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金属バットのM-1卒業

本来この記事はM-1準決勝を配信で見た感想を書く予定だったのですが、金属バットについての文章があまりに長くなりそうだったので彼らだけ別記事とします。全体的な感想と決勝への期待も今のところ出来たら投稿予定です。
東日本の地方在住でハイペースに劇場へ通っているわけでもないため、関西でずっと彼らを見てきた方からしたら的外れな文章かもしれませんが率直な自分の気持ちを残しておこうと思います。
そして自分が撮影した良さげな写真がこれしかなかったのも申し訳ないです。

準々決勝で敗退後、ワイルドカードで復活した金属バット。ここに関しては正直、自分の中の「好き」が先行して完全にフラットな目でネタを見れているとは言い難い部分がある。それでも本当に面白かった。今年の3回戦の金属を見た時に、今までにはない気概のような何かを感じた。もちろん彼らのことなのでラストイヤー頑張ります!決勝行きます!というような発言はあるわけがなかったが、声が喉からではなく腹から出ていたように思えた。
金属は敗者復活に出場しないため、ネタバレも問題なさそうだがこれから舞台で見る人のために一応控えておく。
準決勝のネタは彼らの魅力や良さを詰め込んだもので、ファンが見たい金属バットそのものだった。今年の夏頃に彼らを舞台で見た時は知らないネタをやっていたのだが、率直に言うと金属らしさがあまり感じられないというか、少し意外なネタをやっていた。決して面白くなかったと言いたいわけではなく、面白いネタだったのだが彼らの独特の色があまり出ていない印象だった。自分は非常に痛々しいお笑いファンなので夏頃に舞台を見に行くとどうしてもM-1用か?などと考えてしまう。(「あのネタ勝負ネタか?」とか言うお笑いファン痛すぎる、と言っていた芸人誰だったかな?粗品?思い出せないけど関西芸人だった気がする)実際、夏~秋にかけての時期、劇場でM-1用のネタを試すコンビは非常に多い。今年のM-1予選動画でも、劇場に行った際に見たことがあるネタを披露していたコンビが多く見られた。例えば蛙亭の準々決勝ネタは今年の単独でやっていた唯一の漫才である。話は逸れたが、その時期に劇場で見た金属のネタが結構意外な印象だったためM-1ラストイヤーはどういうネタをするのだろうかとずっと思っていた。
しかし予選が始まってみたらさすがの金属バット。「イチウケ 金属バット」という文字を今年は何ツイート分目にしただろうか。今年はラストイヤーということもあり、ファンの熱量も今までにないものがあった。前記事でも同じようなことを書いたが、金属ほどお笑いファン全体からの支持が厚い芸人は他にいないと感じている。主語が大きいかもしれないが、「一番好きな芸人は金属」というわけではないお笑いファンでも、かなりの熱量で金属を応援していたりする。自分も例に漏れずそうである。大阪在住でもないため、彼らが東京に来る際は行ける時に劇場に行く、というような頻度でしかネタを見ることができなかった。今となっては多少無理してでももっと今年の金属を見に行けばよかったなと少し後悔している。

準決勝が終わったのが執筆時点で昨日の話なので、かなり率直な話をすると金属バットが決勝に行かないまま賞レースを卒業したことが信じがたいし、こういう未来はあってほしくなかった。他にはない色があり、確かな実力と一定の層からの熱狂的支持があった彼らは意外にも準々決勝止まりの期間が長かった。2018年からは毎年準決勝に進んでいるが、それ以前は「面白いのに準決勝には行けない」という状況が続いており、当時のM-1の雰囲気も相まって異端ともいえる芸風が原因だと思われていた。2018年に初めて準決勝に進出した際にはツイッターのトレンドに「金属バット」が入り、敗者復活戦後は新規ファンが一気に増えアメトークやENGEIグランドスラムへの出演もあった。その後、東京のテレビに出演することはほとんどなくなりアメトークのオファーも断ったと聞いた。金属のテレビ露出について、当時の自分は痛ファン独特のあまり素直に喜べない感情があったのだが今となってはENGEIグランドスラムに彼らが出演したことはとても良かったと思っている。M-1の代わりとはとても言えないが、豪華なセットの大きな舞台からせり上がってくる彼らを見れたのは非常に嬉しかった。ゴールデンで金属のネタを見れたのは喜ばしいことだったと今は強く思う。「マンゲキ出禁」の時期が非常に懐かしい。準決勝に進んだ直後に出禁は解除され、今では普通に劇場に出ている。自主ラジオ・ラジオバンダリーが全て削除された際のショックと「まあ仕方ないよな」という気持ちの共存の複雑さを覚えている。

