初対面の車椅子ユーザーとディスニーに行ったら人生で一番面白かった話。
10代から20代にかけて、頸髄損傷で車椅子ユーザーの彼氏がいた。
彼は自身の手を上にあげられるが、肘は曲げられるが、手首や指先は動かない。
彼が薬物をやる度に、抵抗できない彼の「手」から薬物を泣きながら奪い取り捨てていた。
"どうしてこんな事するの?!"と泣き叫ぶ私に彼はポツリと
『愛理に俺の気持ちはわからない』と言った。
私は本当に彼の気持ちなんてわかっていなかった。解っていなかったんだ。
*
人生とは不思議なものだ。
2週間前まで顔も名前も知らなかった人と仲睦まじく、ディスニーランドで3Dメガネをかけてぼーっとショーを見ているときに、ふとそんなことを思った。
一般社団法人tsunagariイベント事業部 AOiプロジェクト
100人でディスニーへ、のプロジェクトの医療従事者枠として参加した。
大規模なプロジェクトで、朝10時のディスニーリゾートのゲート前は多くの車椅子ユーザーや医療職のメンバーでわんさかと賑わっていた。
事前説明会でちらっと挨拶したが、私のチームのほとんどは初対面の人同士だった。なんて呼んだらいいですか?と会話しながらゲートまで車椅子を押す。不思議な感覚だった。
何に乗れるのか、わからない
下調べもそこそこに、まず「何に乗れるかわからない」というところから始まった。私たちのチームは
・プッシュアップが可能な男性車椅子ユーザー2名
・介助歩行が可能な女性車椅子ユーザー1名
・独歩が可能な下肢麻痺の子1名
・看護師
・PT学生
・カメラマン
・かめきち
で構成されていた。(文字に起こすと味気ないんだけど、めちゃくちゃ楽しく愛に溢れたメンバーだった。最初っから最後まで)
チームの条件として「車椅子が横付けできる環境」があればいける。
が「車椅子を離れたところに置かなければいけない」が条件だと、厳しいため乗れるアトラクションにはかなり制限があった。
HPやネットの情報で「お、これいけそう」と思ったものが、アトラクションの眼の前でクルーに話を聞いていると、最後の最後で「緊急の際、ご自分の足で歩いて避難していただくか、介助者の方に抱えていただいて避難していただきます。」と言われて玉砕する、というパターンが多かった。
例えば車椅子ユーザーに対して介助者が2名いたら成人男性を全介助で移動できるのだろうが、わたしたちのメンバーはそれが難しく、事あるごとに乗れないものが多かった。
「乗りたいものに乗る」というよりも「乗れるものから探す」というなんとも効率のいい方法で、私達はじっとりと舞浜の潮風とポップコーンの匂いをかぎながら動いていった。
DASは改良の余地あり?
