M-1グランプリ2019決勝を観覧しました
奇跡的に当選したため、M-1グランプリ2019決勝戦を観覧してきました。
三連単予想は「からし蓮根 かまいたち ぺこぱ」でしたが、個人的に一番応援していたのはかまいたちです。そのためどうしても彼らに寄った感想になってしまいますがそこはご了承ください。また主観のみで形成されている文章ですので、あくまで個人の感覚だということを忘れないで頂けると幸いです。(想像以上の反響に驚いています。より詳細に伝えるため、少しずつ加筆修正しています。)
前説が始まる前には審査員席のモニターに去年の決勝進出者のネタが映し出されていました。ネタはスーマラ、ジャルジャルの国名分けっこ、ギャロップ、霜降りの豪華客船。お客さんが笑える空気に持っていくためだと思いますが、1回戦のネタハイライトみたいなものも流れてました。ガリレコ、ひがちゃんず、イージードゥダンサーズ、ジャニーズのつ~ゆ~などが10~15秒くらいのダイジェストになってました。今田さんがイージードゥダンサーズを見て笑ってたのを覚えてます。
そして前説。レギュラーの登場にお客さんは大盛り上がり。その後登場したサバンナ八木さんとなかやまきんに君のユニットザ☆健康ボーイズも大ウケ。そしてこの2組で前説終了かと思いきやM-1風のナレーションの後にBKB登場。(レディース&ジェントルメン!スペシャルショータイム バイク川崎バイク~!)みたいな感じでかなり笑ってしまいました。5年連続前説をやっているそうです。「正直M-1よりBKBが好きだよって人~?」に3、4人ぐらいが反応してました。生放送が始まる数秒前まで前説担当の方々はステージにいて盛り上げてくれました。BKBの「バイクだけに~!?ブンブン!!」を放送開始の5秒前くらいにお客さん全員で言って、前説を担当した芸人さんは急いで捌けていきました。全体的に前説はかなり盛り上がっていたと思います。
そしていよいよ生放送開始。ネタまでの間はテレビ放送とそれほど変わらないので割愛しますが一つだけ。上沼さんがマヂラブの野田さんを「覚えていない」と言った件ですが、会場には敗者復活の野田さんの映像が流れていませんでした。「恵美ちゃん待っててね~!」という音声のみが流れたため、上沼さんが「覚えていない」と言ったのも無理はないかと思います。気になっている方が多かったようなので追記しました。
1組目 ニューヨーク
決してウケてなかったわけではないです。むしろトップバッターにしては会場の雰囲気は暖かった方。前説が盛り上がった影響もあるんですかね。準決勝で大ウケだったパプリカと米津がそこまでハマっていなかった印象があります。ご自分でも言っていましたが、屋敷さんがすごく楽しんでやってるんだなというのは非常に伝わってきました。審査員のコメントを聞いている時の二人(特に屋敷さん)の顔が少しずつ歪んでいくのが印象に残っていて「もう最悪や」とずっと言ってました。嶋佐さんは無表情でしたね。ここで天下の松本人志の話を全く聞かないニューヨーク、魅力が滲み出ていたように思います。今年の決勝出場者で平場が印象に残ったコンビは?と聞かれれば即答でニューヨークです。本人たちも「点数が出た時に爪痕を残そうと思いあの態度を決め込んだ」的なことを言っていました。まさに目論見通りです。決して滑ったわけではなく、何度も言うようですがトップバッターということを考慮するとかなりウケていた方。個人的にこれからどんどんバラエティに出てほしいコンビです。嶋佐さんが宣伝していた通りYouTubeもめちゃくちゃ面白いです。
2組目 かまいたち