何回同じことを言うんだという話だが、金属が決勝に出れないままM-1出場資格を失うとは思っていなかった。大阪準々決勝を見ていない自分がこんなことを言ってはお笑いファン失格だと思うが、準決勝を見て「準決の出場コンビは、準々決勝で本当に全組が金属よりも面白かったのか、金属よりも上がるのに妥当だったのか」という感情は捨てきれなかった。準決勝が終わった今も、正直折り合いをつけられずにいる。ワイルドカード枠は敗者復活に出れないというのがこれほど悔やまれるとは思わなかった。去年の敗者復活では、テレビ露出があるわけでもなく、お笑いをそこまで好きではない人は「見たことあるかも」という程度の一般知名度の金属がハライチに次ぐ2位を記録した。もし今年敗者復活に出られたら、という思いはかなりある。しかし友保氏のコロナ感染により準決勝にも出られなかった可能性を考えると、ギリギリ間に合って本当に良かったなと思う。そこだけは救いだった。
準決勝はトップバッターだったこともあり、準々決勝のように「なぜ落ちたかわからない」とは言えない。彼らよりも上がるのに妥当なコンビが他にいたから決勝に行けなかったというだけのシンプルな話である。それでも、準々決勝のあのネタで落ちたことに関しては未だに疑問を持っている。せめてストレートで準決勝には行ってほしかったし、それが実現していたとしても決してラストイヤー補正ではなかったと思う。
自分の話をすると、ずっと好きだった霜降り明星はM-1で優勝した。同じくファンであるかまいたちは夏ごろから劇場に通いM-1用のネタを見届け、結果はラストイヤーでM-1準優勝だった。M-1でここまで残念だなと感じたのは、今回の金属の件が初めてである。学天即やプラスマイナス、囲碁将棋のファンの方などもこういう歯痒くてやりきれない思いを抱えていたのか~とひしひし感じている。

金属があと5年M-1に出れれば、確実に決勝に行っていたと思う。
彼らに時代が追いつくのが遅かった。決勝でやるにしては異端なネタ、芸風であるのが上に行けない原因だと思っていたが、評価基準が明らかに変化した今のM-1だったら来年、再来年には確実に決勝に進んでいたと思う。何なら優勝もあったのではないかと思う。悔しいなあ。正直な話、自分が好きな霜降り明星もあの時優勝を逃して今もM-1に出続けていたら、優勝できていただろうかと考えることもある。それくらいM-1という大会はここ数年で大きく変化した。M-1がキングオブコントのように芸歴制限のない大会であれば、金属バットは絶対に決勝進出していたし優勝の可能性もあった。(芸歴制限があるからこそ面白い大会なので、そうしてほしいとは思わないが)
M-1が彼らに追いつくのが少しだけ遅かったのだと、そう思うしかない。

前向きな話をすると、劇場で見る賞レースを卒業したコンビのネタはかなり魅力的である。競技漫才から解放され、毎年ネタを「仕上げる」ということから降りたコンビは以前よりも楽しそうに漫才をしている。霜降り明星、かまいたちは言わずもがなである。(彼らは決勝で結果を残して賞レース卒業したため、比べるのは少し的外れかもしれない)
例えばプラスマイナスや学天即などは、劇場で見ると常に爆笑をかっさらっている。ルミネで居合わせた修学旅行生が学天即を見て「こんな面白い芸人を今まで知らなかったなんて」というような話をしていたのを覚えている。
金属バットは特に賞レース卒業後のネタがより輝くタイプだと思っている。
M-1など公の賞レースでは難しいような、劇場でしか出来ないネタが彼らの真髄であり魅力だと思う。賞レースから解放され、本当にやりたいネタを伸び伸びとやる金属バットを見れることは非常に楽しみである。

改めて金属バット、本当にお疲れ様でした。

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