読書の秋。私と「本」の付き合い方
【 松本美佳 (まつもと・みか)】
チャイルドケア研究所代表/家庭教育学会常任理事/家庭教育支援協会理事/八洲学園大学公開講座講師
アロマセラピー、ハーブ療法、フラワーエッセンスなど各種自然療法を学び、’97より夫の治療院でセラピストとして活動。さらに、充実したケアを伝えるために講師活動を始める。同時に、家庭教育を専門的に学び、親子・家族・家庭を幅広い観点で考え、家庭の中で自然療法と家庭教育を取り入れた「チャイルドケア」を体系づけ、現在、さまざまな形で普及活動を行っている。
コロナのおかげで読書量増加
コロナ生活でいろいろ我慢することがありました。「コロナのせいで」と思う存分にできないことに不平不満を口に出すこともあったと思います。その言葉のせいで、さらに思考がネガティブになり、心身を不自由にしているのかもしれません。
新型コロナウイルスの存在は、世界中に恐怖と不自由さを与えましたが、同時に世界中の人たちが、一斉に考え、生活を切り替え、新たな生活を始めるチャンスを与えてくれているのだと思います。ひとりが変わってもさほど影響はありませんが、世界中の人たちが同じ思いで、作り出していく新しい社会や生活になっていくのだと思えば、とても楽しみです。
「コロナのせいで」という言葉を使うよりも「コロナのおかげで」と考えるようにすることが賢明かもしれません。私もコロナのおかげで、良くなったことがあります。それは圧倒的に読書する時間が増えたことです。私はジャンルなど決めずにあらゆるものを読みます。小説、ハウツー本、ビジネス本や自己啓発本、実用書から児童書、絵本、マンガ、写真集まで幅広く何でも気になったものを読みます。今年に入り、絵本やマンガや写真集なども含めれば、その数は余裕で180~200冊にはなると思います。
コロナ生活で書店に出向いて紙の本を買う機会は減りましたが、その代わりに電子ブックに切り替え、スマホや電子書籍リーダーを使って読むことが増えました。書店で探さなくても、自宅にいながらにして、ポチっとすれば本を購入できて、すぐに読めてしまうので、これで俄然読書数が増えました。
今までは、外出時には文庫本を2冊、必ずカバンに入れて持ち歩いていましたが、今はスマホや電子書籍リーダーを持っていれば、何十冊何百冊も持ち歩けるのです。宝物を持ち歩いているようで、ちょっとうれしくなります。それでもやっぱり、紙のページをめくる「触感」が恋しくなり、電子ブックで持っている本を、紙本でも買ったりもします。無駄と思われるかもしれませんが、本の紙質や重さ、質感、装丁、初版モノなどにこだわったりして、本そのものの【存在】が好きなんです。これは編集者であった片鱗を示しているのかもしれません。
最近では、プロのナレーターが朗読した本を聴く、音読式の読書も始めました。今までは読書といえば、自分の視覚を使うものでしたが、聴覚を使った読書だと、目を使うこともなく、疲れないうえ、ちょっとした雑用をしながらできます。人の声の温かさも感じます。子どもへの読み聞かせなどは身近ですが、大人の聴く読書もまた良いものです。
本が教えてくれたこと
私は国語の専門家でもなく、それに対する学が深いわけでもありませんが、肌感覚的に「言葉」が心と体にどのように影響するのかを子どもの時から繊細に感じ取っていました。早くに亡くなった父はとても言葉をきれいに話す人で、母よりもずっと女性的で優しい言葉を使ったり、ときには父として厳格ある言葉も使っていました。一人称も「僕」か「私」で、穏やかで優しく話をする人でした。父の放つ言葉の力は、亡くなって40年以上も経つのにいまだその影響を受けています。
私たちは会話の中で無意識に言葉の意味だけではなく、放たれた言葉の印象や影響を受けています。特に子どもは、言葉の意味そのものよりも、肌感覚で言葉の力を感じています。悪い言葉は当然良い力は持ちません。子育てにおいて、日々使う言葉が人格や感性を築くうえで影響していくということです。
栄養バランスの良い食事だけではなく、心身の成長に良い「言葉の栄養」も必要になるのです。チャイルドケアでは、言葉は「ケア」としています。そのケアを深めるためには「言葉」を知ることです。簡単にいえば「語彙力」と「表現力」を高めることです。文章力とか国語的な学ではありません。それらを身につけるためにはまず「読書」だと思います。
私は決して小学生の頃から読書が好きだったわけではありません。アウトドア派であったので、夏休みの宿題の読書感想文がいつも最後に残ってしまい、時間がないので、とにかく一番薄い本を選ぶほどでした。そんな私が感想文を書くと点数が良かったり、何か賞を取ることもあって、ろくに読んでもいない本に賞をいただくと、かえって罪悪感をもつことになり、そのあとに必死に読み直すというありさまでした。