ラグビー日本代表の方が笑御籤を引いた時の「ああ知ってる」的なリアクションで次がかまいたちだと何となく予想できたのですが、まさか1本目でUFJとは。出番が早かったため、最終決戦でやる予定だったUFJをあえて持ってきたと後から知りました。有名なネタなだけにお客さんもほぼ全員が知っていたのか、「UFJ」というワードが出た瞬間もう笑いが起こっていました。テレビでも披露したことがある有名なネタでもあれだけ爆笑を取れるという点が凄い。あくまで個人の感覚ですが濱家さんはいつもよりネタ中に笑っていなかった印象。ニューヨークに対する松本さんの「僕は怒ってるツッコミの方が好き」というコメントと関連性があるかどうかは分かりません。もう山内さんが何を言っても面白いという空気が完全に出来上がっていてどんなボケでもハマる中、終盤のあのパワーワードが大爆発。まさに圧巻でした。上沼さんも似たようなことを言っていましたが、かまいたちの漫才は結局「言った」「言わない」みたいな話で、他人の小さな喧嘩を見せられてるだけなのにそれで4分持っていく、しかもめちゃくちゃ面白い。爆笑問題の太田さんもラジオで絶賛していたと聞きましたが、濱家さんのツッコミもことごとくハマる。ネタ終わりの二人は堂々としていましたが、審査員の講評を聞いている最中何度も頭を下げていたのが印象的でした。2番手とは思えないウケだったと思います。
3組目 和牛
発表された瞬間の雰囲気は「やっぱり」という感じ。川西さんのツッコミの上手さに圧倒されました。言葉の一つ一つが聞き取りやすく、早さや間もちょうど良い。全て0.1秒単位で計算され尽くしているような感じ。もしもツッコミのAIを開発するなら川西さんを学習させるのがベストなんじゃないかな。「紹介される家に毎回誰か住んでる」って決してスタンダードなものではなく結構奇抜な設定ですが、和牛がやると何故かすんなり受け入れてしまうんですよね。ウケでいえば「いいね!」がピークで、私もかなり笑いました。水田さんのボケがハマっているのもそうですが、川西さんでも笑いを取れるのは凄い。世間で少し言われている慢心や余裕のようなものは感じられなかったです。ただ、文句なしに面白かったけど面白いより「凄い」と思ってしまったかもしれません。審査を待っている間、後ろに座っていた女性が「川西さんかっこいい」とわりと大きい声で言ってるのを聞いて、そういったファン層がかなりいるんだなあと実感。ネタは本当に面白かった。ただ後で敗者復活を見返してみると、川西さんの河内弁は屋外の方が面白く感じるだろうな。もしかしたら審査員が見たいのは「嫌な奴」キャラの水田さんなのかも。そもそも、和牛は他のコンビだけじゃなく「過去の和牛」とも比較される。実際、私も無意識に過去の決勝で披露したネタと比べてしまった。他のコンビはもちろん「過去の和牛」にも勝利しなければいけない状況の中で、川西さんでも笑いを取るという新しい見せ方を披露したのは凄かった。来年は出場しないそうですが、和牛がM-1チャンピオンにならないまま大会を卒業するなんてそんな世界があっていいのかと、勝手ながらそう思ってしまう自分がいます。ただ、和牛が置かれていた状況の過酷さ、しんどさはきっと私の想像を遥かに凌駕するものがあると思います。M-1という大会を抜きにしても、和牛が素晴らしい漫才師であることは疑いようのない事実です。1年休んで、ラストイヤーにまた出場という事もありえるかもしれない。今後、彼らがどんな選択をしてもそれを尊重します。
4組目 すゑひろがりず
