素敵なあの人から「みる・きく」を学ぶ /【江田英里香先生インタビュー後編】自分軸をもって、夢も仕事も家庭もあきらめずに楽しむ
※本投稿はオンラインサロン<ChildcareHOUSE>内の掲載記事を、一般公開用に縮小したダイジェスト版です。
【江田英里香先生インタビュー前編はこちら】
神戸学院大学現代社会学部 准教授 江田 英里香先生
<プロフィール>
江田英里香(えだ えりか)
大学時代にオーストラリアで日本語教育を行うプログラム[1]にインターン参加したことをきかっけに、その後マレーシア、タイなど一人旅にハマる。ベトナムを訪れた時に、地方の子どもたちと都市部の子どもたちの格差に衝撃と疑問を持ち、国際教育開発の研究を始めるきっかけとなった。中学校英語教師になることを考えていたが、恩師からの誘いを受け、神戸大学院国際協力研究科で途上国の教育開発の研究を続ける。
研究の傍ら、カンボジアでの国際協力活動にも参加し、カンボジアでの移動図書館を運営するNGO[2]の立ち上げに関わる。運営が軌道に乗った現在は現地のカンボジア人に引き継ぎ、後方支援をしながら村に図書館を建設。現地の子どもたちの要望で、英語、日本語、コンピューター、サッカーなどの教室を開くなど、学生を引き連れて精力的に活動支援を行っている。
プライベートでは高校教諭を務める夫が育児休業をとるなど夫婦で協力しながら、育児、仕事、研究、地域活動を続ける。現在、山梨で暮らす夫とは離れた生活を送っているが、4人の子どもたちと笑顔の絶えない生活を満喫している。
神戸学院大学現代社会学部 准教授
日本家庭教育学会 常任理事
研究著書「カンボジア学校運営における住民参加」(ミネルヴァ書房、2018年)
―――― 現在は、ご主人は単身で山梨にいらして、4人のお子さんを先生がお一人で育てていらっしゃる状態ですね。 下のお子さんが年中さんになっているとはいえ、まだまだ子育ては大変な時期ですよね。上のお子さんも思春期に入る頃ですし、今までとはまた違ったご苦労もあると思います。子育てが大変なときはどうされているのですか?
江田:一人で頑張るには限界はあります。人の助けを借りたり、工夫したりすることは必要です。気の置けるママ友さんの助けを借りたりしています。私の場合、一般的な子どもを通じての当たり障りのない関係性のママ友とは違って、「子どもの友達ならば、私もママと友達になる」というスタンスでやっているので、友達と遊ぶように一緒に食事したり、遊んだりしています。
子どもたちにも協力してもらって何とかやっています。うちはお小遣い制を設けてなくて、何かお手伝いしたときやできなかったことができるようになったりするとポイントを得る制度、名付けて「デキタ」を導入してお小遣いにしています。
この工夫が功を奏して、できなかったことも、できるようになるし、積極的に行動してくれます。家事もずいぶんできるようになりました。子どもたちはママが喜んでくれることがうれしいと言ってくれるので、本当に助かっています。
私自身「うっかり八平」並みにうっかりすることが多く、その分子どもがしっかりしてきますね。忘れ物しないようにしようとか、子どもたちがそれぞれ、気をつけてくれますね(笑) 長男は洗い物してくれたり、残り物をラップして冷蔵庫に入れてくれたり、私が酔っぱらうと介抱してくれたり(笑) 至らないところをサポートしてくれています。
―――― 周りの方に助けられていらっしゃるのですね。
江田:おそらく私の子育てを見ていて、大変だと思ってくれているのだと思います(笑)。本当に普段はしっちゃかめっちゃかです。食事だけはしっかり作ろうと思っていても、正直な話、忙しいとそれどころではなくなってしまい、毎日丼飯ということも少なくありません。でもいい助っ人ができたんです。
車で30分くらいのところに元板前の一人暮らしの叔父が住んでいて、昨年それまでやっていた仕事を引退したんです。時間もあることだし、遊びに来て!と誘って来てもらいました。最初はお客さん扱いで私が料理を出したりしていましたが、よく考えたら叔父の方が料理ができるわけですよね。元プロですから。
そこで、今では週末に来てもらい料理をしてもらっています。叔父も一人暮らしですから、子どもたちのにぎやかな状態も楽しいらしく。これは、双方にとって喜ばしい、つまりWIN‐WINだって思って(笑)。 おかげさまで子どもたちもすっかり叔父に慣れました。叔父のおかげで、家事も楽になり、美味しい料理も楽しめて、もう最高です(笑) 忙しい時は無理を言って一週間くらいいてもらっています。子どもにとっても異世代交流ができて、お互いの良い刺激になっていると思います。
