コウテイの解散に心を痛める
コウテイが解散してしまった。悲しスギ薬局とか全然言えないくらいショックである。
頻繁に劇場へ通っていたわけではないが、彼らが知られるようになってから解散するまでの一部始終は見てきたつもりだ。好きなコンビの解散を、いま初めて体験している。
何となく、これは根拠がない話だが、コウテイが再結成することはもう無いと感じている。ただ数年後に一夜限りの再結成的なものはあり得るかもしれない。ビーフケーキがライブをやったように、月刊コントでソーセージ(現アキナ)が一夜限りの再結成をしたように。そういった希望はあるが、もう再結成はないような気がなんとなくしている。
くっついたり離れたり、解散しては「他の人とネタをやると何か違う」と思い再結成してきたコウテイだが、ついに解散してしまった。
ABCグランプリ優勝、M-1は準決勝常連、KOCも期待されていた大阪35期でも随一のコンビである。華々しい実績を持ちながら、結成して10年目での解散。M-1決勝どころか、ABC優勝した年にはこのままM-1を獲るんじゃないかと思われていた。その経歴を捨ててまでの、10年目の解散である。
下田は解散後、ピン芸人として活動するが大阪の劇場システムに則って一からのスタートとなる。NSC出たての若手が出るようなグレードの一番下のバトルライブに出演し、そこから勝ち上がらないとよしもと漫才劇場に所属できるチャンスがない。人気・実力がある彼ならすぐ所属するだろうと思われるが、大阪進出したM-1準決勝経験もある侍スライスやテレビ露出もある白桃ピーチよぴぴも未だこのバトルライブに出ている。予想以上に厳しい世界なのだと思う。ヒガシ逢ウサカを解散した今井らいぱちも現在劇場に所属しているし、ピン芸人としてすぐに頭角を現すかもしれない。
しかし、今までの華々しい経歴と実績、解散後の厳しい環境での0からのスタートを考慮してまでの解散だったということを強調したい。
「勿体ない」という声が多数ある。彼らもそれは重々理解して、考え抜いた結果の解散なのだと思う。コンビの現在の地位を差し置いても、解散しなければならない理由があったのだろうと思う。
それがどういう事情であるのか、全てを知らされるのはそれはそれで辛いのだということを「赤もみじの道程(削除済み)」で学んだ。二人にしか分からない、今までのコウテイを捨ててまで終わらせる理由があったのだろうし、それは我々が憶測で語ってはいけないのだろう。自分も正直、もしかしてああだったのだろうか、こうだったのだろうかと考えることはある。その理由のようなものを二人がわだかまりなく普通に話せる日がいつか来るかもしれない。
コウテイが話題になった当時、あんな漫才は完全イレギュラーとされていた記憶がある。爆ウケしていたのにM-1の3回戦で落とされた当時、「メタネタはやっぱり賞レースでは厳しい」という意見が散見されていた。「不仲コンビ」として今で言えば竹内ズくらいの扱いをされていた彼らは、ウケたにも関わらずM-1に落ちた後、二人だけでラーメンを食べに行ったという。そこで腹を割って話し、それが転機となったのかは不明だが準決勝常連となった。過去のM-1で披露した「結婚式」のネタは、初めて見た時衝撃を受けた。私は本当に凄すぎるネタを見るとなぜか泣きそうになってしまうというキモイ特性があるのだが、まさにそれで本当に凄いネタだった。
そして、来年こそは決勝と思われていたが翌年はコロナで欠場を余儀なくされた。あの年に出れていたら、もしかして決勝に行っていたのではと今でも思う。こればっかりは本当に運が悪かったとしか言いようがない、誰が悪いというわけでもないし強いて言うならば時代が悪かった。
そして昨年も準決勝に進出したが、敗者復活を欠場。準決勝でも素晴らしく面白かった。そして九条が活動休止を発表した。この時は、まさか解散してしまうとは夢にも思っていなかった。しかし、自分が思うに九条は人よりも豊かな感性を持っていて、なおかつ繊細な人に見えたので非常に心配だった。どういう状況なのか様々な噂が流れているが、公式発表がないので何とも言えないし回復を祈るしかない。一日でも早く穏やかな毎日を過ごせるようになることを願っている。復帰にどれくらい掛かるのか分からないが、復帰後はお笑いの舞台に帰ってきてくれるのだろうか分からない。お笑い以外の分野でも自分のセンスを十分に表現できる人だと思う。でもコウテイのファンだった人間としては、またお笑いの舞台に戻ってきてほしいなと思う。
(追記:ちょうど今日、九条がピン芸人として活動を再開すると発表された。体調が回復したようで本当に良かったし、お笑いの舞台にまた戻ってきてくれるようで安心した。)
最後に余談として、自分が大阪でコウテイを見た時の記憶について書いてみる。当時のコウテイは正に絶賛不仲期だった。ネタ中、ネタを明らかに間違えてしまった下田を見て九条は一瞬にして表情が変わり、不快感を隠せない様子に。そのまま何とかネタは終了したが、九条のツッコミの声色が明らかに抑揚がなくなり、明らかに不機嫌だと素人目にも分かるくらいだった。あ~コウテイって本当に仲悪いんだな~と思ったのをよく覚えている。
しかしその後関係は一時期より改善されたようで、もう解散の心配はないと思っていたのになあ。
コウテイが好きだった。唯一無二の世界観、パワーのあるボケと奇天烈なツッコミ、他のコンビには絶対にできないネタがとても好きだった。九条の書く他にはない発想のネタは、持ち前の高い表現力で完璧にやり遂げる下田がやってこそのものだった。悲しい。再結成してほしいなんて勝手なことは口が裂けても言えないが、喪失感で溢れている。
下ちゃんは、シモタとしてピン芸人としても大成するだろうし、コンビを組んでも圧倒的なパワーのある芸人なので輝けると思う。
九条も唯一無二の才能がある人だからきっと評価される。まずは一日でも早く穏やかな日々が訪れることを願っている。
2人それぞれの活躍を祈っている。コウテイが好きでした。お疲れ様でした。