このネタはルミネで見たことがあって、同じ回に出ていたかまいたちと同等にウケてました。もう登場の時点でお客さんはかなり良い反応。ツイッターでも話題になっていましたが、登場のせり上がりが格好良すぎる。周りの反応からすゑひろがりずを初めて見るお客さんも多かったのかなと思いました。初見の方々の「何この人達!?」という雰囲気がどんどん笑いに繋がっていった印象。1回ハマった人はもう彼らが何を言っても面白く感じると思うので、そこが強さだなと感じました。あの飲みのコールの部分で最初の大爆発があって、その後の山手線遊びでまた拍手笑いが起きました。「この人たちはどんなことをやるんだろう」というワクワク感が完全に笑いに昇華されていたし、終わり方も美しかった。そういえば和牛の次に登場したんですよね。かなり高得点だった和牛を引きずっているお客さんが全くいなかったのも今考えたら凄い。審査員の方々のコメントを2人が一つ一つ噛みしめるように聞いていて、本当に嬉しそうな表情をしていました。三島さんは少し泣きそうだったかも。今田さんも言ってたけど、お正月のネタ番組の恒例になってほしい。確か過去に英語のネタで出たことがあったと思いますが、クールポコにこんな形で脅威が現れるとは。ネタは全体的にめちゃくちゃウケてましたし、私の隣のお客さんは初見だったようでずっと笑いが止まらない感じでした。3回戦でやったトトロもめちゃくちゃ面白かったので生で見たいなあ。彼らが決勝に来たということはキャラ芸人は準々決勝が限界と言われていたM-1の定説がぶっ壊れたということです。来年がますます楽しみになりました。また決勝で見たい。その前に、年始のネタ番組が待ち遠しいです。
5組目 からし蓮根
個人的に優勝予想だったし、ツイッターを見るにお笑いファンの期待値は非常に高かったと思います。この芸歴で「決勝行くのが遅いくらい」と評される若手はなかなかいないでしょう。「教習所」は何度か見たネタだし凄く強いネタだけど、いつもならハマるボケがいまいちハマってなかった様子。ミニモニも大型犬も私が以前生で見た際は拍手笑いが起きていました。会場は終盤のあの強いボケでようやく大爆笑が起こっていました。恐らくすゑひろがりずが強烈なインパクトを残した後というのも起因していたのでは。上沼さんのコメントが叩かれてるそうですが会場はあれで大爆笑で、あとからツイッターには否定的な意見が多いと知って少し驚いたくらい。誤解を招く書き方になりましたが、私から見た和牛の印象は上沼さんと同意見ではないです。とても余裕綽々には見えませんでした。ただ会場はあのコメントでウケていたという話です。巨人師匠の講評を聞いている時のからし蓮根の二人が本当にいい顔で、特に青空さんは泣きそうになっていました。からし蓮根はまた決勝に来るだろうし、いずれ最終決戦に行く存在。来年も楽しみだし、いつか優勝してほしいと思ってます。「怖い」「暴力的」という意見をちょくちょく見かけますが、そこが魅力なんじゃないのかな。青空さんのあの見た目からキツいツッコミが飛び出してくるからこそからし蓮根は面白いんだと思います。
6組目 見取り図
かなりウケていたし、笑いの量が平均して多かったです。個人的に見取り図は2人のパーソナルな部分を知れば知るほど面白くなるコンビだと思っています。「○○か何かですか?」の部分がめちゃくちゃ好きで、初めて見たとき死ぬほど笑ったけど思っていたほどウケなかったのが残念でした。わりとずっとウケてた印象だけど、一番はダンサーの綱吉だったかな。盛山さんが噛んだ時のあれもかなりハマってた。塙さんは「手の動き」に触れていたけど私はそこも見取り図の魅力だと思ってるので、審査員からしたらそう思うのかと新鮮な気持ちでした。確かアメトークで大吉先生が漫才中の手の動きについて話していましたね。見取り図は去年悔しい思いをしたし、今回の敗退は決してネガティブなものではなかったと思います。今年のM-1はボロボロに傷ついて帰って行った人たちが誰もいなかったです。例年なら十分最終決戦に残れる点数だし、お客さんにも十分ハマってました。何度も決勝に行っていると手の内がバレてハマりづらくなるコンビが多いですが、見取り図は例外だと思います。二人を知れば知るほどネタが面白くなるというのは大きな強みです。平場もめちゃくちゃ面白いし東京のバラエティにももっと呼ばれてほしいです。見取り図というコンビを、来年のM-1までにより多くの人に認識してほしいです。
