見出し画像

丁寧だが優しくない日本語

妻は送り出し機関で働いている。

実習生も入国できるようになり連日大忙しである。

そんな中、日本へ行った実習生にトラブルがあった。入国の際に登録しなければならないMySOSというアプリがあるのだがこれの設定が何度やってもできないというのだ。

アプリのダウンロード自体は入国前にやっていると言っていたので問題なさそうなのだが、何かができなかったそうで、妻に助けを求めてきた。   

そういったことも妻の仕事なので対応するのは当然なのだが、妻の日本語能力だけでは結果的に微妙であったと思う。

まずは実習生が滞在しているホテルの受付の方にお願いしたのだが、日本語が丁寧すぎた。

特に難しかった点は

「お客様が空港からホテルへ来られる際にしおりをお持ちいただいたと思うんですが、見せていただけますか」

この中の「しおり」という言葉

私も数年ぶりぐらいに聞いた言葉で恐らく妻も初耳でわかるわけがない。私は「資料」と言い換えた。

結局この人では対応ができなかったので翌日担当の人が来ることになった。

その人も日本人と対応するように丁寧な日本語を使っていた。

「本日ホテルから自宅へ向かわれると思うんですけど、自宅の住所を教えていただいてもよろしいでしょうか」

妻は「自宅へ向かう」というところが全くわからなかったようで、違う話をしていた。私が「うちの住所」と言い換えて、理解したようだった。

妻の日本語レベルで日本人と話すのはかなり難しいと改めて思った。取引先の人は多少の理解があり、いわゆるフォリナートークで話してくれているのでまだ大丈夫なようだが、今回はさすがに厳しかった。

一般的な日本人は外国人が使う日本語に慣れていないことと、丁寧に話すことがわかりやすいことであると誤解してることが問題であると思う。

実習生は母国で日本語を勉強したのになぜわからないのだなどと言われるが、上記のような日本語はわからなくて当然だ。たとえ対応した日本人が「やさしい日本語」を使ったとしても、妻が教えた実習生が理解できるとも思えない。仮に日本人教師が関わったとしてもさほど変わらないと思う。

総務省のプロジェクトであるグローバルコミュニケーション計画2025(多言語翻訳技術)が社会的に実装されればある程度のことは言語を習得せずとも生活には困らなくなるであろう。

そうなれば実習生には仕事に関わる日本語を中心に指導すればいいことになるし、日本で生活する上で不安も軽減される。

日本語教育がICT化などで進化したり、日本語教師の能力が向上することも大切であるが、こういった技術の進歩も重要であることに異論を唱える人はいないだろう。

敬語を使った日本語は丁寧ではあるが、日本語学習にとっては残酷なほどに難しい。多言語翻訳技術が日本社会に実装されるまでは外国人と日本語を使って話す機会がある人は「やさしい日本語」などによる対応を身につけてもらわないといけない。

勝手なお願いばかりで恐縮ではある。

日本語教育に関わるものとしては今回書いたような事例をもとに実践的な練習を考えることが仕事であり、課題だ。

いいなと思ったら応援しよう!