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渕上舞がつむぐ、新たな「3周年」のストーリー!〜渕上舞3周年 LIVE TOUR「THE CIRCUS」

(ライブの内容のネタバレしかありません。これから見るよ!内容言わないで!という方は回れ右!)


やはり、渕上舞さんの表現する世界に浸るのはとても楽しい。

2021年12月11日、KT Zepp Yokohamaにて「渕上舞3周年LIVE TOUR『THE CIRCUS』」がスタートした。2018年1月24日にアルバム「Fly High Myway!」でアーティストデビューし、駆け抜けてきた舞さんのこれまでを詰め込んだライブであったと思う。

これまでのナンバリングされたライブは(ミニ)アルバムを踏まえたライブをずっと開催してきて、4月に3rdライブを成功させた舞さん。今回は4thライブではなく「3周年記念」と銘打ち、「THE CIRCUS」という全く新しいテーマで、これまでの曲たちで新たな物語を作り出した。ライブの本編はMCを挟まず、合間に主人公のモノローグのナレーションがあるのみ。毎回コンセプトを非常に重視する舞さんのライブの色がより濃く出ていて、「コンセプトライブ」と呼ぶにふさわしいだろう。

このライブのストーリーに関して大まかに。
キラキラしたステージに憧れる黒猫がステージに立つ
→自分の存在意義に悩む
→自分がいることで喜ぶ人がいるのなら、ステージに立つ!
☆生きていく上で答えの無いことの方が多いから、自分で答えを見つけたり対処して、上手く生きていこう。
(最後のMC〜最後のナレーションがリンク)

MCでチラッとお話されていた「舞さんなのか?あくまでこの物語の主人公なのか?」問題。
私はあくまで舞さんがモデルの主人公を舞さんが演じている。という形だったと思う。舞さん≒主人公、舞さん≠主人公。
これまで舞さんの曲や言葉から感じた考え方、生き方が反映されているのだが、そこにいたのは「渕上舞」という女性ではなく、別の誰かだったと見ていて感じたのだ。

さて、ライブ全体の大まかな話をしたところで、曲ごとに詳しく見ていきたい。全曲触れていると時間が足りないので、一部ピックアップして書かせていただく。
ちなみに今回は何と最前列でこのライブを見ることができた。その興奮も交えて感想をば。

「フライング・ソーサー」(カバー)
「音楽少女」にて舞さんが演じられた竜王更紗ちゃんの曲。YMOをどこか彷彿とさせるテクノポップっぽく、ふわふわとつかみどころがないけれども非常にお洒落。現在Arte Refactで凄まじい勢いで名曲を生み出し続ける河合泰志さん(この時は「Taishi」名義)による名曲。
この曲と同じく竜王更紗ちゃんの「Summer Little Rainbow」は舞さんもお気に入りのようで、オンラインライブ「まいのうた」でも歌われたことがある。
個人的に「まいのうた」で聞いてから衝撃を受けてずっとお気に入りだったため、最初の「ボワーン」という音が聞こえた瞬間、思わず手で口を覆ってしまったほど「嘘でしょ!?」と「嬉しい!!」という気持ちが溢れた。
まるでロボットのように表情が動かず、カクカクとした人の温かみを感じられないステージングは、テクノな曲の雰囲気と非常にマッチしていて、舞さんの表現の振り幅の広さを改めて感じられた。音源だと7分ほどある長い曲だが、全く長さを感じさせない素晴らしいパフォーマンスだった。私はもうここで十二分に満足していたのだ。

「ハラ・ヒラ・フワリ」〜「雪に咲く花。蜃気楼。」
この2曲が、私的舞さんのツートップなのだ。
「蜃気楼」は2ndで披露されていたが、私は残念ながら参加できず。そして「ハラ・ヒラ・フワリ」は有観客では初披露だった。
さらに。
私は昨年にラジオ「渕上舞のとりあえずまぁ、話だけでも。(通称とりま)」にて、「ハラ・ヒラ・フワリ」の一節が舞さんの直筆で書かれたカードを、「蜃気楼」に関して書いたメールで見事勝ち取り、大切に飾ってある(この2曲に関しては過去にブログを書いているので、どれほど好きなのかはそちらを読んでいただきたい)。


この2曲はとにかく大好きで、大切で、特別なのだ。

さて。どちらも諦めや投げやりな気持ちを描いた曲ではあるが、私的には続けてやるなら「蜃気楼」の冬→「ハラ・ヒラ・フワリ」の春のイメージで、何となく、この方が後続もやりやすくない??と勝手に思っていたが、逆で来た。「蜃気楼」の最後をバンドによるセッションにすることで、3拍子に乗った心地よい空間も生まれていた。
やるだろうとは思っていたが、本当に「ハラ・ヒラ・フワリ」が始まった時は嬉し過ぎて天にも昇る気持ちだった。柔らかな和風テイストの曲に合わせた、舞さんの指先まで美しいパフォーマンスに目を奪われた。舞さんは歌声での表現やその美しさだけでなく、こういうところが私は大好きなのだ。