7組目 ミルクボーイ
後ろの方から頭上に物凄い量の笑い声が押し寄せてきた感覚がはっきりありました。1本目のネタ途中の時点でミルクボーイの優勝を8割方確信したお客さんも多かったのでは。ベルマークの掴みがウケた後、最初の「コーンフレークが最後の晩餐でええわけない」でもう拍手笑い。どんどん会場のボルテージが上がっていきました。毎回拍手笑いが起こっていて、まさに会場が揺れるほどのウケ。ツイッターでも書かれていましたが準決勝と比較すると「芸人に例えたら」のくだりがカットされてましたね。終盤「コーンフレークではない」が大ウケし、その後の虎の真似も爆発。内海さんがかなり乗ってきているのも伝わったし、会場全体がミルクボーイに釘付け。恐らく生で彼らを見たことがないお客さんもそこそこいたのでは。それも作用しての大爆発だったと思います。内海さんのしゃべくりの技術は言わずもがなですが、駒場さんの「分からない」を4分貫く演技力も凄い。みんなウケてましたが、四方八方から荒波のような量の笑いを感じたのはミルクボーイだけです。過去最高得点が出て会場は大盛り上がり。歴史的瞬間に立ち会えたことを嬉しく思います。審査員から絶賛されている間、ミルクボーイの2人はずっと「そんなそんな...」って感じで謙遜してましたし驚きを隠しきれない様子でしたが、「やりきった」という安堵と「もしかしたら優勝ある」という期待のようなものは感じました。
8組目 オズワルド
やっぱりミルクボーイの後というのが痛かったです。お客さんの大半がミルクボーイの漫才を引きずっていた状態だったけど、それであそこまでウケたのは凄い。準決勝でこのネタを見た時は「絶対に決勝に行く」と思ったし、オズワルドが決勝の舞台で漫才をして大ウケしている様子が想像できました。それほどハマらなかったのは確実に順番が原因。私はオズワルドを生で見るのは初めてでしたが、ずっと見ていたいと思うような漫才でした。今田さんも「心地よかった」と言ってましたね。大阪組にはなかなか見られないあのスタイリッシュで洒落た感じは何なんでしょうか。衣装がスーツではなくサスペンダーなのも理由の一つなのかな。8組目にもなるとお客さんは必然的に少しずつ疲れてくるけど、全くそれがない。3本くらい連続で見ても疲れないでしょう。これで結成5年は信じられないし、決勝常連になっていく可能性もあるだろうなあ。いずれ舞台のチケットが取れないような芸人になっていきそう。もっと彼らのネタが見てみたいと感じました。
9組目 インディアンス
純粋なウケ量でいったら相当高かったです。審査員の点数に対して戸惑いのどよめきが起こったのはこのコンビだけで、「え?なんで?」みたいな反応の人がまあまあいました。今思うと、最初の紹介VTRの昔のインディアンスの写真が出た時点で会場がかなりウケてたんですよね。きむさんのビジュアルが今と違いすぎるあの写真です。それも作用してか、コントインした瞬間に大ウケでした。序盤、このくだりってこうだったっけと違和感を覚えた部分があったんですが、田淵さんがネタを飛ばしてたらしいですね。私が「あれ?」と思った部分でネタを飛ばしていたのかは不明です。インディアンスはいつものうるさいキャラが世間や審査員に受け入れられないだろうと思って「おっさん」キャラを使用したのかなと勝手に思っていたけど、それが逆に「素の部分が見たい」と言われる原因となってしまったのかな。田渕さんって普段もあんな感じだと聞いたことがあるので、作ったキャラってわけではないと思うんですけどね。お客さんが審査に違和感を示してたのはこのコンビだけです。(私は割と予想通りの評価でした)もしかしたら、中盤に出ていた方が良かったのかな。優勝予想をしていた有名人も多かったので世間的には意外な評価だったと思います。反省会でインディアンスの2人は相当悔しがっていたし「思うようにならなかった」と言っていました。今年の悔しさを原動力に、来年はさらに仕上げてくるだろうなと思います。事前インタビューで本人たちも言っていましたがインディアンスの強みは「巻き込み力」です。それが来年は存分に発揮されることを祈ります。