私の場合、海外に行った時にたくさんの人に助けられてきているので、そういう成功体験が大きいこともあり、人に助けてもらうことに抵抗がないのかもしれません。幸いなことに人に騙されたり、ひどいことをされた経験がないので、人に対する不信感があまりありません。助けてもらえることに素直に感謝して受け取れるし、私も見返りなしに助けたいと思います。ボランティアを授業で学生に伝えていることですが、「ペイフォアード」という言葉があります。
人から受けた親切を、また別の人への新しい親切でつないでいくことです。親切にしてもらった人に対してお返しすることもありますが、自分がされた思いやり、親切を違った形でもいいので、他の誰かに返していくことも大切ですね。だから私は自分が助けてもらったことを、いろいろな形で返していければと思っています。
―――― 今は、「恩送り」「恩渡し」とも言われていますね。そういう思いやりが循環していくことで、良い社会にもなりますね。先生の場合にも、きっと誰かにお渡しした恩が、困難を目の当たりにしていても、それを切りに抜けるチャンスとして、戻られている気がします。
江田:私、前世はきっと徳をたくさん積んだ素晴らしい人だったんだと思います。または、素晴らしい守護霊(神?)たちが一生懸命に私を助けようとしてくれているのだと本気で思っています(笑)
子育ても自分が欲しくて授かった子たちですから、一緒にいることはとても幸せですし、好きな研究や学生たちと一緒にいることもとても楽しいです。 もちろん忙しかったり、様々なハプニングが尽きませんが、やっぱり「何とかなる神様」がいるから大丈夫って思っています。
生きる力は、不自由さ、不便さを乗り越えていくこと
―――― 先生はお子さんにどのように育ってほしいと思っていますか?
江田:私は、子どもたちには、生きる力を持ってほしいと思っています。現代人は、スマホなど便利なツールをもつのが当たり前になっていますが、便利になるというのは、不便さとか、不自由さを日常的に経験する機会がないということです。
本当は、不便さや不自由の中で人は技術やスキルをつけて生きる術を学んできたけと思うんですね。もちろんその結果スマホもできたわけですけど。でも不便さという経験があって得られたことと、途中経過を経験せずに得られたこととは違います。
現代人として、デバイスに囲まれて生きるのではなく、社会の中で、自然の中で人間として生きることを考えた時に、不自由さと不便さを経験していないというのは、ダメージが大きいと思うんですね。
学生に、例えばスマホを無くなったときに、知り合いにどのように連絡を取ればいいのかとかどうしようかとかと尋ねても、考えないんです。考えないというか考えられないんです。それはいつも持っているもので、絶対に手放さないものだから(笑)
不自由さがあることで、五感とか第六感も育っていくと思うんです。便利なものがないと、依存しないから自分で考えて決断しないとなりません。でも、スマホを持っていると情報を多く持ってしまい、それを頼りにしてしまうんですね。人に頼るものに頼る、デバイスに頼るという状況が今はあるように思います。
―――― 現代人は自分で考えることが減っていますよね。人の答えを自分の答えのように感じてしまうというか。
江田:学生の就職相談のときに「親がいっているからいいかな」とか「まぁこれでいいかな」とかそういう言い方をするんですね。だから「ちょっと待って、自分でちゃんと考えて決断しなさい」と話すんです。自分で決めたことには、後悔しないですよね。
私、自分でしてきたことに後悔は一切してないんです。何かの選択のときに自分で決めてますから。自分が決めたことは、例え間違っていたとしてもしょうがないと、あきらめられますが、人や情報を頼りにしてしまうと、間違ってたら、その人や情報のせいにしてしまいます。結果、自分は楽になりますが、常に人や情報に依存して生きることになります。
親が言ったとおりに生きたり、またそれが自分と合っていなかった場合、親のせいにして生きていくわけですよ。それは自分の人生を歩んでいるとは言えませんよね。
自分で決断する、自分で選択するということが大切だと常日頃学生には伝えています。学生たちは基本的に受け身に慣れてしまっているので、選択ができないんですね。それと、何かをやるとなった時に、自発的に工夫をしたり試行錯誤して「よりよくやる」というよりも受け身的に「とりあえずやった」とか「こなす」ことを目指すんですよね。
それは違うなと思っています。社会では、自分で選択するということが求められます。就職先も選択しなくてはならないし、その後様々なキャリアを積む段階でも選択を余儀なくされます。プライベートでも人生の伴侶を選択する機会もあるでしょう。社会では常に大きな選択をしなくてはいけなくなります。
だから、学生のうちに自分で決断をすること、自分で選択をするといった「自発性」を身に付けてもらいたいと思っていますが、なかなか伝わらない(笑)
―――― それは家庭に問題があるのでしょうか?
