アマチュア大喜利で卒論を書く-進捗-

予想以上に様々な方にご協力いただき、皆様の優しさに大変感謝しております。「自分でよければ協力しますよ」とFF問わずお声がけくださった方々、こちらの取材依頼を快諾してくださった方々、本当にありがとうございました。現時点で10名以上の方に取材させていただき、お忙しい中お話を聞かせてくださった皆様に心から感謝を申し上げます。
夏までに、より多くの方にインタビューさせていただきたいので協力してくださる方がいらっしゃったら私のツイッターのDMまでご連絡いただけると幸いです。大喜利歴が長い方から最近始められた方まで、幅広く様々な方のお話をお聞きしたいと考えております。

現時点での進捗や分かったことについてこのnoteでは記載します。自分の中での思考整理も兼ねてという感じです。

そもそもなぜ自分が「アマチュア大喜利」を卒論テーマに選択したかというと、「お笑いが好きで、それに関わる論文を書きたかったから」「ここ数年のアマチュア大喜利シーンの盛り上がりや、新たに大喜利を始められるフォロワーの方の多さについて気になっていたから」という動機です。私自身は高校中退して超暇だった時に大喜利プラスをやっていたり、たまにラジオでネタメールが読まれる程度です。ちなみに自分の属するゼミは社会学系、なかでも文化・カルチャーに関するところです。そのため、みんな各々の好きなもので論文を書く雰囲気があります。私はお笑い、他のゼミ生はアイドル、ボカロ、クラシック、伝統芸能などそれぞれの好きなカルチャーに関する卒論を書く予定です。

進捗①論文テーマが仮決定しました

現時点での論文タイトルはこちらです。私は短大卒業後に今の大学に編入しているので卒論を書くのは2回目なのですが、以前書いた論文ではこの「-プレイヤーへの聞き取り調査に基づいて-」的なサブタイトルを付けなかったので、なぜか憧れがあって付けてみたかったという気持ちがあります。(ちなみに、短大では社会教育・生涯学習系のゼミだったので『高齢者がスマホやPCを扱えるだけの基礎的なデジタルスキルを身に着ける際、指導者はどのようにアプローチすればよいか』的な論文を書きました)大学編入についてもいつかnoteにできたらと思っているのですが、短期大学から四年制大学に編入する上では「短大での研究(卒論)」というものがめちゃくちゃ重要です。そのため「行きたい四年大で学べることに即したテーマで卒論を書く」いわゆる、''寄せる''という行為が必須です。実際、自分は正直言って全く関心がないテーマを「編入するため」と割り切って卒論の題材にしました。いくら進路のためとはいえ、本当は興味がないことを長時間研究し続け論文という形にするのはキツかった記憶があります。そのため、四年制大学では絶対に自分の好きなことで卒論書こう。と決意したのです。

論文のテーマについて詳しく解説したいと思います。
まず、「シリアスレジャー」という言葉について。

もともと、カナダの余暇研究者ロバート・ステビンスが1982年の論文“Serious Leisure: A Conceptual Statement”において提唱した。アマチュアや趣味人(ホビイスト)、ボランティアといった人々の活動を表すための概念である。これらの活動は余暇に行われるが、労働のためのエネルギーを回復・再創造(re-creation = レクリエーション)するための休息や気晴らしではない。むしろ、自分のやりたいことを実現するために行われる活動である。そのような特徴を、ステビンスは「シリアス」(真剣な)という形容詞で表現し、休息や気晴らしとして行われる「カジュアル」な余暇活動と対比させた。

シリアスレジャーとはなにか?──「好きを仕事に」しない道をつくる|趣味研究者・杉山昂平 | 遅いインターネット (slowinternet.jp)

この社会学的な概念が、今のアマチュア大喜利に非常によく当てはまるのではないか?と考え、研究テーマとして採用しました。主観ですが、「趣味だけど、趣味の域を超えている」人が非常に多い。例えばプロスポーツ競技であれば、アマとプロが混同して試合やるようなことは全く一般的ではないと思います。しかし大喜利においてはそれが不思議では無いということが非常に興味深いと感じました。
この「シリアスレジャー」という概念ですが、日本では全く研究が進んでいません。上記の出典先の文章を書いた杉山さんという東大研究員の方ぐらいしか本格的に研究している人がいない現状です。しかし海外(欧米、中国、台湾、韓国等)では一般化した研究テーマです。「オタク」という言葉がありますが、あれも捉えようによっては「趣味を真剣にやってる人」とも考えられると思います。そういう文化が発達している日本で何故シリアスレジャー研究が進んでいないのか?という疑問を考察していきたいと考えています。
論文そのものの着地点としては、アマチュア大喜利シーンの発展を通して日本における趣味・余暇活動研究の重要性を説きたいという感じです。

②10人以上に取材しました

これに関しては、本当に優しい方々が快く協力してくださったという感じです。こちらからお声がけした方、有難く協力を申し出てくださった方、お一人ずつにこの上なく感謝しております。私と面識や繋がりが一切なかったにも関わらず、お忙しい中親身に協力してくださった方も多数いらっしゃいます。皆様にはいくらお礼を言っても足りません。
その上でアマチュア大喜利シーンについて分かってきたことがいくつかあります。

「ダイナマイト関西」「内村プロデュース」の影響力
これに大きな影響を受け、大喜利に興味を持った方が多くいらっしゃいました。中でもバッファロー吾郎プロデュースの「ダイナマイト関西」では、一般のお笑いファンが参加できるトーナメントがあったらしい。
また「ケータイ大喜利」も避けては通れないでしょう。ちゃんと調べたら全国ツアーで自分の地元・東北にも来ていて驚いた。そして霜降り明星のだましうちで名前を聞いていたすり身さんって、ケータイ大喜利レジェンドの方だったのかと衝撃。
内Pに影響されたという方も非常に多かったです。あれをきっかけに大喜利を好きになって、自分もやりたいと思うようになった。友達同士のちょっとした遊びでやるようになったという方もいらっしゃいました。