10組目 ぺこぱ
ぺこぱが決勝進出すると決まってからその後1週間くらいはずっとウキウキして過ごしてました。「漫才をフリにした漫才」なので絶対にトップバッターだけは引かないでほしいと祈ってましたが、かまいたちや和牛を初めとした最高峰の漫才を9組見た後で最後にぺこぱが来たらハマらないはずがない。私の周りにはぺこぱをそもそもよく知らないお客さんもいました。一番最初のツッコミでどよめきのような笑いが起き、その後ネタが進むごとに会場のお客さんがどんどんぺこぱに惹かれていくのが体感で分かり、初めは「イロモノ枠でしょ」と思っていたお客さんが4分後にはぺこぱを大好きになっている。そんな現象が多発していました。ツイッターのトレンドに「ぺこぱ好き」と入っていたと聞きましたが会場もまさにその雰囲気でした。「こうするしかなかった」の部分は決勝でどうなるかなと思っていましたが、終盤でそのツッコミをする頃にはもう完全にお客さんがぺこぱを大好きになっていた。圧倒的強さを見せたコンビが最終決戦に進出する中で、キャラを迷走している松陰寺太勇というある種の弱さにお客さんはみんな魅力を感じていた。この部分が一番ウケていたし、全員がぺこぱを受け入れているのが分かった。その日会場にいた全員がぺこぱに釘付けで「もっと見たい」という気持ちがありました。和牛もウケていましたが、ウケの加速が凄まじかったのはぺこぱです。点数差はほぼありませんが会場の雰囲気だけを判断基準とすればぺこぱの圧勝だったし、審査員が2本目を見たくなるのも必然。和牛に勝った瞬間、会場は揺れるほどの大盛り上がり。今年やむを得ず事務所をクビになり、おもしろ荘では優勝したものの夢屋まさるに全て持っていかれ、迷走の末に着物とローラースケートを捨て3年連続準優勝の和牛に打ち勝った。ジャイアントキリングの瞬間に思わず鳥肌が立ちました。
そして最終決戦。まず1組目のぺこぱ。
お客さんは2回連続ぺこぱのネタを見るわけで、手の内もバレている。それにも関わらず大ウケでした。1本目のネタを見た観客は飽きるどころか未知の存在であるぺこぱに興味が止まらない。「もっと見たい」という期待がウケに繋がって、会場を完全に魅了していました。3回戦で披露していた「電車で席を譲る」ネタは個人的に終盤のお客さんに語りかける部分がどう出るかなと思っていたのですがそんな心配は無用。客は既に全員ぺこぱの大ファンです。「実際のところどうですか?」に対するお客さんの拍手笑いはアーティストのコールアンドレスポンスのようで、初見のお客さんもいるのに「ホーム」のような雰囲気でした。去年の準々決勝で初めてぺこぱを見た時衝撃を受けたのですが、来年のM-1で3位になるコンビだと誰が予想したでしょうか。今日改めて昨年の準々決勝のぺこぱを見返しましたが、スーツに着替えたというだけでそれほどネタは変わっていない。「空港での再開」を最終決戦でやっても大爆笑だったでしょう。ちなみに昨年の準々決勝でぺこぱの次に登場したのはすゑひろがりずでした。それも今考えたら凄い。私はあの場で見たぺこぱの漫才を今後ずっと忘れないと思います。唯一の非吉本芸人で言ってしまえばアウェイな中、会場全体を自分たちの色に染め上げる魅力が凄まじかった。非吉本芸人が最終決戦に進出するのはオードリー以来だそうですね。放送終了後今田さんに「絶対売れる。めちゃくちゃ仕事増えるよ」と言われていた際に2人が深くお辞儀をしていたのを覚えています。今回のファイナリストは全員爆売れして欲しいですが、その中でも特に応援したくなってしまうのが彼らでした。だって松陰寺太勇の日めくりカレンダーとかあったら絶対買っちゃうでしょ。