江田:いえ学校教育だと思います。 日本の学校教育は、受け身ですから言われたこと学んだことをこなしていれば何とかなります。しかし、知恵や工夫を用いて自分で何かに取り組むという習慣を身に付けないと「生きる力」や「選択する力」といった力や感性は磨かれません。
社会に出て、生きることを考えた時に、そういった力や感性は絶対に必要なわけです。でもそういう習慣ができていないので、いきなり社会に出て、自分で考えて何かに取り組むことを求められても、「完成を研ぎ澄ませろ」と言われても、できないと思います
―――― そうですね。親世代はどっぷり受け身できていますから、いつのまにか長いものに巻かれてると安心したり、多数決の多い方に共感したり、強いものに従うようなところはありますよね。 私もそんな流れに違和感をもって、子育てに五感を取り入れてもらうために、チャイルドケアを作りました。
ただし、やはり五感を感じるというよりは、ノウハウが先行してしまうことも多く、自分の五感を通して、学習していればおそらくそんな悩みは出ないだろうと思うのですが、お母さんたちやチャイルドケアの受講生さんからは「自信がない」という言葉を耳にします。 真面目で一生懸命頑張っているのに辿り着くところに「自信がない」というのは、なぜだろうと思っていました。
受け身で流されているので、決断したり、選択してこなかったのかもしれませんね。「失敗することが怖い」とも声も多くあります。だから、それこそ何となくこなすことだけで終わってしまって、失敗を恐れて、えいやっていう、決断や選択ができなくなって、自分の可能性さえも狭めてしまっているのでしょう。
江田:学校文化に問題もありますよね。学校という特殊な文化がまだ保守的ですね。新しいものを次々に取り入れていくというよりは、昔のものを使い、必要があれば取り入れてみて、うまくいくなら徐々に考えましょうと先延ばしになることが多いのです。それだと社会の流れより遅れますよね。 大学の場合は少し違ってくると思いますが。
昔からやってきたことを着実にやっていらっしゃる学者タイプの先生もいれば、実務経験をされてきた先生は新しいことをどんどん取り入れていますね。学生と企業をつないだり、私も海外やNPOとつなぐ活動もしていますが。公立の小・中学校の学校文化はまだまだ保守的で難しいと感じています。
―――― でも、いわゆるコロナ生活になり、学校教育が大きく変わり始めたので、これから否応なしに変わっていくようにも思いますね。 そこに期待したいですね。
自分の人生のこれからのこと
江田:私は子どもと一緒に何かをすることが好きなんです。子どもがいたからこそできたこともあります。今習っている空手は(護身術になればと子どもにけしかけ)長女が始めたのですが、人見知りの激しい次女は「一人じゃ嫌」と言って渋ったので、私も一緒にエクササイズ目的で始めました。幼稚園児や小学生と一緒に空手を教えてもらう大人は、見守っている子どもたちの保護者からすればいささか滑稽だったかもしれません。習い始めて2年以上たちますが、長女や次女よりも本気モードで毎回楽しみで仕方がありません。
また、最近は、神戸市北区で里山再生の活動をするNPO団体[1]と出会って、週末に農作業の手伝いをしたり、竹林整備の活動に子どもたちと参加しています。子どもたちにとっては自然の中で遊べる良い環境です。
―――― 親と子が分離せずに一緒に楽しめる環境っていいですね。 今は子どもが大人に合わせたり、大人が子どもに合わせたりしているので、遊んでいると思っていても互いにストレスが溜まるのかもしれませんね。親子で一緒に経験していくことってとてもいいことですよね。
江田:私は、お母さんになったから、親になったらといって、子どもを育てるために、子どものために、子どもを何とかするだけの子どもに依存する親子関係は望んでいません。子どもは大切ですし、子どもと一緒に親として成長したいと思っていますが、同時に、個としての私としても成長していきたいです。
――――現在、ご主人と別居された生活をされていますが、今後どのようにお考えになっているのですか?
