CHILAN|独立準備の裏側.02.5 〜賃貸と売買の比較編〜
こんにちは、どうも。
広島にあるモダンベトナミーズと自然派ワインのお店、CHILANのオーナーシェフをしているチラン(@fantoddycat)です。
noteは普段考えていることをつらつら殴り書きかつ思考整理している場所なので、お店の情報はコチラから。
今回のテーマは「独立」。
最近まわりで独立を考えてると相談を受ける機会があり、記憶が風化する前に自分の経験をケーススタディとしてメモ的に残しておこうかと思います。独立といってもいろんなステップがあるので、シリーズものになります。
▼前回はコチラ
生の情報を探しているという方の一助になれば嬉しいです。
賃貸 VS 売買
この回は前回のちょい足し的な記事で、テナントの賃貸と物件取得のメリットとデメリットについて比較していきたいなと思います。というのも東京生まれ東京育ち(持ち家なし資産なし)で賃貸暮らしの視点しか持ち合わせてなかった自分が、広島にて物件を購入して飲食店を開業するに至った過程でいろんな発見があったので。
もちろんそれぞれの状況(独立したい場所・資金力・嗜好など)によってどちらの方がいいかは変わりますが、何事も多角的に引き出しを持っているとどん詰まったときの助けになるかもしれません。
今回は前提として
・都市でなく地方
・50平米未満の店舗
・取得は住宅に限る(商業テナント除外)
の独立開業パターンです。
◎賃貸メリット
・短期的目線でもいける
長期的でなく2〜3年というお試しも可能。仮に失敗しても場所を変えてやることが比較的容易。
・基礎のメンテナンスは大家負担
マンションの管理費と同じ考え方。だいぶラクになるので大きなメリット。
◎賃貸デメリット
・商業テナントは賃料が高い
対住宅賃料の話ですが。高い=資本力と比例した予算内の広さで売上あげるために、席数・収納・オペレーション効率などの面で制限がかかってくることがある。
・一生続く掛け捨ての支払い
払い切るという概念もなければ、資産が残るという概念もありません。
・自由度は大家との人間関係による
営業形態やどこまで内装外装設備をイジれるかなどは大家さん次第。1対1なので人間関係構築できないとかなりのストレスになる。
・家賃と店舗のダブルペイになる
ざっくり家賃10万+テナント20〜30万の負担。コロナ禍でこれに苦しんだ方は大勢いるのではないでしょうか?家族がいると広さに比例して住宅賃貸も上がる。
◎売買メリット
・住宅なので賃料が安い
対商業物件です。賃料安い=ある程度広い物件を取得できるので、店舗設計の自由度が増す。
・低金利で簡単にローンが組める
事業をする際、公庫などからお金を借りることが一般的ですが大量のペーパーワークと何回も面接があったりします。対して住宅取得には住宅ローンが使えるので、公庫よりも低金利で簡単に、しかも信用次第で多額のお金を借りることができます。
・そのうち自分の資産に
払い切れば資産になるし、人に貸すことも可能。資産価値としてどの程度のものなのかは要把握。
・賃料ダブルペイから解放される
住宅なので住めちゃいます。安い賃料で住めて商売もできるので一石二鳥。このメリットは凄まじく大きいです。売れてるのかよく分からないけど閉店もしない商店街の乾物屋さんのカラクリはこれ。固定費が極端に低い。
・自由度1000%
自分のものなので、すべての決定権は自分に。
◎売買デメリット
・長期的目線が必要
仮に失敗してもすぐに場所を変えられない。一定期間根付く覚悟は必要。
・固定資産税がかかる
所持している限り一生かかる。が、賃料ダブルペイするよりは安いことが多い。
・基礎のメンテナンスは自分負担
持ち家のメンテナンスと同じ考え方。だいぶめんどくさい。。
・電圧などが限られる場合も
テナント向けでないのと最小限の設備を拡張できない可能性があるので要注意。
・まわりの住民に配慮する必要がある
まぁこれはテナントでもそうですが、住宅地の場合は特に気を付けるポイント。
考察
飲食やるときに賃貸を考える人が圧倒的多数だと思います。しかしそれが当たり前すぎて、商業テナントが住宅より2〜3倍賃料が高いという初歩的なことを忘れがちです。(私がそうでした。)商業施設の場合さらに売上の何%かマージンで持ってかれます。
日本の飲食業界で謳われてきた「30:30:20:10:10理論(原価:人件費:経費:家賃:利益の理想比率)」は、断言できますが、もう機能しません。人口が減り、食材を輸入に頼る日本では人件費も原価も経費も上がる一方だからです。なのでいかに固定費を下げられるかは、事業計画する段階で最も考えるべきポイントのひとつだと思います。
ここでよく原価と人件費を下げればいいと勘違いする人がいますが、それは地雷なので本当にやめた方がいいです。というかやめてください。関わる人全員を不幸にする選択です。
考えるべきは経費や家賃です。機材に初期投資した方が長期的には経費削減になります。そして物件賃貸をずっと掛け捨てにするか、購入してしまい自分の資産とするか。住宅における賃貸か持ち家かの議論は永らくされていますが、それは店舗でも同じことが言えます。
個人的に賃貸と売買にかかる初期費用はそんなに差がない印象です。賃貸は3〜6カ月分の家賃と敷金、売買は頭金。仲介手数料は双方かかるので、どちらも数百万ほどでしょうか。そして自己資金だけでできる人は少数派で、どちらにしろお金を借りるのであれば、違いはやはり手元に残るかどうか、手元に残したいかどうかという点です。また利息と、固定資産税の有無をどう捉えるか。
ただ商業テナントの取得にはそれなりにコストがかかるので、購入するなら中古戸建てがオススメです。なぜなら地方には戸建てがあり余っているから。
その背景に、地方には東京とは比較にならないほど「持ち家信仰」があるようです。(東京は土地が高すぎて現実的でないという相対的な面もあります。)さらに親と同居や実家を継ぐという文化がそれほどなくなってきている現代、それがいいとか悪いでなく、住宅の過剰供給につながります。例えば結婚のタイミングで実家を出て、それぞれみんな持ち家を取得するということが繰り返し起こると、将来的に「すべての実家は空き家に」なります。そして自分の家をすでに持っている子世代にとって実家は、かなりの資産価値がない限り、住まないのに固定資産税が発生する負の遺産になります。なので売りに出されます。
この状況を利用して、少ない資本で独立したいと考えている方は、ぜひ地方を選択肢のひとつにしてみてはどうでしょうか?移住誘致している地域であれば、住宅取得に補助金が出たりもしますよ。
余談
ちなみに東京でマンション探してたときは分譲60平米で4500万前後でした。今の物件は(詳細条件の違いはあれど)2階建て総面積150平米が3000万で、月々の返済額は東京浅草在住時(1K30平米)の月額賃料とそれほど変わりません。今の物件が地方の住宅ではまだ主流でない鉄筋コンクリートなので、相場より高くてコレです。近所の木造物件なら同じ築年数だと半額以下です。
結論:東京ってすごいですね。
独立準備の裏側.03 〜内装デザイン編〜 に続きます。
サポートいただいた資金は、我が家の毛玉2匹(保護猫)のために大切に使わせていただきます。たまにTwitterに登場します。