地獄のエンタメ「赤もみじの道程」を見て

突如活動休止を発表した赤もみじ。
その後stand fmで休止の理由を説明し、解散する可能性も十分あることを示唆しながら活動休止へ。そんな中YouTubeで公開されたのがドキュメンタリー「赤もみじの道程」である。これが#1から#4まであるのだが、なかなかに精神がすり減る内容だった。特にファンという訳でもない自分でもわざわざnoteにするほど思うところがあった。

隠し撮り、音声の横流し


まず村田(敬称略)は#3まで登場しない。基本的に阪田(敬称略)と作家のやり取りでドキュメンタリーが進んでいく。この構成自体、どちらかに偏りがあるという点で公平性が欠如していると感じる。ノンフィクションは、こういった人の人生を左右するようなテーマであれば余計に登場人物に不平等があってはいけないのではと思う。
やっと村田が登場したと思いきや楽屋での隠し撮り映像である。自分が今話していることが撮影されていて、YouTubeで全世界に公開されるといったことは知らないまま語っている。本音を引き出すという点では良い手法かもしれないが、村田がかなり可哀想だった。芸人は人を笑わせる職業であり、知られたくない胸の内や裏側まで明らかにしてしまっては色々とやりにくくなる場合もある。最終的に村田に許可は取っているようだが、完成した映像を見せられて今更になってこれは公開しないでくれとは言えないだろう。制作側は村田が今後お笑いを続けるにあたってこの映像が弊害となる可能性を考えなかったのだろうか。村田本人も今までの映像が記録されていて20日にライブをやると事後報告をされた時の反応は好ましいものではなかったように見える。
そして#4の最後にあった阪田と作家の電話音声の横流し。
ドキュメンタリーは制作側に「こういう結末にさせたい」という意図があってはいけないし、それが透けるのは最悪である。ドキュメンタリーの良さであるリアリティを潰し、結末を操作しようとするのはノンフィクションとして破綻しているのではないだろうか。
明らかに「赤もみじを解散させたくない」という意図が透けて見える。
電話で聞いた阪田の本音を勝手に村田に聞かせ、村田に心変わりして貰いたいというのが明け透けなのがきつかった。村田は自分で考えた上で「解散したい」という風に結論を出したため、それで「じゃあ解散しましょう」と話が終わるのが一番健全であると思うのだが。映像の結末を操作するために制作側が音声を横流しするのは本末転倒なのではと思う。

芸人ドキュメンタリーの流行

芸人ドキュメンタリーというと最初に思い浮かぶのはM-1アナザーストーリーである。あれも「裏側を見せすぎだ」という批判も少しは見られるが、基本的には受け入れられているし徹底的な取材と各方面への配慮で感動的なエンタメとして成立している。
そして最近の芸人ドキュメンタリーといえば「ザ・エレクトリカルパレード」「シンりょう」が思い浮かぶ。どちらもニューヨークチャンネルのもので、エレパレもシンりょうもツイッター中心に話題が広がりかなり反響を呼んだ。「赤もみじの道程」もこの辺りからの影響が恐らくあるのだが、決定的に違うのは「笑えるかどうか」だと感じた。エレパレもシンりょうも題材の重さが赤もみじとは違うのはあるが、結果的にかなり笑えるものだった。これは進行兼インタビュアーのニューヨークの腕と、作家の奥田氏の技術によるものだろう。実際に奥田氏はどの部分を使うかはかなり気を遣っているらしい。
stand.fmでの活動休止の理由説明がまだ笑えたのはどう考えても周りの芸人(特にひつじねいり)が笑いを生もうと頑張っていたからだろう。実際#2でひつじねいりは「standfmでの立ち振る舞いはここ最近で1番良い仕事した実感があった」というようなことを言っていた。しかし当事者&作家の3人だとあの拗れた関係性とすれ違いようでは笑いを生むことは無理だと思う。
芸人ドキュメンタリーの流行で「裏側をどれだけ見せるか」ということがしばしば議論される。ファンと一丸となって熱く頑張っていくコンビもいれば、裏での努力や苦悩などは出来れば見せたくないというコンビもいる。例を挙げれば、M-1に出ていた頃の霜降りは賞レースの苦悩などを包み隠さずファンに話すタイプだった。反対に金属バットや真空ジェシカは賞レースでの悔しさや苦悩、努力は出来るだけ表に出したくないのが伝わる。もちろん善し悪しはなく両方ファンからしたら格好いい。しかし裏側を見せすぎることで弊害が出てくる場合もある。特に今回のようにコンビ間のセンシティブなテーマだと、今後の活動にもかなり支障が出てくる。裏側を見すぎて客が笑えなくなるということも考えられる。
そういう懸念を踏まえた上で、それでも作るべきドキュメンタリーだったのか。この作品が今後の2人にとってプラスになる未来が見えない。