2組目 かまいたち
準決勝でも披露した「トトロ」。準決勝数日前のルミネではこれとUFJを繋げて10分間の漫才をしていました。これも言ってしまえば「トトロ見たことないのが自慢」「それは自慢にならない」というだけの主題で4分間やっていくわけで凄いことなんですよね。1本目と同様に濱家さんが怯えていく部分がお客さんにかなりハマった。さすがとしか言いようのない漫才でした。山内さんが何か筋の通っていないことを言って、それがめちゃくちゃ面白いんだという共通認識をもう全てのお客さんが持っているわけなのでウケないはずがない。1本目はニューヨークへの松本さんのコメントの影響か濱家さんが心無しかいつもよりキレ気味にツッコんでいた印象でしたが、2本目はいつも通り。絶対に優勝したいという気概も勿論ですが最後だから楽しんでやってやろうという思いが2人から強く感じられました。1本目と比べると少し肩の力が抜けたのか、今までで一番とも言っていいくらい二人が物凄く楽しそうに見えました。お客さんが手を挙げるくだりが放送前からツイッターで心配されていましたが実際挙げている人はいました。カメラに抜かれていないだけででっち上げではないです。私がかまいたちのこのネタを初めて見たのは確か12月のルミネでした。今年の夏頃、M-1出場を表明した当初のかまいたちはずっと「お酒」のネタをやっていたので、確実にM-1用だろうなと思っていましたが、いつの間にか「トトロ」にシフトチェンジした印象です。「お酒」のネタもかなり強いネタだったと思いますがこれは予選でやってたのかな。確かやってないと思います。お酒のネタは8月にルミネで見た時息が出来なくなるくらい笑ったのを今でも覚えています。今年の夏、1番笑ったのがあのネタでした。あれを最終決戦でやったらどうなっていたんだろう。個人的に大好きなネタだったので、いつかまた見れる日が来ることを祈ります。話が逸れましたがやっぱりかまいたちはめちゃくちゃ面白い。「手品は頑張れば追いつけるけどトトロ見たことないはもうどうにもならない」ここが大ハマり。山内さんの主張が「理論上間違ってはいない」のが凄く面白い。全く種類が違うかまいたちとぺこぱを同じ舞台で比べないといけないなんて酷だなと思いました。かまいたちのM-1での最後の漫才を見届けられたことを誇りに思います。
3組目 ミルクボーイ
序盤の「わからへんのがあるんでしょ?」がもう大ハマり。お客さんはもうミルクボーイを「関西のダークホース」ではなく「アンタッチャブルを抜きM-1最高得点を叩き出したコンビ」として見ている訳で、言うことなすこと全てハマる。特に家系図のくだりがかなりウケていました。1本目と同様に後ろの方から濁流のような勢いの笑い声を感じて、この時点でミルクボーイの優勝を確信した人が大半だったように思えます。私もそうでした。ミルクボーイは以前からYouTubeで見ていて、生で見た経験はなかったので普段の劇場の様子との比較はできませんが、やっぱり内海さんが乗りに乗っていたし会場の全員が「最中やないか」「最中とちゃうやないか」を待ち望んでいて仕方ない空気。そんな中で「最中の双子」が大爆発。あの場のミルクボーイは笑いの神がスタンドでついているようなそんな凄まじさがありました。後から反省会でかまいたちの2人も似たようなことを言っていたので、会場にいた人間には分かる圧倒的な雰囲気があったんだと思います。大学時代からあのフォーマットを完成させていたと聞いてビビりました。NSCに行っていないコンビが強いのはやっぱり「教わっていない」からなのでしょうか。観覧後、東京から地元に帰ったら友人がミルクボーイについて「あんなに面白い芸人さんがいたのに全然知られていなかったなんてお笑いの世界はヤバい、恐ろしい」的なことを言っていましたがその通りだと思います。