江田:夫が現在55歳なので、公務員の定年が60歳とするとあと5年間は今の生活が続くと思います。夫が育児休業から復帰し単身で山梨に戻るときに今後について話し合いをしました。
夫は、子どもも私も皆で山梨に戻って生活をすることを望みましたが、1歳の末っ子が成人するまでの子育てにかかる費用と私が今の仕事を手放してあてもなく山梨にいくことで得られなくなる収入と夫の間近かに迫る定年後の収入減を考えると山梨に戻ることは良い形ではないと考えました。
子どもを育てる場合においても私が仕事をしていたほうがいいし、自立していた方が良いと思っています。お互い自立した立場で精神的につながれている関係が私には合っていると思います。
実は、今、マンションに住んでいるんです。とても便利なところではあるんですが、土や木とかないんですね。だから自然のある所に帰りたいと思っています。今は少し離れた田舎の古民家を探しています。
良いところが見つかれば、そこを週末DIYしながら、皆が集えるような場所を作って、野菜を育てたりしながら自然を感じて丁寧な暮らしをしたいと考えています。今の仕事は子どもが成人しても務めることができるので、私は神戸と田舎とを行き来するデュアルライフを夢見ています。
―――― 自然の中で暮らすというのは、不便で不自由ですが、今までの生きる力の経験は生かされてきますね。
江田:私は、最終的な女性像として思っているが母方の祖母です。 本当に穏やかでいつもにこにこしていて、家族のお墓のそばにある畑で朝から晩までずっと野菜や果物を育てたりして過ごしていました。
育てた野菜や果物は売るためのものではなく、自分や子どもや孫たちが食べるためのもので、私たちが祖母のところに行くとこれでもかというくらい野菜や果物を持たせてくれました(笑)。
祖母にはずいぶん甘えていましたが、怒られたことは一度もなく、すべてを受け入れてくれる祖母でした。祖父は母が10代のころに亡くなったそうですが、それまで祖母は祖父にいろいろ苦労させられたと母や叔父から聞きました。戦前に2人の子どもを亡くし、戦後はシングルマザーで3人の子どもを育てあげ、90歳過ぎまで一人で厳かに暮らしていました。
5年ほど前に他界しましたが、亡くなる前には周りの人たちに感謝の気持ちを伝えていたと聞きました。頑固ですが、とても芯が強く、それでいて優しくて、謙虚で穏やかな祖母が、私のあこがれなんです。だから70代、80代になったら、そうなりたいなと思っています。
―――― おばあさまのお話を伺うと、先生の今までのお話を伺うキャリアのある女性像とは、対極にあるかんじですね。でも、どちらも自分軸をもち、自分の意思で生きているという感じを受けます。女性が幸せになる生き方というのは、人ぞれぞれだと思います。
今日のお話を伺い、大切なのは自分で選択する、自分で覚悟することというのがすべてに感じられました。 そうすることで困難なことにも向き合い、あきらめずに考え尽くすまで考えることで、希望という光が見えてくるのだと思いました。
情報がたくさんあり、その中で解決する術を見つけようとすることが増えましたが、自分の中に答えを出していく生き方こそ、後悔せずに自分に自信をもつことができますね。
まだまだ先生とのお話は尽きませんが、今日の先生のお話は、ワーキングママや、自分の生き方に迷いがある方の背中を押すことができたのではないかと思います。 楽しい元気になるお話をありがとうございました。
皆さんは、自分の人生をしっかり考えていますか? 人に言われたから、誰かがやっているからではなく、自分が何をしたいのか、何ができるのか、何をやるべきなのかをまず考えてみることです。そして、それは自分にとって大好きで、楽しくて、うれしくて、頑張れるものであること。それを見つけることができるだけでも、何か一つ自分の中でブレない強さになっていくのだと思います。
インタビュー中、江田先生は、ずっと笑顔を絶やさずにユーモアを交えてお話は、ひとつも苦労話にはならず、すべて覚悟と責任と行動力で乗り切られた爽快な武勇伝を聞いているようでした。いつか江田先生から直接お話が伺えるイベントも開催したいと思います。
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