「『愛してる』の言葉なんて安いもんです 聞き飽きました」
「生ぬるい生き方が心地良い」

美しい曲と声に乗った、このどこにも向けようのないグチャッとした感情に、心がどこかキュッとなる。ついにこの気持ちを生で感じることができたのだ。

そして、もはや生で見ることに恋焦がれていたレベルの「雪に咲く花。蜃気楼。」の音が聞こえてきた。もう、「ハラ・ヒラ・フワリ」で胸がいっぱいだったのに。ついに。始まったのだ。「ああ神様!!」と思わずにはいられなかった。初めての最前列で、こんな流れを見ていいのか。舞さんからもらったものはたくさんあるのに、こんなにも素晴らしい贈り物を受け取って良いのかと、必死に涙を堪えながらじっと見届けた。

舞さんの歌声の温度は先ほどまでとは一転、冷たくなる。氷の透明度はもとの水の中に不純物が無いほど上がるというが、そんな綺麗な透明の氷のように美しい歌声が、天から聞こえるような不思議な感覚。でも生演奏だからなのか、CDで感じていた一面の氷の世界ではなく、寒々しくも、どこか暖炉のような温かみも感じられた。この曲が作り出すピンと張った空気と、氷の世界が見えるような雰囲気が大好きで、この曲の世界についに私も足を踏み入れることができたような気がして、心の底から嬉しかった。

じっと見つめることしかできなかった私が動けたのは、バンドセッションになってからしばらく経ってからだった。
いつもどこかであるこのセッションも、どの曲で来るのか毎回楽しみなのだが、まさかこの曲で来るとは思わなかった。氷の世界が徐々にとけていくような、光が刺してくるような展開に、主人公の気持ちの変化も感じられた瞬間だった。この後雰囲気はまたがらっと変化し、「操り人形クーデター」から怒濤の展開へと見せていく。

「A Crow」
……の前に。「操り人形クーデター」のパフォーマンスは今回はMV再現で、ダンサーさんたちが扮する操り人形たちに、舞さんが逆に操られて終わる。
(ライブ見たけどMV見てない!という方はぜひMVも見ていただきい!)


そこから始まる「A Crow」である。
この曲は最初の「Fly High MyWay!」に収録されている、重厚なロックサウンドが特徴で、切り裂くような舞さんの歌声が印象的な曲だ。
舞さんは「操り人形クーデター」の最後にステージに倒れ込み、「A Crow」のスタートと共にゆらっと立ち上がった。
立ち上がった瞬間に全てを理解した。
「A Crow」のテーマは「再起」だ。「操り人形クーデター」のMVでは操っていた側は人形との立場が逆転し、堕ちる。そこから再び立ち上がる様を、「A Crow」で表現しようというのだ。

この曲にこんな使い方があるなんて!!!そんな風に「操り人形クーデター」の続きを描こうなんて!!!悔しい!!!舞さんにしてやられた!!!!

「3周年ライブ」の真髄はここだと思った。
デビューアルバムに入っている曲を、最新シングル曲と繋げて、新しく作った「THE CIRCUS」というストーリーに乗せる。
より最後の
「この感情のまま強く」
で私の気持ちがぐわっと上がった。キーが高めな上に力強さの求められるこの曲は歌いこなすのも大変だろうが、舞さんは歌で決意を訴えかけてくる。
アーティストデビュー前からそもそも歌唱力の高い人ではあったが、デビュー後も凄まじい勢いで高めているのを改めて感じた。 

「予測不能Days」
いわゆる「強い曲」が連チャンで来てボルテージMAXの会場へ、この曲がぶつけられた。テンションメーターが既に振り切れているところにエモーショナルなパワーがあるこの曲を浴びてしまっては、ただただなす術なくドバドバと感情を解放するしかなかった。
スカッとするような青空を想起させるこの曲を、最高の笑顔で飛んで跳ねて客席を煽る舞さんを見ていて、私はふとどこか切なさを感じた。

「予測不能Days」はクセのない、どこまでもまっすぐで爽快感のある曲ではあるのだが、この曲が歌っているのは「叶わない初恋」なのだ。
曲の主人公がその恋にどこまでもまっすぐに向かっていく姿が、心から楽しそうに歌う舞さんと重なって見えた私は、このまっすぐさがどこか無情なものに思えて、どうしようもなく主人公のことが愛おしくなって、胸に熱いものがこみ上げてきたのだ。
でも、この主人公はこの恋は叶わないことは分かっている。分かっているから余計に苦しい。その曲を笑顔で歌う姿は、残酷なほどにまっすぐで、美しかった。
でも楽しそうに歌う舞さんはとってもかわいくて、つられて私もマスクの下ながら笑顔になれた。とっても楽しかったけれど、あのふと感じた苦しさ。両極な感情が入り乱れていたこの曲は、特に印象深く心に残っている。

前回のライブから新曲が出ないまま新たにツアーが始まったが、新曲を歌う必要がほぼないからこそ、ライブを通して自由な解釈で既存曲を丁寧に拾い上げ、表現したい世界を練り上げていたと思う。これまでの軌跡を辿りながら、新しい世界を見せてくれた。

このツアー、もといサーカスの巡業は1月の大阪、そして2月には凱旋公演となる福岡まで続く。
今回の神奈川公演の模様はなんと福岡公演の時までアーカイブ配信のチケットを販売してくれているので、もし興味がある方はぜひ見ていただきたい。

ここからまた羽ばたいていく渕上舞というアーティストは、これから先、私たちにどんな世界を見せてくれるのか。心から楽しみだ!!



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