ネタが終わり、審査を待っている間の3組の様子についても覚えている範囲で書きます。まず印象に残っているのが、全員が緊張した面持ちで佇む中でぺこぱのシュウペイさんだけは全く変わらなかったです。ずっとあの感じでニコニコしててすげえ人だな...と思いました。肝が座っているというか、揺らがない軸を持っているというか。相方の松陰寺さんは多少緊張していたと思いますがCM中も客席にファンサしてくれてましたね。ミルクボーイは二人で何か会話していたと思います。会場のお客さんはほぼ全員がミルクボーイの優勝を確信していた印象ですが、二人はわりとソワソワしてたと思います。あれぐらいのウケと圧倒的なハマりようなら「これは優勝だな」と99パーセント確信しても全然おかしくないと思うんですが、2人はいつまでも謙虚でした。「もしかしたら優勝あるかも」ぐらいの認識だったのかもしれません。そのへんの心持ちはアナザーストーリーなどで明らかになるかな。楽しみです。そして、私が最も意識して見ていたかまいたちです。山内さんは「やりきった」という顔で堂々としていたと思います。いつもの山内さんでした。濱家さんは対照的で落ち着いてはいなかった。何度も瞬きをしていたし、ずっと下の方で手を組んで結果を祈っていました。ミルクボーイの圧倒的なウケを見てもなお、かまいたち優勝の可能性はありました。本人もそう思っていたのかもしれません。かまいたちは他の2組とは違って相方同士で何か話すということは無かったですが、もうすぐCMが明けるという頃に濱家さんが山内さんの肩に手を置くいつものあの動作をしていました。あれは大事な出番前のルーティンのような感じなんですかね。それ以降、山内さんも手を組んで祈るような動作をしていたと記憶しています。
CMが明け、圧倒的な票数でミルクボーイの優勝が決定しました。西のダークホースの歴史的優勝に会場は溢れんばかりの大歓声。「今、トロフィーをいただきましたー!」を見れて感激。日本一の漫才師になってもなお2人は現実が信じられない様子で、「夢、夢!」と何度も言っていました。霜降り明星の次のチャンピオンがミルクボーイ。これだからM-1は熱いし夢がある。テレビに映っていなかった部分ですが、かまいたちも和牛もぺこぱも芸人全員がミルクボーイの優勝を祝福していました。中でも印象的だったのは霜降り明星の二人がミルクボーイと握手を交わし、捌ける際に粗品さんが「これから忙しくなりますね!」的なことを内海さんに言っていたことです。霜降り明星とミルクボーイはお互い会話しながら捌けていきました。今田さんは「先輩の誘いも断って一生懸命やってきたもんな。本当に良かったなあ。売れるで」と何度も言っていました。審査の結果に文句がある人間はきっと誰一人としていなかったんじゃないかな。それぐらい圧倒的でした。
かまいたちは、放送でも映っていたと思いますが濱家さんが悔しさを隠しきれていなかった。ミルクボーイの優勝が決定しどこか唖然としたような顔で宙を見上げていた時の表情が印象に残っています。「ああ終わったんだな」というようなそんな顔だったと思います。山内さんは最後までそれほど表情が変わらなかったですね。かまいたちのこういうところ、めちゃくちゃかまいたちだなーと今になって思います。(ニュアンスで伝わることを願います)放送でもわかりますが水田さんとリリーさんは真っ先にかまいたちに駆け寄ってましたね。リリーさんは泣いてました。ただ二人とも「やりきった」という顔はしていました。