アマチュア大喜利とインターネット文化との深い関連性
そもそも卒論のテーマを決めなければならない状況になって、大好きなお笑いに関連するテーマにしたいという思いが第一にありました。そこで、「お笑いに関わることで自分が気になっている現象を挙げる」という行為をしたのですが、真っ先に思い浮かんだのが「大喜利シーンの盛り上がり」でした。他にもいくつか候補はあったのですが、実現可能性など考慮して最も良いテーマがこれでした。当初は「単純にお笑い好きが増えたから大喜利やる人も増えたのかな~」と単純に考えていたのですが、知れば知るほどアマチュア大喜利シーンが現在のように盛り上がるまでの過程は深く、歴史が長い。自分の感覚では、ツイッターのタイムラインに大喜利をやっているプロ以外の方の活動が多く流れてくるようになったのはここ2~3年だったので、まず歴史の長さに驚きました。急激に人口が増加し、注目を浴び始めたのがここ2~3年ということで合っていると思います。もちろん「お笑い好きが増えたから」という当初の自分が何となく立てていた仮説も間違いではないと思いますが。
「ここ数年で一気に盛り上がった」というよりは、「アマチュア大喜利の注目度が上がり、表に出てくるようになった」という表現が正しいかもしれません。
そして本題ですが、なぜインターネット文化との深い関連性があるのか?
私が見聞きした中で「素人がオフラインで大喜利をやる」というイベントの最も古い例は、2005年7月開催の『オフ喜利』というものでした。

「サイトやブログで普段面白い事を書いている人は本当に面白いのか? を大喜利で検証するイベント。」とあるように、当時テキストサイトで管理人をしていた人などを集めて大喜利するという企画です。このイベントは定期的に開催されており、メンツを見ると、現在でいうオモコロの原宿さん、永田さん、まきのさん、そしてあのヨッピーさんなど知っている名前がいくつかあって感動。ろじっくぱらだいすのワタナベさんも出ていたとは。
多分これが「(一応)一般人による大喜利ライブ」の最古なのでは?これより古いアマチュア大喜利ライブをご存知の方は、切実にご連絡して頂きたいです。
こちらのイベントは「ネットで面白いことをやっている人は大喜利も面白いのか」という企画でしたが、出演者の方々はみなさんブロガーや管理人など、一応肩書きがあります。完全なる一般人ではないということです。
テレビでお笑いや大喜利を見ているような正真正銘の一般人が集まって大喜利をするような文化は、そもそも存在していませんでした。これは取材をさせて頂いた方が仰っていたのですが、
「落語って、別に誰にでもやる権利はあるけどなんとなく自分がやるのはおこがましいな、違うなって思うじゃないですか。以前は大喜利もそれと同じ扱いだった感覚です。プロの真似事というか」という、この例えが自分の中でめちゃくちゃしっくり来ました。これは本当に的確な例えだと思いました。
簡単に流れをまとめれば、一般人が大喜利をやるなんて概念がない時代から、徐々にネットの発達により大喜利サイトやコミュニティができあがって、プロアマ混同の大会なども開かれるようになり、一般人が大喜利をやるということがおかしいことではなくなった。といったところでしょうか?多分これも簡単にまとめることなんて出来ないくらい複雑な話なのでツッコミどころは多いと思いますが、「アマチュア大喜利という概念自体存在しない時代」から、約20年で「アマチュア大喜利シーン」が確立されつつあるのは間違いないです。そしてシーンが確立されて以降、ここ数年で爆発的な人口増加を見せているようです。
一般人が大喜利に触れることを可能にしたのがインターネットです。もちろんケータイ大喜利の影響も強いのですが、公共のメディアのコンテンツなので一旦置いときます。mixiで大喜利をやっていた人、オンバトのファンサイトの掲示板で大喜利をやっていた人、大喜利PHPという当時で言う大喜利茶屋的なサイトにいた人。インターネットを通して、一般人でも大喜利をする人が現れてきます。

ファンコミュニティに関する学術論文というものは意外にも多く、アイドル、宝塚、アニメ、音楽など多岐に渡って研究されています。研究テーマ決定当初は、それに習って「アマチュア大喜利」をテーマに論文を書こうと思っていたのですが、歴史が書籍や論文といった形で明文化されていないものを取り上げるのは非常に難しいなと思いました。しかしその歴史を明らかにしていくのも自分としては趣味の延長的な側面があり、それほど苦ではないと感じています。そしてアマチュア大喜利の歴史を解き明かす上である種の「インターネット史」的な知識が必要になってくるのですが、この辺の話も個人的に凄く好きではあるので現時点で圧倒的な壁にぶつかっている感覚はないです。(何より協力してくださる皆様のおかげです)

論文完成後は、出来上がったものを公開させていただきます。ツイッターが死につつあるので、自分が論文を出す冬にどういった状況になっているのか全く読めませんが…。なんらかの形で公開すると思います。
そして完成した論文が物凄く良い出来だった場合、自費出版など何らかの形で本にしたいと考えています。もちろん、学術論文をそのまま本にしてもあんまり意味が無いと思うので内容を書籍向けに多少アレンジしたものになります。
J.ナカノさんの「アマチュア大喜利プレイヤー列伝」のように、文学フリマで売るなどの方法も凄く良いなあ。
とにかく、形にできるように頑張ります。
現在、自分の体調不良で喉が酷い状態となってしまい、インタビューを中断しております。(7/4現在) 回復次第、再開させていただきます。


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