そのくらい読書が苦手でしたが、作文ができていたのですから、斜め読みでも何かしら内容を理解していたのか、言葉は感じていたのでしょう。私の読書に変化があったのは思春期の頃です。思春期真っただ中で人間関係や学校生活にも楽しみが見いだせなく、混沌としていて、孤独だった時期がありました(思春期とはそういうものですが)。
そのときに様々な本を読んで、気持ちが救われたことが多々ありました。本を通して疑似体験をしたり、新たな気付きや、違った視点でとらえることができるようになったり、活字を読むことで瞬時に現実逃避でき、気持ちのムラに落ち着きが出てきたように思います。私にとって、本は友人であり、先輩であり、師となっていました。
思春期のアイデンティティを形成するときに、本を読んでいたことで思考が広がり、自分を否定せずに自分らしい価値観を築くことができ、今の思考や価値観のベースとなり、チャイルドケアができたのだと思います。チャイルドケアをお伝えするときにマニュアルのようなハウツーにしなかったのは、チャイルドケアの一つの世界観を表現したかったので、物語を伝えるような表現をあえてしました。この言葉の表現があったからこそ、20年以上続いている講座になったのだと思います。
まずは活字の世界を楽しむこと
「読書」が苦手という人は、おそらく真面目な人だと思います。難しい本を読まなくてはいけないと思っているのではないでしょうか。だとしたら、学生の頃のトラウマかもしれませんね。本の種類は何でも構いません。文字が苦手な人は絵本でも漫画でも良いのです。
表紙が好きとか、タイトルが気になるというところから選んでもOKです。そして斜め読みでも、途中で止めてしまっても良いのです。最初から真面目に最後まで1ページ残らず読まなくてはいけないなどと思う必要はありません。某大学のある有名な教授も、先日テレビで実際に読んでいる本は6割もないと言っていました。ほとんどは買って終わっていると。私も買っただけで読まず仕舞いの本が積みあがっています。読んでいなくても、本をペラペラめくるだけでも、実は無意識に言葉が頭に入っているんです。だから斜め読みでもいいので、ページを何度もめくってみることです。
また、本との相性があります。だから相性が合わなければ最後まで読まないし、相性があえば一気に読み終えることもあります。もっと読書をカジュアルに楽しまれてください。好きなお菓子をついばむように、数ページでもいいので、まずは活字慣れをしましょう。
私は今、母の介護をしていて、正直言えば、いろいろストレスも溜まっています。普通は「介護」の本を読んで、知識を入れることで、ストレスが解消できると思うかもしれませんが、私の場合、知識は入れません。知識を入れて役に立たないとショックを受けるからです。逆に現実逃避して全く違うものを読みます。例えば勧善懲悪的な本。本と一緒に自分の中の悪を制裁しているので、読んだ後はすっきり。イライラも爽快な気持ちになります。そしてまた新たに頑張ろうと思えるのです。何でもノウハウで処理できるわけではありませんから、知識よりも心の持ち方を切り変える方がずっと有効的です。映画を観に行ったり、小旅行できれば気分も変わりますが、忙しい日常で時間がなくても、数分の読書で現実逃避して、気持ちを切り替えられることができます。読書はケアになりますね。
好きな言葉、文節はメモをとる
読書しながら、この言葉好きだな、この文節心に沁みるなと思ったら、ぜひメモをとるようにしてみましょう。気になった言葉は、何かしら心の栄養になっているはずです。そして、その言葉を意識するようになると、日ごろの会話や表現にも自然に使えるようになります。そうやって語彙力をつけていくことです。他愛ない会話の中で、だらだらと言葉をつなげるよりも、気の利いた言葉を一節伝える方が心に響きます。それが言葉の力です。
秋も深まってきました。コロナ生活もまだ不安はありますが、少しずつ落ち着きを取り戻しています。新しいスタイルになっていくこれからの生活や生き方に、本は多くの教えとヒントを与えてくれます。本を通して見つけてみましょう。ぜひ、良い本に出会うご縁を作ってください。
以前、チャイルドケアを学んでいる方同士で、一つの本を読み合って感想をシェアする「チャイルドケア図書部」を作ったことがありましたが、また復活させて、本の世界観を共有したいと思います。ひとりで読書を楽しむだけではなく、作品を共有し、様々な思いをシェアすることは、勉強にもなります。「チャイルドケア図書部」復活しましたら、ぜひ、入部をお待ちしています。
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