松本さんが「いつも俺が入れるコンビは優勝しない」「今年は過去最高とも言えるくらいレベルが高すぎた」と言っていたのを覚えてます。でも、松本さんが入れた一票はかまいたちの二人にとって言葉では表せないほど大きなものだったと思います。2位や3位では意味が無いと事前インタビューで言っていましたが、全然そんなことはなかった。去年のM-1は納得のいかない結果に終わったかまいたちが初めて最終決戦に進出し、全国2位に輝いたということが本当に嬉しいです。だってキングオブコントは1位でM-1は2位なんてめちゃくちゃ凄いんですよ。そんなコンビはそうそう出てくるものじゃない。これからも漫才とコントをやり続けてほしいし、どんどん活躍していってほしい。レギュラー番組も来年こそ決まるでしょう。決まらなかったとしてもそれはそれで面白い。無名だったミルクボーイが会場全体を完全に物にし優勝したという嬉しさ、個人的に大好きだったぺこぱが観客を魅了し大きく爪痕を残した嬉しさ、ラストイヤーのかまいたちが準優勝した嬉しさと寂しさ。色々な感情がぐちゃぐちゃでした。それまでからし蓮根が審査員に絶賛されている時やかまいたちが志らく師匠に「参りました」とコメントされている時、ぺこぱが最終決戦に進んだ時など、思わずグッときた場面はありましたが実際に涙が出てくるとまではいきませんでした。しかし、左端の方で濱家さんが山内さんに「ありがとう」と言ったのを見た瞬間に両目からぶわーっと涙が溢れてきてしまった。自分でも不思議だったんですが、一気に涙で視界が歪みました。前方のお客さんにしか分からなかったと思いますがそんな瞬間が確かにありました。山内さんは「いいえ」と一言返しただけだったと思います。あの光景がかまいたちとM-1グランプリの全てだった。最後、お客さんの方に深く深くお辞儀をして捌けていったかまいたちが目に焼き付いているし、恐らく今後何があっても忘れられない。数日経った今でも思い出すと涙が出そうになります。観覧が終わってテレビ朝日を出ると傘無しではとても歩けないような大雨でした。でも「本当に来てよかった」と心から思った。今年の夏にかまいたちがハイスクールマンザイ予選の司会をした際に、高校生からの質問コーナーで「本当にM-1出ないんですか?」と聞かれていました。たしか濱家さんは「何で君にそんなん言わなあかんの?」と笑いながら話を濁していて、山内さんは「ABCさんから優勝が約束されるなら出ます」とはっきり言っていた。自分の耳でそれを聞いた時に「ああ本当に出ないんだ」と実感して、完全に折り合いがつきました。しかしかまいたちはラストイヤーのM-1にエントリーし、結果的に準優勝しました。出場したいと言ってくれた濱家さんも、それを受け入れてくれた山内さんも本当にありがとう。その気持ちしかありません。心から、準優勝おめでとう。
総評ですが、今年は本当に良い大会だったんじゃないかなと思います。過去最高のレベルだったと至る所で言われていますが、全コンビがそれぞれの強みを出せていたと思います。来年、本当に和牛は出ないのかな。寂しいような「お疲れ様、ありがとう」と言いたいようなそんな気持ちです。ますます来年のM-1がどうなるか分からなくなりました。若い世代かベテランか、もう誰が優勝してもおかしくないと思います。霜降り明星の優勝がミルクボーイに火を付けたように、ミルクボーイの優勝が今数えきれないほど多くの芸人を燃え上がらせていて、その中から来年のチャンピオンが誕生する可能性がある。そう考えるとやはり熱い。お笑いが大好きだと再認識した日でした。一生の思い出です。今年決勝に出場した全てのコンビがこれから大活躍することを願ってこの文章を締めます。とても主観的な文ではあったと思いますが、ここまで読んでくださった方に感謝します。質問などあればお答えします。
改めてかまいたち、本当にお疲れ様でした。