【ディスアビリティアクセスサービス】=DAS
という長時間列に並ぶことが困難な場合にグループの方全員が待ち時間を列以外の場所で待機することができるサービスがある。私のフォロワーさんもDASのシステムを気にしていて、実際使ってみた率直な感想を書いてみる。
わたしたちは入場のときのちょっとしたトラブルがあって最初のDASの登録に手間取ってしまったのだが、他のグループの話も聞いてみてまとめると
ディズニーランドのディスアビリティのサービスは、アメリカ合衆国の連邦法である「アメリカ合衆国における公共交通機関へのアクセシビリティ法」(ADA)に基づいているらしい。仕様が変わったりなどもあるが、時代の変化やインクルーシブ社会への適応に対して本当に頑張っている企業だと思う。
当事者の方が言っていた印象的なこと。
「変わらないのは方法がわからないから。私たち障がい者はこれができない、これが不便ということを言うだけじゃなくてこれをこういう風にしてください、そうしたらできます。というような意見を伝え続けることが大切。」と話していた。
フォロワーさんからの質問をリサーチ
オリエンタルランドはやっぱりすごかった。
事前にInstagramでフォロワーさんから「見てきてほしいこと」のアンケートを取り、たくさんの質問を頂いた。
がダントツで多かった。
せっせかせっせか現地で確認して、帰宅してからも色々調べていて、
行き着いたのが
「インフォメーションブック」という最強の案内図。
まじで最強だった。
事前にこれをダウンロードしていけばある程度の準備はできるのでは無いかと思う。だいたいのことが載っている。載りすぎている。さすがや。
⇣ここからダウンロードできます
この嚥下食対応レストランもインフォメーションブックに細かく掲載されている。
体調が悪くなった方は、救護室を使用できる。救護室は一箇所だけであるが、他にベッドが用意されているところもあるとのこと。
吸引や吸入、注入もここでしたよ!というご連絡もいただきました。
「支援者」という呪い。
今回のプロジェクトの参加を通して、
「たのしかったー!」
「勉強になったー!」
という感情よりもまず先に脳天をつき動かした感情。それは
「私、呪われている」
という気持ちだった。
このAOIのプロジェクトは、ディズニーのチケットを実費で購入し、プラスして参加費が5000円かかる。
このプロジェクトのお誘いを大川そうくんという、車椅子美容師さんに頂いたとき
「バイト代とか出るのかな?」
と一番最初に思った。(まじクズ思考だけど、ここで晒すから私のこの自戒を供養してください)
いや、別にお金がほしいとかではなくて、
「自分が医療職として当事者を手伝う」名目で行くのかと思った。
この時点で私は「支援者レッテル」を自分の体にべとべとに貼って、
剥がしたつもりでいるものをまた自分にくっつけは剥がしてくっつけは剥がしてを繰り返しているんだとようやく自覚した。
私たち医療職から、セラピスト界隈から抜けきれない、拭いきれない「シテアゲテル」という呪いのホスピタリティ。
私はこのシテアゲテル理論がゲロミソ嫌いである。(言い方)
なぜかというとシテアゲテル理論の主語は結局のところ自分であり、結局のところシテアゲテル自分が大好きなのだ。マスターベーションなのだ。
ただ、瞬時に私が「人を手伝うという理由で自分が必要とされるのであれば参加したい」と思ったということは私はまだまだこのマスターベーションから抜けられない。
そう思っていた。
私たちの8時間は、愛に溢れていた。
私たちのグループ、みんなが楽しんでいたと思う。
いや、ごめん。マジでわからない。なんでかっていうと
私はすごくすごくすごく楽しくて、正直みんながどう思ってるかってあんまり考えなかった。
どんな場面でもまず「この人がどう思うか」「この人がいかに心地よく過ごせるか」「この場面の空気はどう良くするか」を先に考えてしまう、かめきちの性格。
ところがどっこい。
この8時間私はみんなの顔色なんて特に気にせず、
飛び跳ねたいときに飛び跳ね、笑いたいときに笑い、行きたいところへ行き、しゃべりたいことを喋り、撮りたい写真を撮った。
ほとんどが初対面の人たちだったが、とてもとても居心地がよかった。帰り、切なくって夜寝るまで胸がきゅうきゅうした。
「してあげた」も「してもらった」も思わない、ただただ7人から愛をもらった時間だった。ただただ私もみんなを愛しいと思った時間だった。
その夜、寝る前に私は呪いからふっと開放された気がする。
一般社団法人tsunagari AOiプロジェクトの代表の吾妻くんの言葉がこだました。
「社会って楽しくなければ、面白くなければ変わらないんですよ。」
Epilogue メンバー紹介
もうひとりの女の子、Nちゃんとも色んなお話ができた。自分のことを話してもらえるってなんでこんなにうれしいんだろう。ありがとう。
*
❏Instagramでは毎日有益な情報を発信しています
(今回たくさんのフォロワー様に情報提供して頂けました。ハイライトに載せていますので参考になりましたら幸いです。)
❏スッカスカのYouTube