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アイルランド子どもオンブズマン事務所(OCO)、中高生1,000人強を対象とするアンケートの結果を発表

 アイルランド子どもオンブズマン事務所は、8月4日、アイルランドの生活に関する子どもアンケートの結果をまとめた報告書を発表しました。

★ OCO: Survey says almost half of children are bullied and they don't feel listened to by adults - Tomorrow Starts with Us children's survey published by the Ombudsman for Children's Office
(調査によれば、約半数の子どもたちがいじめられており、大人から意見を聴かれていると感じていない――『明日は私たちとともに始まる』と題する子ども調査を子どもオンブズマン事務所が発表)
https://www.oco.ie/news/survey-says-almost-half-of-children-are-bullied-and-they-dont-feel-listened-to-by-adults-tomorrow-starts-with-us-childrens-survey-published-by-the-ombudsman-for-children/

『明日は私たちとともに始まる』Tomorrow Starts with Us)と題するこの報告書は、2004年に設立されたOCOの20周年を記念して、OCOによる今後の取り組みの参考とするために実施されたオンラインアンケートの結果をまとめたものです。アンケートには、中等学校に通う生徒(12~18歳)1,036人が回答しました。25個の質問に対する子どもたちの回答を整理した報告書ですが、次のように、子どもたちの生の声(英語・アイルランド語)も随所に散りばめられています。

 設問と回答がなかなか興味深いので、以下に概要を掲載します(なお、質問群の見出しは参照の便宜のため平野が付したものです)。

 アイルランドでは、2022年12月に策定された「キネオルタス(思いやり):いじめ行動計画」に基づく取り組みが進められていますが、依然としていじめが課題のひとつになっているようです。また、「意思決定への子ども・若者参加に関する国家戦略(2015~2020年)」(2015年)や「意思決定への子ども・若者参加行動計画(2024~2028年)」(2024年)などの政策文書に表れているように、子ども参加については世界的に見ても先進的な取り組みを進めてきた国ですが、それでも、意見を考慮されていると感じている子どもはまだまだ少数派に留まることがわかります。

 また、有料部分に載せているのでこちらで触れておきますが、「OCOが次の5年間に優先的に取り組むべき課題は何ですか?」という最後の設問(Q25(に対しては、「生徒へのプレッシャーを減らす」(47%)、「生徒への支援を強化する」(36%)、「アイルランドの生活水準を向上させる」(13%)の3つが多くの子どもたちから挙げられていました。やはり、アイルランドの子どもたちも学校でいろいろな悩みを抱えているのは変わらないようです。


【全般】

Q1 子どもたちが可能性を最大限に発揮できる国として、アイルランドをどのように評価しますか?
――71%が「とてもよい」「よい」と回答。

Q2 子どもにとってのアイルランドを一言で表してみてください。
――60%が肯定的な単語を挙げた一方、27%は否定的な単語を挙げた。

Q3 アイルランドの若者が16歳で投票できるべきだと思いますか?
――「はい」が39%、「いいえ」が50%。

Q4 現在利用できる公共交通機関の水準は、あなたの生活の質にどのように影響していますか?
――40%が肯定的な影響、20%が否定的な影響を与えていると回答。年齢層の高い子どものほうが否定的な影響を報告する割合が有意に高い。

【子どもの意見を聴くこと】

Q5 子どもに関する決定が行なわれるとき、若者の意見は政治家や政策立案者から考慮されていると思いますか?
――考慮されている(「常に」「しばしば」)と考えているのは7%に過ぎず、30%が「時々」、38%が「めったにない」、19%が「ぜんぜんない」と回答。

Q6 子どもに関する決定が行なわれるとき、若者の意見は学校で先生・補助教員などから考慮されていると思いますか?
――子どもの28%は教員・補助教員などから「常に」「しばしば」意見を聴かれていると感じているものの、36%は「めったにない」「ぜんぜんない」と回答(「時々」が34%)。

Q7 子どもに関する決定が行なわれるとき、若者の意見はそれ以外の〔Q5・Q6以外の〕大人から考慮されていると思いますか?
――考慮されていると考えているのは18%で、37%は「めったにない」と回答(「時々」が41%)。

【子ども・若者にとっての問題】

Q8 若者にとっての大きな問題は何ですか? 重要性の順に5つ選び、一番重要な問題を1つ選んでください。
――問題のトップ5は、生活費(44%)、メンタルヘルスサービス(40%)、将来の住居(33%)、教育(27%)、若者の就労機会(24%)だった。

Q9 アイルランドは、障害児や追加的ニーズのある子どもにとってアクセシブルだと思いますか?
――60%が「はい」、14%が「いいえ」と回答。

【学校・教育制度】

Q10 アイルランドの教育制度をどのように評価しますか?
――62%が「とてもよい」「よい」、32%が「とても悪い」「悪い」と回答。

Q11 将来の学校カリキュラムを考えたとき、次のことを増やした/減らしたほうがいいと思いますか?

  • 生徒の全般的ウェルビーイングへの着目

  • メンタルヘルスの問題と、問題を経験したときにどのような支援が利用できるか

  • 学校における職業訓練の選択肢数

  • 人権、子どもの権利およびこれらの権利の活用方法に関する教育

  • 学校で受講できる科目数

  • テクノロジーの活用

  • 気候変動と環境教育を重視する水準

  • 試験および試験結果の重視

  • SPHE〔社会・対人関係・健康教育〕と性教育

  • 宿題の量

――生徒たちは、生徒の全般的ウェルビーイングへの着目およびメンタルヘルスの問題を増やすべきだと強く感じている一方、試験および試験結果の重視や宿題の量は減らすべきだと感じている。なお、追加・削減すべき科目についての設問と回答は省略。

Q12 学校・教育制度の未来を考えたとき、次のことを増やした/減らしたほうがいいと思いますか?

  • 学校に関する決定を行なうときの生徒の関与

  • さまざまな学習スタイル

  • いじめに関する学校の対応

  • 共学の学校数

  • さまざまな背景の子どもがどのように支援され、学校に関与するか

  • トランジションイヤー〔高校1年目に設けられる学習自由度の高い期間〕の利用可能性

  • 高等教育への進学への着目

  • 学校における宗教の影響

――80%以上が、意思決定への生徒の関与、学習スタイルのいっそうの多様化の必要性に言及。いじめに関する学校の対応の強化の必要性も、69%が強調した。

Q13 アイルランドの教育制度やカリキュラムを世界一にするために、どのような改革を行なうべきだと思いますか?

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