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国連・社会権規約委員会、持続可能な開発と社会権に関する一般的討議を開催

 国連・社会権規約委員会が「持続可能な開発と経済的・社会的・文化的権利」に関する一般的意見の作成を進めており、その過程で子どもたちとの協議にも取り組んできたことは、以下の投稿で紹介済みです。

-〈国連・社会権規約委員会、持続可能な開発に関する一般的意見の作成を開始――子どもたちとも協議の予定〉(2021年12月29日)
-〈国連・社会権規約委員会、持続可能な開発についての一般的意見に関する子どもたちとの協議を4月に開催〉(2022年3月9日)

 今年に入り、委員会は2月24日にこのテーマに関する一般的討議を開催しました。

★ Committee on Economic, Social and Cultural Rights Holds Day of General Discussion on Sustainable Development and Economic, Social and Cultural Rights
https://www.ohchr.org/en/news/2023/02/committee-economic-social-and-cultural-rights-holds-day-general-discussion-sustainable

 一般的意見で子どもに焦点を当てることの重要性が2人の発言者(1人は国連・子どもの権利委員会の大谷美紀子委員長)から強調されていますので、プレスリリースに基づき、その発言要旨を訳出しておきます。

 ノッティンガム大学国際人権法教授で人権法センター共同ディレクターのイーファ・ノーラン(Aoife Nolan)は、次のように述べた。――子どもにとっての持続可能な開発の意味合いにかんがみれば、一般的意見において子どもたちおよび子どもの権利の問題に特段の注意が払われることはきわめて重要である。そのためには、文書全体で子どもの権利を統合・主流化することが必要になる。起草に携わる人々は、規約に基づく子どもたちの経済的・社会的・文化的権利が、必ずしも大人に関連する権利と同一ではないことを念頭に置かなければならない。「将来世代」とその権利に焦点を当てるだけでは十分ではなく、一般的意見では子どもたちとその権利を適正に考慮する必要がある。子どもたちは、初めて、委員会による一般的意見の起草プロセスに自分たちの考えやアイデアを包摂させる機会を得た。子どもたちの貢献は、教育・土地・住居への不平等なアクセス、社会経済的不平等、年齢差別といったいくつかの懸念領域を反映したものだった。子どもたちは、環境被害が自分たちの生活条件にいかに影響を及ぼしているかを強調するとともに、人種およびジェンダーに関連する差別や、意思決定に意味のある形で参加する子どもたちの力について議論した。

 子どもの権利委員会委員長の大谷美紀子は、一般的意見で子どもの権利が明確に位置づけられていること、また一般的意見の起草にあたって子どもたちとの幅広い協議が行なわれたことを歓迎するとともに、次のように述べた。――子どもの権利委員会は、「とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境」に関する委員会自身の一般的意見26号の起草にあたり、社会権規約委員会と緊密に連携している。この一般的意見に関する公的協議は2月15日に終了した。子どもの権利委員会は、同一般的意見を5月の会期に採択する予定である。一般的意見の目的としては、国際協力と世代間衡平を促進すること、環境法を向上させること、健康的な環境に対する子どもの権利を強化することなどがある。一般的意見草案の主要な概念のひとつに含まれている持続可能な開発は、世代間衡平を達成するためにきわめて重要である。子どもの権利委員会は持続可能な開発について詳しく議論する機会をこれまで持たなかったので、今回の議論は時宜を得たものである。
 子どもたちの63パーセントは、自分たちのほうが大人よりも気候変動の影響を受けていると考えている。将来世代に関する議論では、発達に対する権利を含む子どもの権利を考慮しなければならない。各国は、条約に基づく自国の義務を履行し、健康的な環境に対する権利を子どもたちに保障する必要がある。持続可能な開発に関する本委員会の議論は、持続可能な開発に関わる国家の義務に関して子どもの権利委員会の参考になるだろう。

 社会権規約委員会は、今回の一般的討議を踏まえて一般的意見の草案を作成し、来年の春までには採択したいと考えているようです。一般的意見が採択・公表されれば、子どもの権利がどのように取り上げられているか、また紹介したいと思います。

 なお子どもの権利委員会が作成中の一般的意見26号については、〈国連・子どもの権利委員会の一般的意見26号(とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境)第1次草案の概要と注目点〉など参照(マガジン〈子どもの権利と環境〉も参照)。


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平野裕二
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