミングを失くしてしまった。
・学生時代はスポーツに熱中するあまり、勉強をほとんどしなかった。
・留学中の息子を心配するあまり、母は寝込んでしまった。
・レポートの提出を急ぐあまり、参考資料の記載を忘れてしまった。
・子どもがかわいいあまり、甘やかして育てるのはしかたがないと思う。
・有名な林崎監督の新作映画は、感動のあまりに言葉を失う人が多いそうだ。
・世界一寒い村では、寒さのあまりにカメラなどの機械が壊れてしまうらしい。
・緊張のあまり、人前で話すことができなくなる。
・プロポーズを断られて、悲しみのあまり絶叫する。
・息子は選手に選ばれなかった悔しさのあまり、泣き出してしまった。
・痛さのあまり声が出なかった。
・人によっては別れの苦しみのあまり、死んでしまうこともある。
・スウェーデンのシュールストレミングという食べ物は臭さのあまり顔がゆがんでしまうらしい。