解散するのかしないのか

「村田さんが何を考えているのか分からない」という動機で始まったこの企画だが、#4で十分明らかになったはずである。2人で話す機会を設け、村田は「解散したい」とはっきり口にした。それで「じゃあ解散しましょう」となるのが村田にとっては最も良かったのではと思う。2人のパーソナリティは深く知らないので本意は分からないが、#4の話し合い時の阪田は本当は絶対に解散したくないがそれを意地でも言いたくないんだなという印象だった。一緒にやりたいとは言わず、かなり遠回しな言葉で何とか解散しない方向に持っていきたいように見えた。それに対する村田もかなり言葉を選んで解散が最善策だということを説いているようだった。もう2人でやるのはのびのびやれないから解散したい、とはっきり言わずに「阪田のためにも解散したい」といった言葉を慎重に並べる村田は窮屈そうで見ているこちらが辛かった。このドキュメンタリーは基本的にずっと辛い映像なのだが特にキツかった。何度も言うようだが赤もみじの二人が実際のところどう考えていたのかは定かじゃない。阪田は「別に解散でもいい」と言っていて、それが本心ではあるのかもしれない。村田が気を遣って窮屈そうに話しているのも本当はそのように感じていないのかもしれないし、推測の域を出ない。コンビの関係性を男女で例えるのは今更感があるが、お互い思うように進まない別れ話を盗み聞きしているようで気まずかった。本音を言えばもう相手に気持ちが戻りそうにないので言葉を選んで「お互いのために」と別れを進めようとする方と、一緒にいたいとは決して言わないがそれを受け入れたくないため様々な選択肢を提示する方。#1からずっとキツくはあるのだが#4が最も苦しい映像だった。「村田さんの本音が知りたい」と言っていた阪田がの方が本心をきちんと言葉に出来ていない印象を受けた。
個人の意見としては、解散するしかないと思う。もちろん解散危機で活動休止→和解して再結成→賞レース等で結果を出す、という流れが本来なら最良だと思う。ただこの映像で二人を見るに、ここから修復していくのは困難なのではないかと感じる。stand fmを聞いた当時はまだ再開の可能性も無くはない印象だったが覆された。言うまでもなく、できることなら将来有望な漫才師である赤もみじは存続して欲しい。だがやはり村田がのびのびやれない環境でコンビを続けるのは本人が思うように不可能だろうし、阪田も「自分が受け入れればいいのか」とは言うがそれが本当にできるとは限らない。要するに赤もみじが存続するには両人がそれなりの「我慢」「妥協」をしなければならないのだと思う。阪田は村田の100%感覚派でルーズな箇所を受け入れなければいけないし、ダメ出しも迂闊にはできない。できるだけ相手を褒めて調子に乗らせなければいけない。村田は村田で阪田の顔色を伺うのはしばらくやめられないだろうし、阪田の前ではのびのびやれないようになってしまっている。阪田が指摘する自分の短所は理解しているが、それが自分であるため改善できるものではないと気付いている。正直ここからどうやって最良の状態に持っていけばいいのか分からない。ツイッターでも「二人をずっと応援してきて好きだからこそ解散がベストだと思う」という呟きが見られた。阪田は阪田で村田の才能を買っているし、人間的に嫌いになったわけでは全くないのだからそれはそれで辛さや葛藤があるのは想像できる。阪田が解散の場合芸人を続けるのかどうかも分からないが、新しくコンビを組むとして村田のような相方はそうそう見つけられない。解散したくないのは非常に分かるが、村田はもう先に進むためにいったん赤もみじを終わらせようとしているように思える。そこのすれ違いを二人が理解しているのかも分からない。自分の意見は「ここから修復するのは難しいから解散がベスト」だが、もちろん二人が納得いく形で和解してコンビが円滑に続いていくならそれが最良だと思う。

また余談だが、作家が批判されているのは「女性だから」ではない。それをミソジニーであると指摘している人は履き違えているのではないだろうか。ドキュメンタリーの結末を操作しようと音声の横流しをする、などの行為は恐らく男性作家がやっても同じように批判されているからである。彼女はまだ作家としてのキャリアを歩み始めたばかりのようだが、今後この映像が実績としてプラスになるのか疑問さえ感じる。また本人にそんな意図はないにしても構成上どうしても阪田・作家と村田という分断された構図に見えるためそういった意味でも損だと思う。まだ駆け出しの作家が活動序盤でここまでヘイトを買ってしまうと今後色々大変なのではないだろうか。無許可での隠し撮りや音声の横流し、勝手にライブを決めるなどの行為はどの作家がやっても批判されることなので、この一連の流れをミソジニーと表現するのは的外れである。

繰り返すようだが、自分は赤もみじの二人についてそこまで詳しくない。正論で詰める阪田と感覚で動く村田という構図もstand fmで初めて知ったぐらいである。そのため全く的を得ていないnoteであるかもしれないので、不快に思うファンの方がいたらごめんなさい。
納得いく形で終息することを願っています。

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